昨年同様、今年も美術館で計画されている展覧会は新型コロナの感染の状況
次第によって大きく振り回されている。緊急事態宣言がでると美術館自体が
休館せざるをえなくなるので鑑賞意欲がガクンとトーンダウンする。その
ため、正直なところ注目の展覧会であっても以前のようにだんだんと高まる
期待感やわくわくするような心の高揚が生じてこない。
例えば、今月の22日から東博ではじまる‘国宝 聖林寺十一面観音’展
(9月12日まで)は期待値の高い特別展だから予約をいれてもいいタ
イミングにきているが、まだ様子見モードが続いている。
奈良時代の最高傑作といわれるこの十一面観音のお話は今年2月、NHKの
‘歴史ヒストリア’でとりあげられた。仏像の誕生からはじまり、明治時代にな
り待ち受けていた廃仏毀釈の嵐のよる仏像存続の危機、アメリカ人、フェノ
ロサが政府に強く働きかけたことで実現した‘古社寺保存法’(国宝の誕生)
など多くの情報がつまった良質の美術番組だった。番組の最後にでてきたの
が聖林寺で計画されている収蔵庫の耐震性強化のための改修工事。クラウド
ファンディングにより資金の目標金額1500万円を上回る1718万円の
支援金が集まった。とてもいい話である。
奈良の桜井市にある聖林寺ではなく、東博で‘十一面観音’がみられるのだから
大勢の仏像ファンと一緒にみたいと思う反面、密になりすぎるのも怖いとい
う感情もおきる。なにかもどかしい。どのタイミングで出動するかよく思案し
たい。