画家の回顧展は2回みることが理想だが、その達成には長い時間がかかる。だから日本画を楽しもうと思うと長生きをしなくてはならない。美人画で名の知れた伊東深水(1898~1972)はこの内規がクリアできた画家。
深水は戦争が終わったとき47歳、画家としてはちょうど脂の乗り切った頃、昭和21年には思わず立ちどまるすばらしい美人画を描いている。‘吹雪’は同じ構図で着物の色の異なるのが2点あり、その1点を西宮市の大谷記念美が所蔵している。
深水の美人画の特徴は上村松園や鏑木清方と違って全身像は少なく上半身を画面いっぱいに描くこと。そのため、モデルのイメージが強く印象に残る。吹雪のなかを傘をさしてしっかり歩いている丸ぽちゃの女性にぞっこん参っている。
京近美にある寺島紫明(1892~1975)の‘彼岸’は長いこと対面を待っているがまだ縁がない。一時期毎年のように京都へ行っていたが、京近美で展示のタイミングと合致しなかった。いずれ京都旅行を再会し、京都市美蔵の堂本印象の‘婦女’と合わせてみてみたい。
山形県出身の小松均(1902~1989)は気になる画家の一人。この‘牡丹’を観た時期は記憶から薄れているが、緑の葉っぱに浮かび上がる金属的な質感をもつ白の牡丹の花が目に焼きついている。牡丹は描くのが難しいモチーフなのでこの絵のことは頭から離れない。


