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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間’! オランダ画家と笑いの表現

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 レンブラントの‘レンブラントとサスキア’(1635年 ドレスデン国立絵画館)

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  ハルスの‘庭園の夫婦’(1622年 アムステルダム国立美)

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  ハルスの‘笑う少年’(1625年 マウリッツハイス美)

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  ホントホルストの‘ヴァイオリン弾き’(1626年 マウリッツハイス美)

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  フェルメールの‘士官と笑う女’(1658~59年 フリックコレクション)

若い頃スイスのジュネ―ブに住んでいたことと好奇心が旺盛で旅行が好きな
こともあり、ヨーロッパのいろいろな国にでかけた。訪問回数が多いのは
イタリアとスペイン。オランダ、ベルギーの旅は運がいいことに3回あった。
オランダのアムステルダムへはじめて行ったのは40年前の1982年。
楽しい思い出はアムステルダム国立美にでかけ念願のレンブラント
(1606~1669)の‘夜警’をみたこと。そして、ここからすぐの所に
あるゴッホ美でも名画の数々を楽しんだ。ここは現在は大勢のゴッホファン
が押し寄せているが、当時はそれほど混んでおらず1点々じっくり鑑賞する
ことができた。

このオランダ旅行からレンブラントとのつきあいがはじまった。エルミター
ジュでたくさんみたのも生涯の思い出だが、2003年に訪問したドレスデ
ン国立絵画館にも嬉しいことにレンブラントが5点くらい飾ってあった。
そのなかで爽快な気分が共振したのが‘レンブラントとサスキア’。富豪の娘
サスキアと結婚した28歳のレンブラントが幸福の絶頂に酔う姿が描かれて
いる。嬉しそうな顔をみるとこちらまで乾杯につきあいたくなる。たくさん
描かれた自画像でレンブラントのイメージができていたから、こんな笑って
いる自画像があるとは思ってもみなかった。

一回目のアムステルダム国立美ではハルス(1582~1666)という
画家はまったく知らないので、作品の記憶は全然ない。この画家はモデルが
笑うところをよく描いたことがわかったのは絵画が趣味になってからのこと。
‘庭園の夫婦’は夫の肩に手をかけて含み笑いのような表情をみせる妻がじつに
いい。‘私たちとても幸せです!’とでもいいたげな素振りである。
マウリッツハイス美のコレクションが2012年東京都美で披露されたとき、
思わず足がとまったのが‘笑う少年’。ハルスはこの少年のように陽気な画家
だったにちがいない。

オランダの画家にどうしてこんなに人物が笑う絵が多いのか、しっかりつか
めてない。オランダは海外との貿易で繁栄した国なので海の向こうからいろん
な物が入ってきて、社会全体に古い規則に縛られず自由闊達に活動し未来を切
り開いていく気分が浸透していた。そのため、絵画においてもほかの国ではほ
とんどみられない笑いの感情表現にもためらいがなかったのかもしれない。

カラヴァッジェスキのホントホルスト(1592~1656)にも‘ヴァイオ
リン弾き’というすばらしい笑いの絵があった。ロンドンのナショナルギャラ
リーにある‘大司祭の前のキリスト’をラ・トゥール風に描いたホントホルスト
がこんなはじけた表情をみせる若い女性を描いていたとは!その落差は大きい。
同じことを思うのがフェルメール(1632~1675)の‘士官と笑う女’。
NYのフリックコレクションでこの女性の笑い顔をみたとき、フェルメールに
対するイメージがちょっと変わった。いつも静謐な絵を描く画家ではなかった
のだと。


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