ピカソの‘緑色のマニキュアをつけたドラ・マ―ル’(1936年)
西洋美で開催中の‘ベルリン国立ベルクグリュ―ン美展 ピカソとその時代’
(10/8~1/22)をみてきた。今年はドイツにある美術館のコレクショ
ンが大当たり。6~9月にエッセンのフォルクヴァング美(西洋美)、ケル
ンのルートヴィヒ美(国立新美)のものが披露され、そして、今月はじめか
らベルリンのベルクグリュ―ン美が再度西洋美に登場した。ここの美術館の
作品は日本初お目見え、メインディッシュはあのピカソ(1881~
1973)なので平日にもかかわらず館内は結構混んでいた。
春にパナソニック汐留美でもイスラエル博所蔵のピカソをみたから、キュビ
スム特有の人物表現となっている女性の両目が極端にずれたりしていてもそ
う驚かない。モデルをシュルレアリスムの写真家であったドラ・マールがつ
とめた‘緑色のマニキュアをつけたドラ・マール’が目玉の作品かもしれない。
ぱっとみると片方の目が小さいので変な感じだが、顔全体はとても綺麗。
感情の起伏の激しい女性だが、これをみるととても惹かれる。
‘窓辺の静物、サン=ラファエル’はモチーフのフォルムの歪みがあまり気にな
らず、具象性の強い窓の表現によってつくられる安定感が目に心地よく映る。
全体の構成がよく計算されており、青を基調とする色調のハーモニーがとて
もソフトで軽やか。
予想を大きく上回ったのがクレー(1879~1940)。全部で34点飾
られていた。クレーをこれほどたくさんみたのは久しぶり。ミニ回顧展とい
っていいほど内容は充実している。思わず足がとまったのがお馴染みの子ど
ものお絵かきのようにみてしまう‘青の風景‘。小さい頃家を描くときはこうい
う風に屋根を三角形にすると気持ちが落ち着き、次に描くものに調子にのっ
て移れた。‘植物と窓のある静物’は緑の地に描かれた赤のカーテンがつけられ
た窓や頭が赤で顔が黒の男に不思議な緊張感がある。
15点あるマティス(1869~1954)は晩年の切り紙絵(6点)を長
くみていた。お気に入りは‘雑誌・ヴェルヴの表紙図案’。躍動する黒の人物の
姿が緑の面に浮きぼりになっている。ここでみたマティスは来年4月に東京
都美で開かれる‘マティス展’のちょうどいいプレリュードになった。