‘舟遊び’(1893年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
‘青いひじ掛け椅子の少女’(1878年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
‘果実をとろうとする子ども’(1893年 ヴァージニア美)
アメリカの美術館をまわってみてわかったことがある。それは印象派・
ポスト印象派をもっともっと楽しむためにはパリやロンドンにあるオルセ
ーやコートールドなどををみて、これで印象派はOKと納得していては楽し
みの半分をあじわっただけだということ。アメリカにはマネ、モネ、ルノ
ワール、ゴッホ、ゴーギャン、スーラといった印象派オールスターの名画
がまだまだたくさん残っており、ここでも感動袋は大きく膨らむ。
そして、もうひとつの収穫がカイユボットとメアリー・カサット(1844
~1926)に開眼したこと。シカゴ美やボストン美などでこの二人に遭遇
しなかったら、かれらに対する評価は以前のままで準・ビッグネームという
位置づけだっただろう。ところが、作品をたくさんみてガラッと変わった。
偉大な画家だった!
カサットの絵をアメリカではじめてお目にかかったのはボストン美に展示し
てあった‘5時のお茶’。これが27年前の1993年。まだカサットをみる目
は軽く、さらっとみるだけ。これがだんだん高評価に変わっていくきっかけ
となったのが2008年のアメリカ初の美術館巡り。このあと2回有名な美
術館をまわるたびによくカサットに出くわし、愛らしい母子像や風俗画的な
女性肖像画が目を楽しませてくれた。
そのうえ日本の美術館でもカサット関連の展覧会がふたつあった。ワシント
ン・ナショナル・ギャラリー名画展(2011年 国立新美)とカサット展
(2016年 横浜美)。国立新美には青が印象的な‘青いひじ掛け椅子の少
女’など3点の子どもの絵が登場した。いずれもほっとする癒しの絵画。
2013年にワシントンに行ったとき‘舟遊び’の浮世絵を思い出させる大胆な
構図に息を呑んだ。長いことこの絵が気になっていたが、ようやく思いの丈
が叶った。
そして、横浜美の回顧展でカサットへの思いれが頂点に達した。‘桟敷席にて’
は印象派の画集に必ず載っているカサットの代表作。日本でボストン美名画
展は何度も開催されるのに、この絵は姿をみせてくれなかった。願いが実現
したのは2015年3度目のボストン美訪問。そしたら、1年後、横浜でま
たオペラグラスでみている美しい女性と再会した。さらに、母子像でもっと
も魅了された‘果実をとろうとする子ども’にも出会った。カサットに乾杯!