カノーヴァの‘ヘラクレスとリカス’(1815年 ローマ国立近美)
マリーニの‘町の天使’(1948年 ヴェネツイアグッゲンハイム美)
エミリオ・グレコの‘エストレリータ’(1973年 茨城県近美)
ボッチョーニの‘空間の中の一つの連続する形’(1913年 MoMA)
イタリアの彫刻家で最初に覚えたのがミケランジェロ。芸術の知識として
ダ・ヴィンチやラファエロらと一緒に頭に入ってくる。美術鑑賞が趣味と
なってから前のめりになったのはベルニーニ。この二人のほかに気になる
存在はドナテッロ。イタリアの教会や美術館はこの3人の追っかけが目的
でまわった。
その過程でイタリアの彫刻の伝統の奥深さを知り、鑑賞欲を強く刺激する
彫刻家がいろいろでてきた。ヴェネツィア出身のカノーヴァ(1757~
1822)の天才ぶりが目に焼きついているのがローマ国立近美の展示室
の一角にどーんと飾ってある‘ヘラクレスとリカス’。高さ3.5mもある
大作で天下一の強さをみせつけるへラクレスの姿が見事に表現されている。
カノーヴァの彫刻はヴァチカン博やボルゲーゼ美でもお目にかかったが、
これが‘最高の瞬間’を味わせてくれた。
ヴェネツィアにあるグッゲンハイム美の庭に設置されていた彫刻に思わず足
がとまった。タイトルは‘町の天使’、つくったのはマリノ・マリーニ
(1901~1980)。この風変わりな騎馬像だがとても親しみをおぼえ
る。両手を横に広げ顔を天にむけたイタリアの農民の姿は町の天使に見立て
られている。この作品でマリーニの名前を覚えた。エミリオ・グレコ
(1913~1995)は国内の美術館、たとえば、東京の松岡美、埼玉
県近美、茨城県近美、箱根の彫刻の森美、ア―ティゾン美などでみる機会が
あり、その存在の大きさを知るようになった。お気に入りは立体感にあふれ
る‘エストレリータ’。
近現代彫刻で目を惹くのが未来派のボッチョーニ(1882~1915)の
‘空間の中の一つの連続する形’。キュビスム流の彫刻でスピーディな動きを感
じさせる傑作である。抽象的なのに人間臭い彫刻になっているのが未来派の
真骨頂。ヴァチカン博の庭に置かれているポモドーロ(1926~)の‘球の
ある球体’もボッチョーニ同様、‘最高のサプライズ’を体験させてくれた。
地底深くにまた地球が埋まっている感じ。この発想が奇抜。日本の福山美で
も別ヴァージョンをみたことがある。