エルスハイマーの‘聖ステパノの石打ち’(1603∼04年)
レノルズの‘ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち’(1780年)
グラントの‘ウィリアム・マーカム夫人’(1857年)
国立新美で行われている‘メトロポリタン美展’は会期が残り2日となったので
誰彼となく強力に薦めてきたことが打ち止めになるが、もう一つ見逃せな
い‘スコットランド国立美展’(7/3まで 東京都美)については、人と交流す
る機会があるごとに推薦ガイダンスのテープが流れていきそう。再度出動し
た東京都美には出品作の質の高さが口コミで広まっているのか、大勢の人で
賑わっていた。
‘バロック’のところに展示されていたアダム・エルスハイマー(1578~
1610)の‘聖ステパノの石打ち’はレンブラント(1606~1669)が
同じテーマを描くときに参考にした作品。聖ステパノは最初の殉教者として
知られる聖人。ユダヤ教の律法をおかしたとして石打ちという残酷な刑で絶
命した。‘岩波 世界の美術 レンブラント’(ヴェステルマン著 2005年
岩波書店)に載っていたこの絵がみれるとは思ってもみなかった。
ロマン派のマーティン(1787~1854)の作品をたくさんみたいと熱望
しているので、‘マクベス’に惹きこまれた。これがもっと大きな画面で描かれ
ていたら背景の兵士の群像描写はもっと迫力さが増し、上空の天を生き物のよ
うに動く描写によって崇高さと神秘性をもっと感じるにちがいない。
ダイス(1806~1864)の‘荒野のダビデ’は中央のダビデの配置がマー
ティンの絵の二人の兵士とよく似ている。
肖像画で圧倒的な存在感を発揮しているのがイギリス絵画のビッグネーム、
レノルズ(1723~1854)の‘ウォルドグレイブ家の貴婦人たち’とスコットランド出身のグラント(1803~1878)の‘ウィリアム・マーカス夫人’。とくにはじめてみたグラントの女性の絵には200%惹きこまれた。これは大収穫だった。イギリスの肖像画はTV映画‘シャーロック・ホームズの冒険’の影響で男性でも女性でも以前と見方が変わってきた。