‘ジュリエット・クールベの肖像’(1844年 プティ・パレ美)
‘窓辺にいる3人のイギリスの少女’(1865年 ニュ・カールスベア美)
肖像画ではモデルの人物は立ち姿、椅子に座っている姿などいろんな形で描
かれる。クールベ(1819~1877)の妹は椅子に座ってポーズをとっ
ている。この絵がちょっと気になるのは体の向きをあまりみられない右向き
にして色白の顔が描かれているから。バルテュス(1908~2001)は
この肖像画を真似て‘目を覚ましたテレーズ’(1938年 メトロポリタン美)
を制作している。
妹と同様に静かな雰囲気につつまれているのが‘眠る糸紡ぎ女’。働く女性の
光景だが、作業は一時中断して眠る姿がとらえられている。どうやらつい睡
魔に襲われた感じ。膝の上にある糸巻棒の糸が指に軽くかかってているとこ
ろに視線が自然とむかう。時間は連続しており、少しすると目を覚ましまた
糸紡ぎがはじまりそう。
‘グレゴワール小母さん’はインパクトのある肖像画。シカゴ美でもパリのグ
ラン・パレでもみたが、ひと目見てその存在感に圧倒された。それもそのは
ず、この女性は飲み屋のマダム。飲食業に特有のやり手の女性のイメージ、
‘いいことあったかい。まあ、一杯やりなよ’、くせのある大きな声が聞こえて
くるよう。
女の子の金髪が大変印象的な‘窓辺にいる3人のイギリスの少女’は2018年、
コペンハーゲンにあるニュ・カールスベア美でお目にかかった。グラン・パレ
の回顧展にも出品されたが、展示替えでみれなかった。だから、デンマークが
誇る有名な美術館でリカバリーが果たせたことは大きな喜びである。デンマー
クにはこの絵があり、オスロには‘恐怖におののく男’、そしてスウェーデンの
ストックホルム国立美は‘山形美にも別のヴァージョンがある‘ジョーの肖像、
美しいアイルランド女性’を所蔵している。北欧の美術館にはクールベのいい絵
が揃っている。すばらしい!
パリで大盛況だったクールベ展はこのあとNYのメトロポリタン美でも2008
年の2月から5月にかけて開催された。METに巡回したのはここがクールベを
両手くらいもっているから。そのなかでお気に入りは‘女とオウム’、挑発的な
裸婦像を鮮やかな色彩で描かれたオウムが浮き上がらせている。