現在、東京都美で開催中の‘マティス展’(4/27~8/20)をみてきた。
出品作は大半がパリのポンピドーセンター蔵でこれに国内の美術館にある
ものが数点加わり20年ぶりの回顧展の盛り上げに一役買っている。
マティス(1869~1954)の絵をたくさんみるのは2度目。前回は西
洋美(2004年)で行われた。そこに出品されていたポンピドー蔵のもの
は今回ほとんど再登場。これは想定通り。期待は何点未見のものがでてくる
か。果たして、絵画、彫刻とも満足のいく収穫があったので機嫌がいい。
その筆頭が‘グールゴー男爵夫人の肖像’。しっかりした写実的な人物描写と
黄色と赤の調子がチラシに使われている‘赤の大きな室内’と同じくらい力強
いので感動した。これはポンピドーからルーヴルの近くにあるパリ装飾美に
寄託されている。ここは一度訪問したが、マティスの絵はまったく縁がなか
った。こんないい絵があったとは!
点描法にチャレンジして描いた‘豪奢、静寂、逸楽’をオルセー(寄託)でみ
たとき、フォーヴィスムのマティスがスーラやシニャックのグループに入っ
たのかと、戸惑った。この手法は根気のいるしんどい作業。マティスは
色彩の力をどんと出すためには点の集まりではなくやはり色面でないと強い
インパクトは生み出せないと考え、そうそうにやめたのだろう。
お気に入りは‘金魚鉢のある室内’と‘マグノリアのある静物’。グラデーション
をきかせた青が印象深い‘金魚鉢’に対して、静物画は目の覚めるような赤の地
がペタッと平板的に表現された花や花瓶、貝を浮き彫りにしている。大病し
て手が自由に使えなくなったマティスが進化する色彩の力をみせつけたのが
切り紙絵。魅了され続けている‘ジャズ’の連作を夢中になってみた。シンプル
なフォルムと明快な色彩が心をとらえて離さない。