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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間’! カラヴァッジョ

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Img_20220618222701  ‘聖マタイの召命’(1600年 サン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂)

Img_0001_20220618222701   ‘エマオの晩餐’(1606年 ブレラ美)

Img_0005_20220618222701   ‘ロレートの聖母’(1603~06年 サンタゴステイーノ聖堂)

Img_0002_20220618222701   ‘果物籠’(1597年 アンブロジア―ナ絵画館)

Img_0003_20220618222701   ‘いかさま師’(1595年 キンベル美)

画家とのより緊密な関係が実現するには回顧展を3回みること、これが理想
だが思うようにはいかない。ゴッホのように短い間隔で回顧展が開催される
のは稀なことで、人気のある画家でも1度は遭遇してもそのあとはせいぜい
もう1回というのが精いっぱい。こんな展覧会シーンのなかでカラヴァッジョ
(1571~1610)についてこれまで運よく3回めぐりあった。

1回目2001年 岡崎市美(7点)、2回目2010年 ローマ スクデ
リア・デル・クイリナーレ美(24点)、3回目2016年 西洋美(10
点)。今年は国立新美で開催されたメトロポリタン美展に‘音楽家たち’がラ・
トゥールの傑作‘女占い師’と並んで展示され、多くのファンの目を楽しませ
てくれた。残念だったのは2020年に日本に初お目見えする予定になってい
たヴァチカン美が所蔵する‘キリストの埋葬’が新型コロナウイルスの感染の
影響で結局お流れになったこと。これは惜しいことをした!

岡崎でカラヴァッジョに200%嵌って、追っかけがはじまった。忘れられ
ないのは2006年と大カラヴァッジョ展があった2010年にローマの街
をカラヴァッジョの傑作を求めて美術館や聖堂をまわったこと。とりわけ
大きな感動を味わったのがサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂に描か
れている3つの‘聖マタイ伝’、カラヴァッジョの出世作となった‘聖マタイの
召命’、‘聖マタイと天使’、カラヴァッジョ自身もちょこっと顔をみせる‘聖マ
タイの殉教’。カラヴァッジョの描く宗教画は堅苦しいところがなく、イタリ
アの街を歩けばすぐ出会いそうな人たちが登場するので風俗画をみている
感覚になる。そして、描かれた場面を強烈に目に焼きつけるのが光と闇の
劇的なコントラストでみせるリアルな描写。‘聖マタイの召命’でも‘エマオの
晩餐’でもキリストはびっくりすほどイケメン。これまでこんなに惹きつけら
れるキリストがいただろうか。

画面にすっと入っていけるのは‘ロレートの聖母’でも同じ。巡礼の親子は見慣
れた顔と姿をしており、男の泥で汚れた足の裏は生な人物描写そのもの。
どこにでもいそうな美しいお母さんと赤ちゃんが二人をやさしくみつめている。
こんな心を和ます宗教画なら何枚でもみられる。

ミラノのアンブロジアーナ美にある‘果物籠’に惚れまくっている。好きな静物
画はどれかと尋ねられたら、すぐこの絵とセザンヌの‘林檎’と答える。ローマの
回顧展では単眼鏡を使って画面の隅から隅まででみたが、葉っぱについた水滴の
精緻な描写に頭がクラクラしそうだった。カラバァッジョの描く力は本当にとび
ぬけている。風俗画の傑作‘いかさま師’の若い男の後ろで目をむいている男の
表情がじつにいい。これだからカラヴァッジョはやめられない。


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