2004年に彫刻の森美でヘンリー・ムーア展が行われたが、このころまだ
広島にいたので見ることができなかった。人体をモチーフにした作品などが
15点野外展示されたという。あとからこういう話をきくと惜しいことをし
たなと思うが、鑑賞意欲が盛り上がったときちょうどうまい具合に展覧会に
遭遇するというのは滅多にない。だいたいはタイミングがずれる。
野外展示スペースでいつも楽しめるムーア(1898~1986)はMOA
にもある‘ファミリーグループ’と‘横たわる像=アーチ状の足’。横たわる像に
はいろいろヴァージョンがあり、これは大きな足がアーチ状になっているも
の。この像のシリーズの特徴はこの量塊にうがたれた穴。この穴によって
造形に柔らかさが生まれ像との距離がぐっと近くなる。立体の彫刻は密着度
が深まると心のなかにずっとい続ける。
ムーアと同じイギリス人のバーバラ・ヘップワース(1903~1975)
は女流彫刻家。彼女の作品に出会ったのはロンドンのテートモダンにある白
い卵を連想させるもの。‘ふたつの形’はシンプルなフォルムのオブジェがふた
つ直立している。穴がアクセントとなり男女にも木々にも変容する。
ザッキン(1890~1967)の‘住まい’はタイトルの意味がすぐわかる
ところがいい。真ん中にいるのが奥さんで後ろが旦那、左にみえる手は子ど
もたちかもしれない。鉄の素材なのにどこかあたたかみのある造形が目に焼
きついている。
ロシア出身のガボ(1890~1977)の‘球体のテーマ’はどうみてもフク
ロウの目。ステンレスを使った美しい曲面が左右にうごいているようにみえ
るのでついフクロウをイメージしてしまう。同じ丸い物体でもポモドーロ
(1926~)の‘球体をもった球体’は荒々しい原始地球を想像させる。真ん
中の地割れした裂け目をのぞくともうひとつ地球が誕生している。