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‘裸婦’(重文 1920年 山種美)
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‘太子樹下禅那之図’(1937~38年 何必館)
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‘二月乃頃’(1911年 京都市芸大)
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‘巖山松樹之図’(1939年)
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‘牡丹’(1939年)
TVの美術番組などで画家の物語がダイジェスト的にインプットされるとき
は画風の特徴だけでなく、画家の健康状態についても十分に語られる。長生
きをした画家もいれば、重い病気にかかり無念の死をとげた画家もいる。
京都で活躍した村上華岳(1888~1939)が苦しんだのは喘息。
2005年、京近美で運よく大規模な‘村上華岳展’にめぐり合ったが、画業
の前半と後半で描き方やモチーフが変容していったのはこの喘息が大きく影
響していることがわかった。
村上華岳という画家を知るきっかけになったのが重文に指定されている‘裸婦’。
所蔵する山種では5年に一度?くらいしか展示されないイメージがあるので、
これまで2回くらいしかお目にかかった記憶がない。薄衣からすけてみえる
つややかで豊満な肉体は西洋画にでてくるヴィーナスのようでもあり清らかな
仏にもみえる。こういう裸婦図を日本画家が描いたというのは本当にスゴイ
ことであり、エポック的な鑑賞体験になった。
この絵が描かれた17年後にまた衝撃的な絵が登場した。‘太子樹下禅那之図’。
喘息の苦しさに耐えて完成させたのは菩提樹の下で座禅をくむ若き釈迦の姿。
艶めかしい体でありながら慈愛に満ちた眼差しに思わずフリーズしてしまう。
そして、霊気を漂わせる銀色の菩提樹の輝きはどこか悟りの瞬間を暗示する。
この絵は‘昭和の日本画100選’に選ばれている。
華岳の初期の作品‘二月乃頃’は魅了され続けている風景画。日本の農村を描
いたものではいくつもある川合玉堂の絵と奥行きをぐんとみせてくれる俯瞰の
表現がすばらしいこの光景にもっとも惹かれている。亡くなる年に描かれた水
墨画の風景画と牡丹(絶筆)は華岳の精神性が現れた傑作。‘巖山松樹之図’は
一見すると抽象画を見ているような気分になる。そして、モノトーンの牡丹の
絵には深い祈りみたいなものが感じられる。