李公麟の‘孝経図巻’(部分 北宋・1085年頃 メトロポリタン美)
薫源の‘寒林重汀図’(重文 五代・10世紀 黒川古文化研究所)
久しぶりに根津美に出かけ‘北宋書画精華’(11/3~12/3)をみてきた。
最近は美術館で外人を見かけることが多くなったが、根津美もその例にもれ
ない。今回、ヨーロッパあるいはアメリカからの観光客もいたが、その3倍
くらい集まっていたのが中国人。以前は外人と一緒に絵をみる美術館は太田
記念美にきまっていたが、今は東博はもちろんのこと東近美、モネ展を開催
している上野の森美、そして表参道の根津美まで海外の美術ファンが押し寄
せるようになった。この調子だと丸の内に移ってきた静嘉堂文庫美でも同じ
ことが起こっているかもしれない。
日本で北宋の絵画がみれる美術館というと東博と大阪市立美がすぐ思い浮か
ぶが、‘北宋展’と銘打った特別展に遭遇したのは今回の根津しかない。北宋の
絵画がたくさんみれる機会に巡り合ったのに、中国語で感想をしゃべっている人たちがすぐ隣にいるので台北の故宮博物院にいるような感じだった。まず現れたのは以前みたことのある薫源の‘寒林重汀図’。もこっとした岩山の盛り上がりが手前と中景で画面を二分するように描かれている。垂直にのびる木々のとげとげしい細い枝をみるとここには寒々とした重い空気は流れているような感じがする。
‘竹塘宿雁図’は団扇のような丸い画面の上半分が枝が横にでた竹で占められ、
その下に大勢の雁が体を上下に動かしながら歩く回っている。中国の花鳥画
も馴染んでくるとみてて楽しい。思わぬ絵の登場だったのが京都の清凉寺が
所蔵している‘十六羅漢像’のうち2点、この‘第十五尊者阿氏多’で視線が向か
うのは羅漢ではなく横にいる美形の女性。目が美しいこと!
最後の部屋に目玉の作品があった。2019年の初春にみつかった李公麟
(1049?~1106)の‘五馬図巻’とメトロポリタンから特別出品された
白描画の‘孝経図巻’。北宋の文人李公麟の作品ははじめてお目にかかった。チラシのキャッチコピーに‘ーきっと伝説になる’とあるから、色つきの‘五馬’を‘孝経’との違いを解説文で確認しながら人物表現や馬の描き方を1点々目にやきつけた。