今日の日曜美術館に登場したのは竹久夢二、TV番組ガイドでこの情報を知ったとき今なぜ夢二?という感じをもったのが正直なところ、横浜高島屋で開催された夢二展が巡回しているとはいえこれをとリあげるのはタイミングがちょっとずれている。
みてみると夢二の画業を真正面からとらえている、しかもその内容がとても新鮮。夢二ファンとしては一生忘れない美術番組になりそう。感謝のメールを送りたい気持ちにさせるのは番組を通して解説していた金沢21世紀美のキュレーター、高橋律子さん。
サプライズの話がでてきたのは竹久夢二(1884~1934)の代表作の‘黒船屋’、夢二がこの絵をオランダ人画家ドンゲン(1877~1968)の描いた‘猫を抱く女’を参考にしているということは夢二好きにとってはたぶん定説、ところが夢二はドンゲンだけに影響を受けていたわけではなかった!
それはなかなかいい美人画を描く日本の画家、山村耕花(1885~1942)の作品、ここからもしっかり構図のアイデアをいただいていた。この図版を高橋さんは夢二が使っていたスケッチブックのなかに見つけたという。いい仕事をされますね。拍手!
これまで夢二の展覧会を見逃さずにでかけ図録を沢山ため込んできたが、このスクラップブックのことは情報がなかった。夢二は歌麿などの浮世絵へ関心を寄せていただけでなく西洋画の吸収にもとても貪欲でスクラップブックにはゴッホ、ムンク、マティス、そして驚いたことに三菱一号館美であったヴァロットンの‘怠惰’まで切り貼りしていた。‘怠惰’には猫が描かれているので気になったのかもしれない。
常々、美術の研究には女性のほうがむいているのではないかと思っている。海外の美術館では女性の館長はとても多いし、日本の美術館で仕事をしている女性学芸員も最近はTVの美術番組によく登場し、鋭い分析を披露してくれる。今回の番組がそうであり、菱田春草展を担当した東近美の鶴見香織さんの話もとてもよかった。
日本美術の世界にはTV慣れし受け狙いのコメントに終始しfactsを示さないつまらない男性美術評論家が多いが、TV局もこうした人物にはもう出演を依頼しないで地道に研究し成果をだしている優秀な女性の学芸員たちにしゃべってもらうほうがいい。そうすれば番組の質はぐんとあがる。その動きが加速することを強く望みたい。