マネの肖像画に登場するベルト・モリゾ(1841~1895)は大変な
美人。しかも絵の才能があり印象派展にも参加すると人々の注目を集める。
‘ゆりかご’はとても心が和む絵。すやすや眠る赤ちゃんをお母さんが優しい
まなざしでみつめている。この絵がモリゾのイメージをつくった。その後、
マルモッタンやワシントンのナショナルギャラリーでもみる機会があり、
おおよそ画風がつかめた。27歳のときマネに弟子入りしマネの描き方を
吸収するが、師匠とはちがい人物の輪郭をはっきりさせないでぼかすこと
が多いためじっと見つめる肖像画とまではいかない。
これに対し、同じくマネに学んだエヴァ・ゴンザレス(1847~
1883)はモリゾよりインパクトがあり師匠譲りの黒を効果的に使った
作品を描いた。25歳のときの‘イタリア人座の桟敷席’はマネではないかと
錯覚させるほどいい絵。目がくりくりとして愛嬌のあるエヴァの才能を
マネはモリゾより高く評価していたのかもしれない。しかし、彼女は悲し
いことにマネが亡くなって6日後出産中に命を落とした。34歳という若
さだった。
2016年、横浜美でカサット展がありすばらしい母子画の数々を楽しま
せてもらった。2008年からスタートしたアメリカの美術館巡りで
カサット(1844~1926)をたくさんみた。その集大成のような形
で回顧展の遭遇したので今ではカサットはこの先ずっと付き合っていきた
い画家の仲間入りをした。ところが、オルセーで‘縫いものをする女’にお
目にかかったときはさらっとみただけだった。気持ちがモネやルノワール
らに200%向かっていたので仕方がない。でも、時が流れそのカサット
の存在感がぐんと増している。
ピサロ(1830~1903)には女性を描いたものもたくさんある。
‘小枝をもった若い娘’は木漏れ日が衣服にうつりこむところなどがルノワ
ールの‘ぶらんこ’とよく似ている。こういう人物を大きく描く作品という
と大原美にある‘リンゴを収穫する人々’などが目に浮かんでくる。以前
広島にいたころ尾道でピサロ展を体験したが、もう一回大規模な回顧展を
みてみたい。