聖徳太子によって建立された大阪の四天王寺へ行ったのがいつごろだっか
思い出せない。でも、ここでみたすばらしい装飾経‘扇面法華経冊子’のこ
とはエポック的な鑑賞体験として深く心に刻まれている。大きな日本美術
の展覧会があるとき、これは欠かせないピースのひとつ。
もっとも気持ちよくさせてくれるのが‘法華経巻一 料紙を手にする公卿
と童女’。文机の前の公卿と可愛い女の子が扇子いっぱいにどんと描かれて
いる。金や銀の箔の小片が蒔かれた華やかな装飾にも驚かされ、肝心の
法華経の経文がビジーに感じなくなる。これが装飾経のマジック。
‘巻六 屋内の女房と干し物をする女’にも目は寄っていく。平安時代の後半
における庶民の日常生活のひとこまが生き生きと表現されている。貴重な
風俗画であり書物ではイメージできないことがしっかり記録されている。
‘懸守(かけまもり)’はお守りのはじまりみたいなもの。7種類ある。大き
さは幅6~8㎝の小物アイテム。桜の花とか枕、小さな箱のような形のも
のがある。魅了されるのは松喰鶴、七宝花菱などの凝ったデザイン。女性
はこういうのをみたら全部揃えたくなるにちがいない。
8世紀のはじめにつくられた‘金銅威奈大村骨蔵器’は天明年間(1781
~89年)に大和国(奈良県)で開墾中に発見された。丸い骨蔵は心が落
ち着く。頑丈な金銅合子に遺骨がおさまれば安心する。