‘コンポジション 2羽の鸚鵡’(1935~39年 ポンピドー)
ユニークな人物像が目に刻まれている画家は何人かいる。モディリ
アーニのうりざね顔、デ・キリコの形而上絵画に登場する目も鼻も
ないマネキン人形、そしてレジェの描く男女の形も強く印象に残る。
どの人物もみな正面向きで彫像のようにボリューム感があり丸っこ
いのが特徴。このレジェ様式の人物は最初は画面いっぱいにどん
と描かれた。‘読書’は幾何学的な模様を背景にして似た顔の二人の
女性が描かれている。ぱっとみるとロボットのイメージ。顔、首、
腕のパーツをつくり組み合わせるとレジェ人形は何個でも出来上る。
その後人形の数はだんだん増えていき大画面を用いた群像図がでて
くる。ポンピドーにはぐっとくる作品が2点ある。縦が4m、横が
4.8mもある巨大なキャンバスに描かれた‘コンポジション 2羽
の鸚鵡(おうむ)’と代表作の‘余暇(ルイ・ダヴィッドへのオマージ
ュ)’。ともに正面性の強い構図は同じだが、腕を曲げたり、足を
交差するポーズなどをとっているので動きがあり人形に命が吹きこま
れた感じになっている。
‘余暇’はポンピドーへ出かけてよかったなと思わせる作品。これは
日本で開催された展覧会にも出品された。MoMAにあるピカソの‘ア
ヴィニョンの娘たち’同様、これが美術の教科書に載っている絵かと、
夢中でみた。仕事のあと余暇を楽しむ人々の幸せな光景が明るい色彩
とモチーフを強く印象付ける黒の輪郭線によって表現されている。
後知恵だか、レジャーと自転車はこんなにすっと結びつくのかという
のが率直なところ。はじめてのポンピドーでは自転車とロボットのよ
うな人物、そして空を飛ぶ鳩と自然を象徴する花びらばかりの気をと
られていた。そのため、手前で地面に腰を下ろして紙片を手に持つ若
い女姓のポーズがダヴィッドの‘マラーの死’を引用していることは全然
知らなかった。でも、それに関係なくこの絵の楽しい気分は心を軽く
する。
レジェはサーカスにも関心を寄せている。‘サーカスの曲芸師’は体が
ヘンによじれて異常をきたすのが心配になるくらい手足を曲げている。
こうしたアクロバット全開の芸はサーカスの華。‘大パレード’は大勢
の芸人たちが得意の芸で観客を大いに喜ばしている。青や黄色や赤の
色の帯や円が平板な描き方にアクセントをつけ芸人のリズミカルな動
を際立たせている。幾何学的な帯を使うアイデアは流石!