マンテーニャの‘悪徳を追い出すミネルヴァ’(1504年頃 ルーヴル美)
エル・ゴレコの‘白てんの毛皮をまとう貴婦人’(1577~90年 グラスゴー美)
エル・グレコの‘炭火を吹く少年’(1572年 カポデイモンテ国立美)
ルーベンスの‘蝋燭を持つ老婆と少年’(1616~17年 マウリッツハイス美)
美術館に出かけるといろんなサプライズがある。美術品を観る前にエルミタ
ージュ美のように美術館の建物に圧倒されたり、お目当ての絵画や彫刻に会
えて気分が天にも昇るくらい高揚することが多ゝある。名画をみて‘最高の
瞬間’!を体験することのなかには、ときどきあの画家がこの時代にこんな絵
を描いたのか!と仰天させられることやお馴染みの画法と変わっていること
に気づきはっとすることも含まれている。
ダ・ヴィンチより20年前に生まれマントヴァで活躍したマンテーニャ
(1431~1506)の‘美徳の園から悪徳を追い出すミネルヴァ’をルー
ヴルでみたときびっくりすることがあった。知恵の女神ミネルヴァ(アテナ
のこと、盾と槍をもった左端の人物)に視線を集中させたあと、ふとその左
をみるとギョッとする人物がいた。足が異様に長い怪人。よくみると足と
胴体は木の幹で両手はそこからでた枝と重なっている。ありゃー、これはシ
ュルレアリストが得意とするダブルイメージ!16世紀のはじめ、マンテー
ニャはこんなシュールな描き方をしていた。これはスゴイ。
2013年、東京都美で開催された大規模な‘エル・グレコ展’に期待の絵が
出品された。それはグラスゴー美が所蔵する‘白てんの毛皮をまとう貴婦人’。
この女性の美貌に200%魅了された。人体を縦に思いきりのばした描いた
エル・グレコにこんな生感覚のする女性がいるのは奇跡的なことのように思
えてならない。回顧展とは別の機会に日本で披露された‘炭火を吹く少年’も
ガツンとやられた。まさに光の表現はラ・トゥールの‘夜の絵’を先取りして
いる。
マイリッツハイス美で遭遇したルーベンス(1577~1640)の‘蝋燭を
持つ老婆と少年’はお馴染みの動きの激しいバロック画とはまるで異なる光の
絵画。カラヴァッジョやラ・トゥ―ルと同じタイプの絵をルーベンスも手掛
けていた。これには驚いた。ルーべンスはこんな絵もしっかり描けるのである。
ドガ(1834~1917)の‘黒い手袋の歌手’は異色の作品。どこがほかの
人物と違うかというと、歌手の顔の表現が凄くワイルドなところ。ドガはこの
頃ダーウィンの本にある猿の絵などに刺激を受けており、その影響がこの女性
の顔にでている。