わが家では定期的に数の多くなった図録の整理をしている。今取り組んでいるのは東近美で回顧展が行われている安田靫彦(1884~1978)、回顧展を何度も体験すると同じ作品が複数の図録にでてくることになるので色をよくひろっている図録を残し、そうでないものは処分する。その際、一枚しかない作品は残したものにペタペタ貼っていく。こうしてMyベスト図録が出来上がる。この作業は結構楽しい!
5冊のうち3冊に登場していたのが‘王昭君’、つい先日東近美でみたときにも紹介したが今回は図録の表紙に使われている。きりっとした目がとても印象的。靫彦が描いた古代の中国の話にでてくる女性はほかに羅浮仙、楊貴妃がいる。
京近美が建っている場所の向かい側にあるのが京都市美、ともに3回くらい訪問したが両館には京都に縁の深い画家が描いた女性の絵がいくつもある。三谷十糸子(みたにとしこ 1904~1992)の‘蓮’は着物の黄色と女性をとりまく幻想的な蓮の花が目に焼きついている。この女性の柔らかい雰囲気は女流画家にしか描けないのかもしれない。
はじめ西洋画からスタートして途中で日本画に転じた画家がいる。例えば、川端龍子、小杉放菴、山口蓬春、そして山梨県出身の近藤浩一路(1884~1962)もこのグループに入る。この画家は水墨画を得意とするが、見慣れた水墨画と違い光が画面全体にきらめきちょっと写真を思わせるような水墨画。‘薫風’は中央で水を飲む2頭の馬が光につつまれる光景に思わず体がフリーズする。
松林桂月(1876~1963)の‘松泉’はじっとみていると心の中からザワザワした世俗の景観がだんだん消えていき、この険しい山を登っていくと精神の安らぎのえられる理想郷にたどりつけるのではないかという気になってくる。