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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! クールベ(1)

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     ‘絶望’(1843年)

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     ‘恐怖におののく男’(1843~45年 オスロ国立美)

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  ‘自画像、パイプの男’(1848~49年 モンペリエ ファーブル美)

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     ‘ボードレールの肖像’(1848~49年 ファーブル美)

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     ‘出会い’(1854年 ファーブル美)

先週の‘日曜美術館’に登場したクールベ(1819~1877)は予想通
り現在、パナソニック汐留美で開催中の‘クールベと海’(4/10~6/13)
絡みのものだった。注目していたクールベの回顧展なので出動のタイミン
グをはかっていたら運悪く緊急事態宣言および延長により美術館は5/31
まで休館。6月に入ってすぐ出かけるつもり。

長く日美をみているが、過去にクールベがとりあげられたかどうか、しか
とした記憶がない。日本の美術館でクールベをみたのは西洋美や大原美や
島根県美にある波の絵とア―ティゾンが所蔵する鹿ぐらいしかない。だから、
ある時期までは馴染みの薄い画家だった。だが、オルセーで大作の‘オルナン
の埋葬’と‘画家のアトリエ’などをみてクールベに対する見方が変わった。
軽く見れないビッグな画家であることを200%確信した。その認識が決定
的となったのが2008年パリのグラン・パレで幸運にも遭遇した大クール
ベ展。入館に2時間かかったが、生涯の思い出となるエポック的な鑑賞体験
だった。

いつもの紹介パターンだと女性の肖像画から画家の物語はスタートするが、
クールベに限ってはまず男性の肖像画からはじめたくなる。それほどぐっと
くる絵画が揃っているのである。グラン・パレの回顧展で制作された図録の
表紙に使われているのが20代半ばに描かれた‘絶望’、マグニテュ―ド7く
らいの衝撃度だった。‘俺の未来はあるのか?’、サロン応募した作品はこと
ごとく落選し自尊心をずたずたにされていたクールベの心境がそのまま表現
されている。展示替えのためグラン・パレではみられなかった‘恐怖におの
のく男’は2018年の北欧旅行でようやくリカバリーした。この絵(未完)
ではクールベの精神はかなり痛み絶望の淵に追いやられている。

レンブラントを意識したのかクールベの自画像は数多くある。モンペリエの
ファーブル美にある‘パイプ男’はなかなかいい絵。クールベはこんなことを言
っている。‘これはある狂信者、ある苦行者の肖像である。これは自分の教育
をつくりあげたナンセンスによって幻想を解かれ、自分自身の原則によって
生きることを求めるある男の肖像である’。

クールベの支援者であったボードレールの肖像とパトロンのブリュイヤスが
クールベを出迎える‘出会い’(この絵は一度日本にやってきた)も印象深い
作品。ブリュイヤス(1821~1877)はフランス南部の町モンペリエの
銀行家の息子でクールベと同時代を生きた人物。


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