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Channel: いづつやの文化記号
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美術館に乾杯! オルセー美 その九

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Img_20190629222101     マネの‘草上の昼食’(1863年)

 

Img_0001_20190629222101     マネの‘笛を吹く少年’(1866年)

 

Img_0003_20190629222101  ファンタン=ラトゥ―ルの‘バティニョールのアトリエ’(1870年)

 

Img_0002_20190629222101     バジールの‘家族の集い’(1867年)

 

オルセーが印象派の殿堂ということを強く感じだすのはマネ
(1832~1883)の絵あたりから。‘印象派をみるぞ!’モードのスイ
ッチが入り、体も心もがだんだん熱くなってくる。はじめてこの美術館に来
たときは美術本から得た必見の名画がしっかり頭のなかに入っていた。
その筆頭がマネの‘草上の昼食’。結構、大きな絵なので森の一角でくつろぐ3
人の男女の憩いの席をちょっと離れたところから眺めているような気分に
なる。そして、こっちをじっとみている裸婦モデルと目があってしまった。
こうなったら絵に密着するしかない。

裸婦のむこうにいる男性の顔をじっくりみると、おもしろいことに裸婦の顔
の角度とまったく同じで目、鼻、口も瓜二つ。この二人の印象にくらべると
右側にいる男性の生感覚は強くない。でも、この男の顎ひげ、帽子、上着の
黒尽くしがこの画面をぐっと引き締めている。そして、男たちの間に入る
ように水浴中の女性が配置され三角形の構図ができる。インパクトのある黒
の使い方と古典画のモチーフである水浴をもちこむ発想の斬新さにマネの
卓越した力量が発揮されている。やっぱりマネは天才!

3年前、国立新美でオルセー&オランジュリーの所蔵品を軸とするルノワー
ル展が開かれた。代表作の‘ムーラン・ド・ラ・ギャレット’が日本にやって来
たのはひとつの‘事件’といっていい。となると、次の‘事件’を期待したくなる。
そう、この‘草上の昼食’を目玉としたマネ展。そのときはまたまた‘笛を吹く
少年’が横に並ぶことは今から決まっている。東京都美、アゲイン国立新美、
西洋美、三菱一号館美に手をあわせておきたい。

ファンタン=ラトゥール(1836~1904)の‘バティニョールのアト
リエ’は当時新しい絵画の流れのど真ん中にマネがいたことを如実に物語って
いる。中央でキャンバスに筆を入れているのが38歳のマネ、その後ろで
帽子を被っているのがルノワール(30歳)、そして右端の背の高い人物が
バジール(29歳)、そのバジールの後ろで顔だけみせるモネ(30歳)。

裕福な家庭に生まれたバジール(1841~1870)の‘家族の集い’は見事
な群像肖像画。人々の表情が硬いのはいなめないが、なんといっても南仏の
明るい日差しがいい感じ。空は目の覚めるような青で皆がくつろぐところ
には木漏れ日が。モネやルノワールと仲の良かったバジールは陸軍の志願兵
として普仏戦争に従軍し1870年戦死した。若死にが悔やまれる。


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