フィレンツェの教会は正面に面して広場があることが多いが、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂もそのひとつ。ここではボッティチェリやダ・ヴィンチが登場する以前に活躍したルネサンスのスター画家と出会えるので大きな満足度がえられる。
ジョット(1267~1337)の黄色に輝く‘磔刑図’、最も初期の作品のひとつでこの聖堂のために描かれた。天井から吊り下げられており、キリストのわき腹から血が噴水のように飛び散るさまが痛々しい。
美術の本に遠近法の例として必ずでてくるのがマザッチョ(1401~1428)の‘聖三位一体’。だまし絵をみている感覚で神と十字架にかけられたキリストの背後がぐっと奥にへこみ立体的な空間になっていることに200%驚く。
この遠近法のマジックをみるとここへやって来た甲斐があったという気持ちに
なるが、もう一点嬉しい絵があった。それはギルランダイオ(1449~
1494)が礼拝堂のために描いたフレスコ画‘洗礼者ヨハネの誕生’。
みてて楽しいのは聖書の物語をモチーフとしながら、宗教絵画の匂いが少なく
当時のフィレンツェの風俗がこまかく描き込まれていること。中央の女性の
着ている衣服の模様がとても洒落ており、右端の女性は頭に載せた皿で果物
を運んでいる。本当にいい風俗画と出会った。
このあと期待していたウッチェロ(1397~1475)の‘ノアの洪水’をみる予定だった。ところが、運悪く教会の左手にある緑の回廊が工事中のためなかに入れない、ううーん、残念!次回リカバリーできるだろうか。