画家とかかわり方はあることをきっかけにぐっと強まることがときどきある。
絵画に関心をもちはじめたころは画集で知っている有名な画家たちの作品を
軸にして鑑賞を広げていく。そのため、知名度の低い画家の絵については軽
くみるかパスをすることが多くなる。オルセーでも最初の頃はナビ派の
モーリス・ドニ(1870~1943)やフェリックス・ヴァロットン
(1865~1925)の印象はとっても薄かった。
それが変わったのは2014年、ポスト印象派、新印象派、そしてナビ派に
スポットを当てて構成されたオルセー美展に遭遇したときから。また、ドニ
もヴァロットンも回顧展を一度経験したことが大きく影響し二人の魅力に
開眼することになった。はじめから食わず嫌いになる画家は少ないので、
画家との密着度はやはり作品をたくさんみることによって深まっていく。
ドニの‘木々のなかの行列’は背の高い緑の木々のインパクトが強烈。手前に
太い幹の木をおきその先にひと回り細い木をならべやや傾けたりカーブをつ
くり天にむかってスーっとのびるように描いている。このうす緑の木がこれ
だけ印象的なのは森のむこうにみえる青空が白い雲で独占されこちらを明る
くしているから。そのなかを淡いピンクの衣装をまとっ女性たちは進んで
いる。ペタッとした平板な絵だが、ここには動きがありその爽快な色使いも
心を揺すぶる。
2011年新宿の損保ジャパン美にドニが妻のマルトや子どもたちを描いた
肖像画がたくさん展示された。これでドニの人物画にいっぺんに参った。
ドニはまさに現代のラファエロだった!ピアノの前にいるマルトをモデルに
した‘マレーヌ姫のメヌエット’はマネやルノワールとはひと味違い優しさや
温かさが感じられるすばらしい肖像画。
スイスのローザンヌに生まれたヴァロットンはオルセー以外の美術館ではほ
とんどお目にかからない。だから、オルセーにある少ない作品がこの画家
のイメージ。強い日差しがつくる子どもや木々の影が強く印象に残る‘ボール’
はヴァロットンとのかかわり方は深くないのにどこか気になる絵だった。
そんな少しだけのつながりだったヴァロットンが2014年三菱一号館美で
大暴れした。ええー、ヴァロットンってこんないい画家だったのか!という
感じ。このヴァロットン展は前年の秋パリのグラン・パレでスタートし31
万人が押し寄せたという。‘ボール’同様、‘化粧台の前のミシア’でも明るい光
が目に焼きつく。