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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間‘! 国芳のDNAを受け継ぐ河鍋暁斎

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Img_0004_20230323224801   ‘地獄極楽図’(部分 1868年以前 東博)

Img_20230323224801   ‘鳥獣戯画 蛙の蛇踊り’(1879年 大英博)

Img_0002_20230323224801   ‘惺々狂斎画帖’(1870年以前 河鍋暁斎記念美)

Img_0001_20230323224901   ‘地獄太夫と一休’(1871~89年 ゴールドマンコレクション)

Img_0003_20230323224901   ‘大和美人図屏風’(1884~85年 河鍋暁斎記念美)

才能豊かな画家とのつきあいが一気に深まるのがたくさん集められた作品を
通じてその画業全体にふれることができる回顧展。だが、関心が強くなった
からといって特別展がむこうからいいタイミングでやってきてくれるとは限
らない。幕末・明治期の江戸・東京で活躍した河鍋暁斎(かわなべきょうさ
い 1831~1889)の場合、なかなか実現しなかった。暁斎を知るき
っかけとなったのは国芳&暁斎展。暁斎年表によると暁斎は7歳のとき国芳
の画塾に入門して絵を習った。わずか2年の修行だったが、‘三つ子の魂百ま
で’というから、暁斎の絵には国芳の風刺表現やユーモアの精神を受け継いだ
ものがいろいろある。

それがよくわかってきたのが3回の回顧展。2008年(京博)、2015
年(三菱一号館美)、2017年(Bunkamura)。その最たる絵が‘鳥獣戯画
 蛙の蛇踊り’。これは元祖鳥獣戯画を画題にしながら、ユーモアがかなりき
つくどきっとするものも含まれている。このシリーズは両手くらいいお目に
かかったが、一番賑やかなのがこの蛇を思い通りに動かしている蛙たち。蛙
が主役になることが多いが、ほかに蟹や猫、鼠、亀、猿などが登場する。
‘惺々狂斎画帖’に出てくる大きな猫が男たちを驚かせている絵は国芳の金魚の
擬人画に描かれた猫とよく似ている。暁斎は金魚を人物に変装している。

東博の平常展に通っているとときどきで出くわす大作‘地獄極楽図’は回顧展に
遭遇する前、暁斎の画力にたじたじになった一枚。地獄の番人がむき出しに
する暴力性が目に焼きついており、長く見るのがしんどくなるほどだった。
‘地獄太夫と一休’は緊張感とユーモアがないまぜになっており、一度見たら
忘れられない。この絵は美形の地獄太夫がいい具合のバランサーになってい
る。

‘大和美人図屏風’は暁斎の代表作で弟子になったコンドルに贈ったもの。右扇のほうが艶っぽくぐっとくるが、江戸時代の前期の遊女が細密に描かれている。立ち姿の遊女は耕作図屏風と牡丹を挿した花籠を背に、華やかな柄の衣裳に身をつつみ手に椿と梅をもっている。浮世絵美人画と狩野派と大和絵の技法を融合させた暁斎渾身の傑作である。  


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