以前はよく通っていた白金台の松岡美と東京都庭園美、ところが最近は足が遠ざかっている。確か2年くらい前庭園美は新装開館した。そのため、いい企画展があれば出かけるのだがまだ心を動かすものがとどかない。
松岡美の一番の思い出は山口蓬春(1893~1971)の代表作‘山湖’をみたこと。2年前西洋美で開催されたホドラー展、このスイスの国民的画家、ホドラーの風景画に刺激をうけて描いたのが‘山湖’、この風景は裏磐梯の五色沼のひとつ。蓬春ははじめは洋画をやっていたのでこんな日本画らしくない風景画が生まれた。画家のキャリアはいろいろ混じっていたほうが描き方の幅が広がり新しい表現ができるのかもしれない。
多くの画家が富士山に挑んできたが、梅原龍三郎(1888~1986)も終戦の1945年の秋から本格的に取り組み1965年まで描き続けた。大原美にある‘朝陽’はとても力強い富士、油絵の魅力が富士の雄姿によって引き出されている感じ。龍三郎は富士のほかに浅間山の連作もてがけている。
先週渋谷のBunkamuraへ行く途中岡本太郎(1911~1996)の大壁画‘明日の神話’の前を通ったが、この画家の絵画に対する興味は薄れているので歩くペースはそのままだった。‘夜’はまだ心にとまっている絵だが、それは右に描かれた少女のせい。強い風を細い体でうけとめる可憐な少女は前方の髑髏をじっとみつめている。少女と髑髏を対峙させる発想を岡本太郎はどこで思いついたのだろうか。


