現代アートの最前線にどんな絵画や彫刻、オブジェ、インスタレーションが
並んでいるのか、その情報をアバウトには押さえておきたいと思うもののあ
まりに幅が広すぎて断片的にぽつぽつとしか入ってこない。でも、評価の高
い日本人アーティストについては各種メディア媒体や展覧会をつうじて十分
ではないがそこそこ作品にふれる機会も生まれてくる。
佐賀県生まれの吉岡徳仁(1967~)の名前は2011年秋に新装オープ
ンしたパリのオルセー美の展示室に登場したガラスの椅子‘ウォーターブロッ
ク’をみて覚えた。空気の泡を入れずにこれだけの厚さの一枚ガラスをつくる
のは大変なこと。新オルセーの大きな話題にもなった。本物をみたはパリで
はなくて、運よく巡り合った2013年東京都現美で開催された‘吉岡徳仁-
クリスタライズ’展、オルセーの観客を楽しませたのがよくわかった。
最大規模の個展で吉岡の豊かな感性と創作力を見せつけられたのが‘白鳥の
湖’と題された結晶絵画。音楽を聴かせながら自然結晶の形状を水槽のなかで
成長させたり、キャンバスに見立てたものに並べている。こんなつくりもの
は見たことがないし、その発想に唖然とする。そして、植物繊維構造をとり
いれまるで空気に座るような感覚の‘パーネチェア’にも目が点になった。
サイエンスの知識がないとこんな作品はつくれない。本当にスゴイ才能である。
かなり前から風の彫刻家といわれた新宮晋(1937~)には関心をもって
いたが、本物に遭遇したのは2016年の‘新宮晋の宇宙船’展(横須賀市美’)。
アメリカのカルダー(1898~1976)のハンギングモビールを連想させ
る‘小さな花’や‘夢の日記’などを心ゆくまで楽しんだ。野外に設置してある作品
もこれから積極的に追っかけると心が晴れるような気がする。