‘逃避する少女(左)、女と鳥(右)’(1967年 ジョアン・ミロ財団)
東京都美ではじまった大ミロ展(3/1~7/6)は4ヶ月のロングラン興行。
これから来場者がどんどん増えていくと予想されるが、まわりにいる西洋絵
画好きに強く薦めようと思っているのは3点揃った‘星座’シリーズ。そして、
もうひとつミロへの親近感がぐんと増すのは請け合いの楽しい絵‘オランダ
の室内Ⅰ’。これも‘星座’同様、主催者の大ヒット!
NYのMoMAにあるこの絵が日本で披露されるのはたしか2度目。
MoMAが改築のため休館したとき、1993年と1995年?と2回上野
の森美で‘ニューヨーク近代美術館展’が開催され、自慢の傑作がどどっとや
って来た。ミロの絵ももちろん入っていた。30数年ぶりの再会である。
これはアムステルダム国立美が所蔵するソルグの‘リュートを奏でる人’
(1661年)をミロ流にパロディ化したもの。1928年オランダを訪れ
たとき人物のいる室内の場面を描いた風俗画に魅せられ、作品の絵葉書をた
くさん持ち帰り、これを本歌にし3点制作した。ほかの絵は‘オランダの室内
Ⅱ’(グッゲンハイム美)と‘オランダの室内’(メトロポリタン美)。3点の
なかではもっとも楽しいのがMoMAにあるもの。原画に描かれているテーブ
ルに肘をついている貴婦人はでてこないが、音楽家の顔が極端に大きく変容
し、口髭もしっかり描き込まれている。そして、おもしろいのが赤塚不二夫
の漫画に出てくる動物を連想させる前景の犬と猫。ついニヤニヤしながらみ
てしまう。
楽しい絵はまだある。‘無題’となっているが、左の人物はオリンピックの聖火
リレーがすぐ思い浮かんだ。横にいるのは歩道でみている女性?右の2人は
後続のランナー?最上階の展示室では写真撮影がOK、ミロ美からはじめて
やって来た‘太陽の前の人物’もクリーンヒット!これはかなり前に発行され
た‘週刊世界の美術館 ミロ美術館’の表紙に使われた傑作。バルセルナでお目
にかかったときは思わず足がとまった。お見逃しなく。明るい色彩とユーモ
ラスな造形が印象的な彫刻‘逃避する少女’と‘女と鳥’にも惹きこまれる。