オルセーには絵画だけでなく、彫刻、装飾・工芸、写真も飾られている。
時間的に余裕があればそうした作品もみれるのだが、鑑賞の対象はどうして
も絵画中心になってしまう。そのため、たしかに見たという実感があるのは
造形的にインパクトのあるいくつかの彫刻作品とガレのガラス作品などに限
られる。
カルポー(1827~1875)の‘ダンス’をよく覚えているのはお目当て
の絵画をみたあと中央通路のところで休憩していたとき目に入ったから。
とくに印象深いのが女性たちが満面の笑みを浮かべているところ。こんなに
喜びの感情表現が強く目に訴える彫刻はほかに見たことがない。
人気の観光地モンサンミッシェルは2008年訪問した。名物のオムレツは
あまり美味しくなかった以外は楽しい思い出。ガイドの説明でよく頭に入っ
ているのが聖堂の鐘楼の上に突き出るようにして立つ聖ミカエル像の話。
これは1897年彫刻家フレミエによって製作されたものでオルセーにはそ
の銅製のレプリカがある。じつにカッコいいミカエル像!
誰がつくったのか知らなくてもすごく目に焼きつく彫刻がダル―(1838
~1902)の‘鍛冶職人’。逞しい肉体をした職人の前かがみになった姿が忘
れられない。この彫刻とすぐむすびつく絵がある。絵画部門に展示してある
コルモン(1845~1924)の超大作‘カイン’。2つは力強い写実主義で
つながっている。
マイヨール(1861~1944)の作品をいつかどっとみたいと願ってい
るがまだその機会に恵まれない。これまでマイヨールを何点みただろうか、
両手にいってないような気がする。記憶に残っているのはプラハの近代美
だけ。ところでパリにマイヨ―ル美がある?そのため、オルセーでみた‘地中
海’の柔らかい裸婦像は貴重な体験だった。