リキテンスタインの‘浴室の女’(1963年)
リンドナーの‘サンキュー’(1971年)
ロンドンのテートギャラリーでダリ(1904~1989)の‘ナルシスの
変貌’をみたのがきっかけとなって、ダリの追っかけがはじまった。画集をみ
てなんとか本物をこの目でと強く思った作品がいくつかある。
☆‘十字架の聖ヨハネのキリスト’(セント・マンゴ博)
☆‘目覚めの直前、柘榴のまわりを一匹の蜜蜂が飛んで生じた夢’
(ティッセン・ボルネミッサ美)
☆‘茹でた隠元豆のある柔らかい構造ー内乱の予感’(フィラデルフィア美)
☆‘聖アントニウスの誘惑’(ブリュッセル王立美)
夢が叶い‘最高の瞬間’を味わせてもらったのは長ったらしい名前のついたティ
ッセン・ボルネミッサとフィラデルフィアの絵。ブリュッセル王立美は2度
縁があったが、なぜか期待のダリは姿をみせてくれなかった。こんな不運が
ある?そして、‘十字架の聖ヨハネのキリスト’はグラスゴーの博物館の所蔵だ
から、難しそう。
2011年スペインを旅行したとき、美術鑑賞ではマドリードでダリの‘目覚
めの直前、柘榴のまわりの一匹の蜜蜂が飛んで生じた夢’をみるのが最大の楽
しみだった。とても鑑賞欲を刺激するシュルリアリスム絵画である。魚の口
から飛び出してきた2頭の虎が中空に浮遊し裸婦に襲いかかろうとしてい
る。裸婦の下に目をやると柘榴のまわりを蜜蜂が飛んでいる。そして、虎の
上ではオリベスクを背負い昆虫のような足をした象がゆっくり進んでいる。
念願の絵がみれて最高の気分だった。
プラド美から徒歩10分くらいで到着するティッセン・ボルネミッサ美は
予想を3倍くらい上回る一級の古典絵画、近代絵画、現代アートが並んでい
た。ヨーロッパではポンピドーとテートモダンが近現代絵画ではとびぬけた
存在だと思っていたが、ここも加えたくなった。お目にかかった作品はまめ
にメモしているが、ビックリするのがアメリカの美術館にいるような作品が
ずらっと並んでいること。たとえば、ハドソンリバー派、サージェント、
ホーマー、ホッパー、ポロック、ロスコ、ステイル、ステラ、リキテンスタ
イン、オキーフ、、、ビッグネームが続々現れるのだからたまらない。
もちろん、印象派やゴッホ、ゴーギャン、ムンク、ドイツ表現派もしっかり
集めている。
そのなかでいい気持で眺めていたのはリキテンスタイン(1923~
1997)の‘浴室の女’、ドキッとするほど圧の強い女性がどーんと立ってい
るリンドナー(1901~1978)の‘サンキュー’。そして、具象画では思
わず足がとまったムンク(1863~1944)の‘湖畔の風景’を長くみてい
た。スペインでこんないいムンクに出会うなんて夢のよう。2008年、
シカゴ美で運よく遭遇したホッパー(1882~1967)の回顧展に出品
された‘ホテルの一室’とも再会した。淋しい部屋が切なくなる。
ティッセン・ボルネミッサに乾杯!