国宝‘澤千鳥螺鈿蒔絵小から唐櫃’(平安・12世紀 金剛峯寺)
今年ひらかれる日本美術関連の特別展でとくに関心が高かったのが、
日本橋の三井記念美で10/1からはじまった‘大蒔絵展 漆と金の千年物語’
(11/13まで)。春に熱海のMOA美で行われたものが、所を変えて日
本橋にやって来た。三井記念美を訪問するのは3年ぶり。この美術館のい
いところはほかでやっている展覧会のポスターがたくさん飾られ、チラシ
がどっさりおいてあること。だから、これからの美術館訪問を検討するの
に大変役立つ。
今回日程(前期、後期)のチェックをせず出かけたが、質数ともに予想を
上回る出品内容となっている。会期中に国宝7点、重文32点が並ぶのだか
ら東博、京博で開かれてもおかしくない特別展である。蒔絵の国宝は運がい
いことにすべてお目にかかることができた。だから、どこが見どころかを思
い出しながら、‘澤千鳥螺鈿蒔絵小唐櫃’、‘浮線綾螺鈿蒔絵手箱’、‘初音蒔絵十
二手箱’をじっくりみた。
螺鈿と出会ったときいつもしていることがある。それはつま先立ちでなるべ
く目の位置を高くして貝殻の薄緑やピンクの輝きをとらえること。また、
光が螺鈿にあたって色がよくみえるようしゃがみ体を左右に動かしてみる
ようにしている。これで螺鈿蒔絵の美しさが堪能できる。丸い模様が規則的
に並んだ‘浮線綾’は貝殻の光り具合が多いのでこの方法が功を奏しいい気持に
なった。徳川美にある‘初音蒔絵’は金色に輝く鶯をみるのが一番の楽しみ。
今回思わぬ収穫だったのが尾形光琳(1658~1716)の‘松山茶花蒔絵
硯箱(まつさざんか)’。この模様をあしらった硯箱は手元の琳派本にも載っ
てなくはじめてみた。個人コレクターが羨ましい。明治以降に活躍した漆芸
家ではやはり松田権六(1896~1986)の‘赤とんぼ蒔絵箱’に惹かれる。
久しぶりにみたが、格調の高い蒔絵の美が心をとらえて離さない。