フェルメールの‘デルフト眺望’(1659~60年 マウリッツハイス美)
ホッベマの‘ミッデルハルニスの並木道’(1689年 ナショナルギャラリー)
ライスダールの‘漂白場のあるハールレムの風景’(1670~75年 マウリッツハイス美)
コンスタブルの‘干し草車’(1821年 ナショナルギャラリー)
コンスタブルの‘デダムの谷’(1828年頃 スコットランド国立美)
コンスタブルの‘チェーン桟橋、ブライトン’(1826~27年 テート美)
日本や中国では山水画は古来、絵画の中心的分野だが、西洋で風景画がひと
つの独立したジャンルになったのは17世紀のオランダから。人気の画家、
フェルメール(1632~1675)が描いた‘デルフト眺望’に心底魅了さ
れている。この絵はハーグのマウリッツハイス美にある。2011年ハーグ
とフェルメールの故郷デルフトを訪問できたのは生涯の喜びである。典型的
な邸宅美術館に入館するとまっさきに‘デルフト眺望’をめざした。皆が風景
画の傑作というのは、本当だった!すごく心が鎮まるこの絵と再会したい
が、実現するだろうか。
ライスダール(1628~1682)の‘漂白場のあるハールレムの風景’も
この美術館にあるが、広々としたパノラマ画の地平線に見えるのが画家が生
まれたハールレム。さほど大きくない絵なのにこのフラットさを実感できる
風景に惹きつけられ立ち尽くしてみてしまう。ロンドンのナショナルギャラ
リーが所蔵するホッベマ(1638~1709)の‘ミッデルハルニスの並木
道’はオランダの臨場感あふれる田舎道の遠近法描写が目に焼き付いている。
消失点に向かって誘われているよう。
19世紀に描かれたコンスタブル(1776~1837)の風景画にはオランダの風景画と似た描写がみられる。たとえば、画面の多くを使った空とボリューム感のある雲の表現、そしてはるか遠くをみせる構図のつくり方。1821年に制作された‘干し草車’は2004年に行われた‘イギリス最高の絵画’の人気投票ではターナーの‘戦艦テレメール号’に次ぐ2番目に人気のある絵画に選ばれた。
昨年、国立新美で開催された‘スコットランド国立美展’に出品された‘デダムの谷’は縦長の画面をぎゅーっと横にのばしたらライスダールの絵のようになりそう。ロンドンの南に位置し海に面するブライトンのチェーン桟橋を描いた風景画は大きな画面の効果があって現地にいるようで潮の匂いを感じてしまう。