絵画でも彫刻でも芸術家の価値はそのオリジナリティで決まる。オリジナリ
ティの発揮され方はいろいろ、色彩で勝負したり、構図にこだわったり、
描く対象を人物にするか風景にするか。モネたちがはじめた印象派は風景画
の描き方に革新をもちこんだ。その前にも風景画の名手たちはいた。イギリ
スのターナーやコンスタブル、フランスではコロー、クールベ、バルビゾン
派、そしてモネに野外で風景を描くことをすすめたブーダン。
日本で行われるモネ展は欠かさずみているのでブーダン(1824~
1898)やヨンキント(1819~1891)の作品にも目が慣れている
。どこの美術館の所蔵かすぐ思い浮かぶのはオルセーとマルモッタン。フラ
ンス以外の国の美術館となるとぐっとせばまってくる。ボストン美とかワシ
ントンナショナルギャラリーでブーダンの海の絵はみたが、ヨンキントは
記憶がない。
‘トルーヴィㇽの浜辺’をはじめてみた頃はトルーヴィルはどこ?具体的な海
のイメージはなかったが、今ではフランスのノルマンディ海岸にある街とい
わかっている。画面の多くを空の描写に使い浜辺で多くの人々が海の景色を
楽しんでいる様子描くのがブーダンの特徴。どの絵もだいたいこのパターン
だから数点いいのをみてしまえばあとはそう前のめりにならない。
ヨンキントはオランダ人だがフランスが第二の故郷になった。彼もノルマ
ンディの風景を数多く描いた。そして、パリの光景もしっかりとらえ
ている。‘セーヌ川とノートルダム大聖堂’はなかなかいい出来映え。ノート
ルダム大聖堂が火災に見舞われるというショッキングな出来事があったの
でこの絵の角度からだと真んなかの高い塔はもうみられない。早期の再建
を願っているがかなりの時間がかかりそう。
ピサロ(1830~1903)は印象派では兄貴格の存在。オルセーでは
4、5点みたが‘寒々しい感じがよくでている‘霜’がお気に入り。この画家は
チャレンジ精神が旺盛でスーラが点描で話題になるとすぐこれを真似た作品
を描く。だから、絵描きとしての才能はたっぷりもっていたことはまちが
いない。
6年前、ブリジストン美でカイユボット(1848~1894)の回顧展が
行われた。‘床のかんなかけ’は残念ながら出品されなかったがいろんな美術
館から主要作品が結集しており忘れられない展覧会となった。カイユボット
は‘床のかんなかけ’を描いた画家というイメージが長く続いた。でも、この
風俗画に大変魅了されたので名前は深く胸に刻まれた。