美術とのつきあいを長く続けていると絵画や彫刻のモチーフとなった歴史上
の人物とか事件に遭遇し、それによって国の成り立ちや民族の興亡について
の話が点としてインプットされる。昔から歴史好きなので、西洋絵画でも
日本画でも文字による情報では歴史の実相をつかみきれないところをカバー
してくれる歴史画の効用を強く認識している。そして、絵画よりもっと立体
的に歴史のことが心に焼き付けられるのが映画。今年は中国もの映画でひと
つ収穫があった。それはスティーブ・マックイーンが主演した‘砲艦サンパ
ブロ’(アメリカ 1966年 179分)。
これまで中国ものでお気に入りDVDコレクションに入っていたのは、
☆‘北京の55日’(アメリカ 1963年 160分)
☆‘ラストエンペラー’(伊・英・中 1987年 163分)
どちらも映画の良さは音楽によってさらに増幅されている。‘北京の55日’
はアメリカの人気フォークソンググループのブラザース・フォアが主題歌を
唄って大ヒットした。‘ラストエンペラー’は今年亡くなった坂本龍一の作曲
したテーマ曲がアカデミー賞をとった。これは真に映画音楽の宝ともいえる
名曲。
さて、‘砲艦サンパブロ’は情報はまったくなかったが、名優スティーブ・
マックイーンの水兵姿をみて購入した。3時間もある大作。‘北京の55日’
が1900年、激動の清朝時代にあって‘義和団の変’の勃発によって北京の
外国人居留区にいた11ヶ国の居留民が籠城して55日間を戦った物語で
あるのに対し、‘砲艦サンパブロ’は中国人の排外思想が激しくなりデモが
暴徒化した1920年代の中国が舞台。列国は揚子江沿岸の権益と人命を
守るため艦艇を出動させていた。アメリカの砲艦サンパブロもそのひとつ。
スティーブ・マックイーンが扮するのは仕事のできる1等機関兵。仕事が
できるといつものパターンで上官といろいろ衝突する。そうすると仲間う
ちでも浮いてくる。驚いたことにあの美貌の女優キャンディス・バーゲン
が伝導学校の教師役として出演していた。そして、スティーブ・マックイ
ーンの唯一の友人水兵としてリチャード・アッテンボローも大事な役どこ
ろを演じている。最後にスティーブ・マックイーンが敵弾をうけて死ぬ
のは意外な展開だった。