‘ニューヨーク・シティⅠ’(1942年 ポンピドーセンター)
‘赤、青、黄のあるコンポジション’(1930年 チューリヒ美)
西洋絵画への関心が高まってくると作品の分野毎に必見の美術館が心の中に
どんと居座ってくる。現代アートではパリのポンピドーセンターとニューヨ
ークにある近代美術館(MoMA)。ポンピドーは観光旅行でパリへ出かけた
ときはどうしてもルーヴルやオルセーのほうが優先順位が高くなるので、
はじめてのパリではパスになる可能性がある。これに対し、NYではメトロポ
リタンとMoMAの訪問が定番の美術館観光としてセットになっていることもあ
るためMoMAの名画が存分に楽しめる。
はじめてMoMAを訪れたとき、モンドリアン(1872~1944)の傑作
‘ブロードウェイ・ブギウギ’に200%KOされた。モンドリアンはNYが大好
きでジャズ、とくにブギウギに体をはずませていた。ブギウギを聴きながら
この絵をみたら楽しさは倍増すること請け合い。自由で活気にあふれるNYの
街の様子が格子状に配置された黄色の帯で見事に表現されている。帯には赤
と青、灰色の四角がアクセントとなってリズミカルに並んでいる。この絵は
白の背景に原色の帯が配置されており昼間の光景をイメージさせるが、
じつはこの模様はマンハッタンの夜景の光景をそっくりなのである。超高層
ビル群の窓の光がまさにこんな感じ。
モンドリアンは直線と3原色によって構成された抽象絵画を描き、その進化
の果てにたどり着いたのが‘ブロードウェイ・ブギウギ’。‘ニューヨーク・シテ
ィⅠ’は3連作の最初のもので、赤、黄、青の線はアメリカ製のテープが使わ
れている。NYに満ち満ちている上昇志向のエネルギーを開放的な色彩の直線
を縦横にのばし表現している。この絵では黒の線が消え、‘ブロードウェイ・
ブギウギ’に近づいている。
‘トラファルガー広場’は大きな色面と黒の線の数が少ない‘赤、青、黄色のある
ポジション’や‘コンポジション’が発展して生まれたもの。これは最近自然の
光景や街並みを撮影するために飛ばされるドローンの映像を連想するといい。
空高くにいるドローンがロンドンのトラファルガー広場をとらえるとこの絵
のようにみえる。