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‘初夢’展覧会! その六

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 ランブール兄弟の‘ベリー公のいとも豪華なる時祷書:5月’(1410年 コンデ美)

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    ジョットの‘パドヴァのアレーナ礼拝堂’(1303~06年)

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    ジョットの‘アレーナ礼拝堂:キリストの哀悼’(1303~05年)

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 ピエロ・デッラ・フランチェスカの‘慈悲の聖母’(1445年 サンセポルクロ市美)

西洋絵画に関心をもったころからその中心にどんとあたったのがルネサンス絵画と印象派。そのため作品とのつきあいは一番長く名画への思い入れはとても強い。

海外の美術館をみてまわるとき鑑賞する機会がもっとも多いのはルネサンスやバロックを中心とした古典絵画。観光目的で海外に出かけたとしてもツアーのなかに例えばルーブルやプラドやウフィッツイなどは必ず組み込まれているので美術にそれほど詳しくなくても一時的には西洋絵画のど真ん中を楽しんでいることになる。

こういう旅をしたあと美術の真髄に深く入っていきたいと思うようになると絵画の世界の探索がはじまる。すると、普通のツアー旅行に参加しているだけではとても目にすることができないスゴイ作品があることがわかってくる。でも、こういうケースでは実際に鑑賞するとなるとそう簡単にはいかない。

そんな思いがずっと続いているのがパリの北50㎞くらいのところにあるシャンティイのコンデ美、ここの至宝中の至宝がランブール兄弟の‘ベリー公のいとも豪華なる時祷書’。はじめて絵の存在を知ったのはもうずいぶん前のことだが、その頃はこの美術館を訪問すればみれると思っていた。ところが、後でこれは一般公開はされてない特別な美術品であることがわかった。だから、これからも心を奪われるのはずっと夢のなかだけ。

ジョット(1267~1337)はフィレンツのウフィッツイを訪問したりアッシジのサン・フランチェスカ聖堂へ足を運び連作‘フランチェスカ物語’をみたので画集にでている代表作はかなりみたことになる。しかし、ある絵をみないとこの画家に最接近したとはいえない。

それはパドヴァのアレーナ礼拝堂に描かれている連作‘イエスキリスト物語’。パドヴァはヴェネツィからはクルマで1時間ほどで行ける距離だからその気になれば出かけることはできるが、このフレスコ壁画をみるためには予約が必要になる。そのためイタリア旅行の実行計画をつくるとなると結構面倒。わが家はまだ機が熟してない。

ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1416~1492)の画業がとても詳しく書かれた本が2004年、岩波から‘世界の美術’の一冊として出版された。このシリーズにとりあげられた画家は10人。ルネサンスではミケランジェロとピエロ・デッラ・フランチェスカの二人。この本を熱心に読んだおかげでピエロにのめり込んだか、‘慈悲の聖母’などみたい絵がたくさん残っている。いつか画家の生地、サンセポルクロに行ってみたい。


話題の‘フェルメール展’!

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     ‘ワイングラス’(1661~62年 ベルリン国立美)

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     ‘取り持ち女’(1656年 ドレスデン国立古典絵画館)

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     ‘牛乳を注ぐ女’(1658~60年 アムステルダム国立美)

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     ‘真珠の首飾りの女’(1662~65年 ベルリン国立美)

日本の美術館でははじめての日時指定入場制を採用して開催されている‘フェルメール展’(2/3まで)をみてきた。10日11時で予約したので11時になるとすぐ入れると思っていたが、10分前に上野の森美に着くと長い行列ができていた。みな11~12:30に予約した人たち、ええー、こんなに並んでいるの!?すぐみれないじゃない、とちょっと焦った。

ところが、その心配は先頭の人が入館をはじめるとすぐ和らいだ。どんどん中に吸い込まれていくので待っているという感じはしない。クレイジーに高いチケット代をとっているので音声ガイドを無料で配っているが、こんな子どもだましのようなサービスをしても好感度は上がらない。

オランダ絵画全体には関心が薄いので係員にいってフェルメール(1632~1675)の絵が飾ってある最後の部屋を案内してもらった。今展示してあるのは7点。お目当ては初対面の‘ワイングラス’と前日から登場した‘取り持ち女’。

定番のTV美術番組、‘日曜美術館’と‘美の巨人たち’でスポットを当てていたのは初の来日となる‘ワイングラス’のワイングラスや白い壺の精緻な質感描写。たしかに目が点になるほど材質のリアルさを徹底的に表現してい。また、床のタイルが右の奥の方からこちらのほうに落ち込んでいるようにみえる。

これに対して以前ドレスデン美へ行ったとき見逃した‘取り持ち女’は初期の風俗画、画面は宗教画の‘マルタとマリアの家のキリスト’同様、画面は後に描かれた作品にくらべるとひとまわり大きいが、人物の顔や手の描き方が緻密な描写とはいえずぼやっとしている。だから、絵の出来としては中途半端な感じ。

この2点をみたのでフェルメールのコンプリートにリーチがかかった。だが、残る一枚‘音楽のレッスン’(バッキンガム、宮殿王室コレクション)にめぐり会えるかはまったく目途が立たない。ロンドンにまた出かけることがあれば事前にクイーンズ・ギャラリーのHPのチェックは欠かさないつもりだが、ここに展示されるかどうかよくわからない。

もっともありがたいのはどこかの美術館が5年後?くらいにフェルメール展を開催してこの絵をもってきてくれること。待ちのスタンスではコンプリートにはならないと思うが、あまりこだわってない。

今回、アムステルダム国立美から最も有名な‘牛乳を注ぐ女’がやって来た。絵の完成度でいうとやはりこの絵画がNO.1。家政婦が牛乳を注ぐところを正面から描くという斬新さに加えラピスラズリの青の輝きが本当に美しい。そして、柔らかい日差しがこむ部屋の静けさが心をやさしくつつんでくれる。

描かれた女性がもっている愛らしさに魅了されるのが‘真珠の首飾りの女’、またみれるとは思ってもいなかった。マウリッツハイス美の‘真珠の首飾りの少女’とこの絵は毎年でもみたくなる。

さて、次のフェルメール展に期待したい作品は何か、ズバリ、マウリッツハイスにある‘デルフトの眺望’!この絵は美術館の内規で貸し出さないことになっている気がするが、日本とオランダの良好な関係からすると無理を聞いてもらえる可能性がゼロではない。チャレンジしてくれる美術館がでてくるだろうか。

長澤芦雪の‘白象黒牛図’!

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     長澤芦雪の‘白象黒牛図屏風’(18世紀)

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     円山応挙の‘雲龍図’(1784年 三井記念美)

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     沈南蘋の‘花鳥動物図 栗鼠瓜’(1750年 三井記念美)

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     野々村仁清の‘信楽写兎耳付水指’(17世紀 三井記念美)

みどりがめさんに教えてもらった長澤芦雪の‘白象黒牛図屏風’をみるため三井記念美を久しぶりに訪問した。現在、ここで‘国宝雪松図と動物アート’(1/31まで)が開催されている。

日本画の展覧会ではときどきサプライズの絵に出会うことがある。今回は長澤芦雪(1754~1799)の‘白象黒牛図屏風’。同じモチーフで描かれたものを以前プライスコレクションでみたが、芦雪はもう2点描いていた。初出品されたこの絵を所蔵しているのは個人コレクター。もう一点は島根県美にあるそうだ。

プライスコレクションのものとほぼ同じ構図で画面いっぱいに描かれている白象と黒牛は夫々、鴉と仔犬がペアリングされている。象も牛も背中の一部が画面からはみ出すほど圧倒的な大きさ。象と較べれば牛は小さい存在だが、どちらもとても大きな動物というイメージを与えようとする芦雪の目論見は見事に成功している。

芦雪の一点買いだから、あとは円山応挙(1733~1795)の‘雲龍図’や野々村仁清の‘信楽写兎耳付水指’などをざーっとみた。何度も足を運んでいるのですでに鑑賞済みになっているものが多いが、沈南蘋の‘花鳥動物図’が6点みれたのは収穫だった。絵葉書は栗鼠しか用意されていないが、ほかには猫、馬、兎、鹿、鶴が描かれている。

国宝の雪松図や志野茶碗がセットでみれるのも三井記念美ならでは正月興行。いい気分になって館をあとにした。

ビッグニュース! 来年‘ロンドン・ナショナル・ギャラリー展’

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     ロンドンのナショナル・ギャラリー

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     ゴッホの‘ひまわり’(1888年)

新春早々、ビッグな展覧会のニュースが飛び込んできた。来年、世界初となる‘ロンドン・ナショナル・ギャラリー展’が2つの美術館で開催される。
★3/3~6/14 西洋美
★7/7~10/8 国立国際美

ルーヴルでもプラドでも日本で何度も名品展が開かれているのに、ナショナル・ギャラリーだけは残念なことに一度もそのすばらしい絵画コレクションが公開されたことがない。これは日本に限ってということではなく、どこの国に対しても所蔵作品を貸し出さなかった。

その方針が変わったのは明らかだが、来年美術館の改築がありそれを機に新しい美術館運営に踏み出すことになったのだろうか。そして、はじめてのナショナル・ギャラリー展が日本で行われるというのだから嬉しい話。出品作は古典絵画を中心に60点くらいというが、特別枠扱いでゴッホの‘ひまわり’が含まれている。ほかの作品についても興味津々。目玉の作品は一体どの絵?

あのナショナル・ギャラリーの名画が日本にやって来る?にわかに信じられないが、本当なのである。ゴッホの‘ひまわり’は損保ジャパンにも飾ってあるが、これはご承知のようにナショナル・ギャラリーにある原画(1888年9月)をもとに1889年1月頃描かれたレプリカ。ひょっとして展覧会には2点が並ぶ?!折角の機会なのだからそのくらいの演出はあったほうがいい。

どの古典絵画がやって来るのか、大イベントに相応しいのはやはりダ・ヴィンチの‘岩窟の聖母’!期待したい。

美術館に乾杯! ボルゲーゼ美 その一

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      ボルゲーゼ美

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     カラヴァッジョの‘病めるバッカス’(1594年)

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     カラヴァッジョの‘パラフレニエールの聖母’(1606年)

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     カラヴァッジョの‘ゴリアテの首をもつダヴィデ’(1610年)

前回ローマへ行ったのは2010年5月。この年カラヴァッジョ(1571~1610)の大回顧展が開催されたので喜び勇んででかけた。生涯の思い出となった展覧会からもう9年の時が流れた。また、ビバ!イタリアモードに回帰したいところだが、もうしばらくはほかの国の旅が続く。

2006年、ローマでカラヴァッジョの絵とベルニーニの彫刻を集中的にみるために美術館と聖堂を精力的にまわった。この両方の願いと叶えてくれるのが広いボルゲーゼ公園の一角にあるボルゲーゼ美。ここはその頃から予約制を採用しており事前に手続きをしておいた。

世界にはこういう邸宅美術館が数多くあるが、このボルゲーゼ美には超一級の古典絵画や彫刻などがずらっと揃っている。だから、この旅行から帰ったときは西洋美術好きと会うたびにボルゲーゼのスゴさを熱く語っていた。

イタリア人が大好きなカラヴァッジョはヨーロッパでは大変な人気があるが、ここには全部で6点ある。これほど多くカラヴァッジョをもっている美術館はほかにない。2001年日本ではじめてのカラヴァッジョ展が開かれたときは‘果物籠を持つ少年’と‘執筆する聖ヒエロニムス’は出品された。2016年にあった2度目の回顧展(西洋美)にも‘果物籠’はまたやって来た。

そして、今年8月から北海道、名古屋、大阪でまたカラヴァッジョ展が行われる。‘病めるバッカス’は北海道で、‘ゴリアテの首を持つダヴィデ’は名古屋で展示されることが決まっている。これでボルゲーゼのカラヴァッジョが日本で公開されるのは4点になる。

残りの2点は‘パラフレニエールの聖母(蛇を聖母)’と‘洗礼者ヨハネ’、聖母子が蛇を踏みつけている‘蛇の聖母’はお気に入りの一枚だが、なかなか貸し出してくれない。でも、じっと待っていると再会できるかもしれない。

美術館に乾杯! ボルゲーゼ美 その二

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     ティツィアーノの‘聖愛と俗愛’(1514年)

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     ラファエロの‘バリオーニの祭壇画’(1507年)

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     ラファエロの‘一角獣の貴婦人’(1506年)

2,3年前、ヴェネツィア派に焦点をあてた展覧会が度重なりティツィアーノ(1490~1576)のいい絵がいくつもやって来た。例えば、ナポリのカポディモンテ美が所蔵する‘ダナエ’やヴェネツィアの聖堂にある大作‘受胎告知’など。

イタリアルネサンスの絵画はフィレンツェやローマへ足を運べばダ・ビンチ、ボッティチェリ、ラファエロが存分に楽しめるが、ヴェネツィアへ行くとアカデミア美や聖堂には色彩豊かなベリーニ、カルパッチョ、ジョルジョーネ、ティツイアーノ、テントレット、ヴェロネーゼたちの名画がどどっと飾ってある。

ティツィアーノについてはローマでもとびっきりの傑作がみられる。ボルゲーゼにある‘聖愛と俗愛’、これはティツィアーノが25歳のとき描いた作品で1899年銀行家のロスチャイルドはこの絵一点にボルゲーゼの美術品と壮館を含めた当時の全評価額を上回る金額をつけている。まさにこの美術館のお宝中のお宝!

心を奪われるのは可愛いキューピッドを真ん中にはさんで並んでいる二人の女性。腰に布をまとった裸婦のヴィーナスと華やかな白の衣装を着た婦人。顔立ちはぱっとみると双子のように似ている。ボルゲーゼでこの絵にめぐりあえたのは幸運というほかない。

ここにはラファエロ(1483~1520)も4点ある。目を惹くのは正方形の大きな画面に描かれた‘バリオーニの祭壇画(キリストの遺体の運搬)’。死せるキリストをこういう風に運んでいる絵は珍しい。一角獣をすぐ思い浮かべるのはボルゲーゼとモロー美にあるもの。モローが描いた一角獣は大きくて美しい姿をしているのに対し、貴婦人の手に抱えられている一角獣は小さいので存在感が薄い。

ラファエロは愛するフォルナリーナの肖像を数点描いておりフィレンツェのピッティ宮殿とローマのバルベリーニ美にある絵が有名だが、ボルゲーゼにも一枚ある。情報がまったくなかったのでびっくりした。

美術館に乾杯! ボルゲーゼ美 その三

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  クラーナハの‘ヴィーナスと蜂の巣をもつキューピッド’(1531年)

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     ドメニキーノの‘ディアナの狩猟’(1617年)

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     ルーベンスの‘キリストの埋葬’(1601~02の年)

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     ベルニーニの‘成人した自画像’(1630~35年)

3年前、西洋美ではじめとなるクラナーハ展が開催された。予想を上回る大規模な回顧展だったが、クラーナハの代名詞になっている薄いヴェールで裸体を覆うヴィーナスのなかに期待していたボルゲーゼ蔵のものがなかった。

この異様に細長く描かれたヴィーナスをウィーンやブリュッセルなどいろいろな美術館でみてきた。最も惹かれているのがボルゲーゼにある蜂の巣をもっているキューピッドと一緒に描かれたもの。キューピッドが蜂に刺されるのは快楽には苦痛がともなうという教訓。

人間は瞬間的にちくっとするくらいの痛さはすぐ忘れてしまうので欲望を達成する嬉しさをどんどん膨らましていく。こういう後になってじわじわきいてくる痛みというのはとても厄介。自戒しなければいけない。

カラッチ一族がつくったボローニャ派の流れをくむドメニキーノ(1581~1641)に開眼するきっかけになったのは‘ディアナの狩猟’、狩猟祭りの真っ只中で視線が集中するのが水のなかに体を沈めてこちらをじっと見つめている若い女性。美術鑑賞眼のあったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿はこの絵がすっかり気に入り、ドメニキーノから強引にとりあげてしまったという。教皇パウルス5世の甥っ子だった枢機卿はあくどいことを平気でやる。

今月の20日まで西洋美で行われているルーベンス展にボルゲーゼの‘キリストの埋葬’が出品されている。これはルーベンスが最初のローマ滞在の際に描いたもの。雲間から差す光がとても印象的。

西洋彫刻でミケランジェロとともに心を200%奪われているベルニーニ(1598~1680)、ここには神業としか思えない傑作彫刻がずらっと展示してあるが、画家ベルニーニの作品もお目にかかれる。自画像が2点あり、画像は成人したベルニーニ。

美術館に乾杯! ボルゲーゼ美 その四

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     ベルニーニの‘プロセルピナの略奪’(1621~22年)

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      ‘プロセルピナの略奪’のクローズアップ

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     ベルニーニの‘アポロンとダフネ’(1622~25年)

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     カノーヴァの‘パオリーナ・ボルゲーゼ’(1805~08年)

事前に予約をとってボルゲーゼ美へ出かける人のなかにはベルニーニ(1598~1680)の大理石彫刻をみるためという美術愛好家が多くいるかもしれない。ここでは生涯の喜びともいえるすばらしい傑作が2点みられる。ベルニーニが23歳から25歳のときにつくりあげた‘プロセルピナの略奪’と‘アポロンとダフネ’。

‘プロセルピナの略奪’をみたときの衝撃度はマグニチュード7の地震にも相当するほどの大きさだった。とくに目が点になったのが冥界の王プルートの指がプロセルピナの肌に食い込む部分の弾力感。まるで軟式テニスのボールをぎゅっと握ったよう。硬い大理石を使って白い肌をこれほど質感豊かに表現できるとは。まさに神業!

もうひとつびっくりすることがある。それは恐怖におびえ抵抗するプロセルピナの頬に流れる涙。ええー、プロセルピナ、泣いてるよ!こんなリアルな人物彫刻はみたことがない。この興奮は当分おさまらなかった。

別の部屋に飾ってある‘アポロンとダフネ’も息を呑むほどの超傑作!キューピッドがいたずらして放った矢を受けて恋に火がついたアポロン。もう貞淑なニンフ、ダフネに一直線。でも、ダフネはそれが迷惑でたまらない。だから、二人の表情が対照的。

穏やかで一途な愛にみちたアポロンに対し、逃げようと恐怖におびえるダフネ。追いつかれた瞬間ダフネは変身の術を使って月桂樹に徐々に姿を変えていく。よくみると手や髪の毛が月桂樹の葉になっている。お馴染みのギリシャ神話がベルニーニの卓越した技量によって立体的に視覚化される。彫刻の力は絵画よりダイナミックで躍動感にあふれている。200%KOされた。

アントニオ・カノーヴァ(1757~1822)の‘パオリーナ・ボルゲーゼ’も長くみていた。1803年ボルゲーゼ家の当主と結婚したナポレオンの妹パオリーナが‘パリスの審判’に勝ったヴィーナスのモデルをつとめている。この作品によって新古典主義の彫刻家、カノーヴァに開眼した。


美術館に乾杯! バルベリーニ宮国立古典美 その一

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     バルベリーニ宮国立古典美

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  カラヴァッジョの‘ホロフェルネスの首を斬るユディト’(1599年)

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     カラヴァッジョの‘ナルキッソス’(1599年)

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  ジェンティレスキの‘悔悛のマグダラのマリア’(1645~50年)

ローマにある美術館でカラヴァッジョ(1571~1610)の作品を所蔵しているのは6館。テルミニ駅からそう遠くないところに位置するバルベリーニ宮国立古典美もそのひとつ。。

カラヴァッジョに開眼したのは2001年の暮れに岡崎市美まで足をのばし日本で最初に開かれた回顧展をみたとき。それまで美術本でみて気になる存在だった画家の絵と直にむきあうのだから大変緊張した。出品された6点のなかで息を呑んでみたのがバルベリーニ宮殿からやって来た‘ナルキッソス’。

美少年ナルキッソスがローマのモデル派遣会社をのぞいてみるとすぐ見つかりそうな少年として描かれているのがすごく現代風。ギリシャ神話の世界がわれわれが日常的に楽しむ映画のワンカットを見るように近くなると絵との距離がぐっと縮まる。

バルベリーニ宮は日本の美術館との相性がとてもよく今年は‘ホロフェルネスの首を斬るユディト’が大阪のあべのハルカス美に巡回する‘カラヴァッジョ展’(12/26~2/16)に出品される。この絵は2006年歴史の重みを感じさせる宮殿に前のめり状態で入館したのにどこかへ貸し出し中で展示されてなかった。ガックリ!

ようやくお目にかかれたのはその4年後の2010年にこの美術館の近くにあるスクデリア・デル・クイリナーレ美で開かれた大回顧展。長年の思いの丈がやっと叶えられ大仕事をし終えたような気分だった。首を斬られ鮮血がふきでるホロフェルネスの絶叫する姿と勇気を振り絞って事を起こしたユディトの傍らでその光景を冷静にみとどけている老婆の顔が今も脳裏に焼きついている。

ここはカラヴァッジョの影響をうけた画家たちの作品も数多く収集しているが、アルテミジア・ジェンティレスキ(1593~1654)の‘悔悛のマグダラのマリア’は運よく2016年西洋美であった回顧展で遭遇した。これをみてカラヴァッジェスキのなかではこの女流画家がもっともカラヴァッジョの画風に近いことを再確認した。

美術館に乾杯! バルベリーニ宮国立古典美 その二

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     ラファエロの‘ラ・フォルナリーナ’(1518~19年)

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     レーニの‘ベアトリーチェ・チェンチの肖像’(1662年)

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     ドメニキーノの‘聖母子像’(17世紀)

昨年北欧をまわったのでヨーロッパの国はおおかた訪問したことになる。といっても観光が目的の短期間の滞在だから、出かけた国の住民が顔にどんな特徴があるかと聞かれてもまず答えられない。わかるのは北欧は色が白い人が多いとか、フランス人やイタリア人は背があまり高くないとか、そのくらいのこと。

そして、女性と男性で特徴の違いがイメージできているかというとこれまた難しい。ただ、男性よりは女性のほうが少し特徴をつかみやすいかもしれない。ドイツの女性は金髪でスペインの女性は黒髪、われわれならこの程度の認識だが、ヨーロッパの人なら画家の描いた女性の肖像画をみるとどこの国の人かだいたいわかるのだろう。

ラファエロ(1483~1520)の‘ラ・フォルナリーナ’は目鼻立ちからいかにもおしゃべりなイタリアの女性という感じがする。ところが、同じ恋人のフォルナリーナをモデルにした‘ヴェール被った婦人’(フィレンツェ ピッティ宮殿)のほうはイタリア人かどうかはわからない。ラファエロはどうして別人のように仕上げたのだろうか。

レーニ(1575~1642)の‘ベアトリーチェ・チェンチの肖像’は本物をみる前から関心が高かった。父親殺しの罪で多くの人が見守るなか斬首されたベアトリーチェの物語が頭に入っていたから。この清楚なイメージの強い女性が娘にいいよってくる狂った父親をガツンと殺したとはとても思えない。フェルメールはこの絵に刺激されて‘真珠の耳飾りの少女’を描いたのではないかと確信している。

シピオーネ枢機卿に絵を強奪されたドメニキーノ(1581~1641)はレーニとともにカラッチの跡を継ぐ有能な後継者となり、多くの人に愛される画家に成長した。‘聖母子像’はラファエロの香りもする見事な大作。

美術館に乾杯! バルベリーニ宮国立古典美 その三

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     コルトーナの‘神の摂理の勝利’(1639年)

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      2階中央大広間天井に描かれた大フレスコ画

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    コジモの‘マグダラのマリアに扮した婦人の肖像’(1510年)

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     ホルバインの‘イギリス国王ヘンリー8世’(16世紀)

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     ブロンズイーノの‘コロンナの肖像’(16世紀)

ローマにいると古典絵画は美術館のなかだけでなく聖堂や大邸宅で遭遇すことが多い。その場合、絵のサイズは建物の天井や壁がキャンバスとなるので巨大なものになる。バルベリーニ宮殿にも驚きの天井画がある。

描かれているのは縦20m、横30m、高さ20mの大きな広間。絵のタイトルは‘神の摂理の勝利’。これはバルベリーニ家出身のウルバヌス8世の偉業を讃え神の摂理の勝利を寓意的に表現したもの。中央の月桂樹のまわりにはバルベリーニ家の家紋である3匹の黄金の蜂が描かれている。

そして、この天井装飾を任されたのがローマバロックの万能人、建築や歴史画、室内装飾を手がけたコルトーナ(1596~1669)。日本では馴染みのないこんな大芸術家の仕事に接することができるのがローマという街の魅力。システーナ礼拝堂に次ぐ大きさを誇る大広間に描かれた壮大なバロック絵画をみれたのはエポック的な鑑賞体験である。

ここにはその精緻を極める描写に目が点になる肖像画が3点ある。コジモ(1461~1521)の‘マグダラのマリアに扮する婦人の肖像’、ホルバイン(1497~1543)の‘イギリス国王ヘンリー8世)’、そしてブロンズィーノ(1503~1572)の‘コロンナの肖像’。

コジモというと怪物がでてくる絵をすぐ連想するが、現実の女性をモデルにしてこんなリアルな肖像画を描いていたとは!画家のイメージが変わる一枚だった。

お気づきのように拙ブログでとりあげる肖像画の大半は女性。でも、ホルバインやブロンズィーノは外すわけにはいかない。国王の衣装や軍人の武具の精緻を極める質感表現にはほとほと感心させられる。

美術館に乾杯! ドーリア・パンフィーリ美 その一

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 ヴェネツィア広場をはさんで建つドーリア・パンフィーリ美とカピトリーニ美

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     カラヴァッジョの‘エジプト逃避途上の休息’(1595年)

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     カラヴァッジョの‘悔悛のマグダラのマリア’(1595年)

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    ティツイアーノの‘洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ’(1515年)

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     ラファエロの‘二人の男の肖像’(1516年)

ローマは坂が多くあるので歩いて移動するのはちょっときついが、ガイドブックをみるとめざす美術館まで動いた距離はそれほど長くなかったというのが実感。街全体の大きさや道路や建物の位置関係をつかむには自分の足で歩くに限る。

邸宅美術館であるドーリア・パンフィーリ美はヴェネツィア広場の前方にあった。ここでのお目当てはカラヴァッジョ(1571~1610)の初期の絵画2点。‘エジプト逃避途上の休息’と‘悔悛のマグダラのマリア’。目をとじうつむいている聖母とマグダラのマリアのモデルはじつは同じ女性で娼婦。

絵は宗教画なのだが、タイトルを消すと街の女性を描いた風俗画となんら変わらない。このようにどこにでもいるような人物を登場させ宗教画らしくない場面にするのがカラヴァッジョ絵画の特徴であり革新的なところ。これに魅了され続けている。

‘エジプト逃避途上の休息’でしっかり目に焼きつけたのは聖母子の背景に描かれた風景。ダ・ヴィンチやラファエロのように人物の後ろに風景を描く込むのはほかの絵にはみられない。カラヴァッジョはダ・ヴィンチを意識したのだろうか。

目的のカラヴァッジョと対面できたので上機嫌だったが、満足度をさらに上げてくれる作品がひとつふたつと現れるのでこの美術館のスゴさがわかってきた。ティツィアーノ(1490~1576)の‘洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ’は思わず足がとまり瞬間的に体がフリーズ。

‘お父ちゃんにおねだりして私の愛するヨハネの首をいただいちゃったわ、これから部屋に戻るがあなたは中に入っちゃダメよ’、とかなんとかサロメは従者に言っているのだろうか。

ラファエロ(1483~1510)が晩年に描いた‘二人の男の肖像’は大きな収穫だった。この絵でラファエロはルネサンスから離れバロックの世界に踏み込んでいる。男性の内面描写がかなり鋭く2人と今対面しているような感じ。

美術館に乾杯! ドーリア・パンフィーリ美 その二

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  ベラスケスの‘教皇インノケンティウス10世’(1649~50年)

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     ブリューゲルの‘ナポリの眺望’(1563年)

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     カラッチの‘エジプトへの逃避’(1605年)

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     ロランの‘風車と踊る人々のいる風景’(1650年)

海外の美術館が所蔵する作品の情報をえる手立てとしてまずあげられるのは美術本、それからTVの美術番組。TVのいいところは描かれた絵画の実際の色の具合や大きさがわかること。本に載っている図版とくらべ美術館でみたときの色の違いに戸惑うのはもう慣れっこになっている。

色とかキャンバスの大きさなど図版のイメージに対して本物の印象が極めてよかったときは後々まで強く心に残る。ドーリア・パンフィーリで遭遇したベラスケス(1599~1660)の‘教皇インノケンティウス10世’はそんな一枚。

美術館にとってこの絵はとびっきりのお宝なので専用につくられた部屋でベルニーニの彫刻と一緒に飾られている。ベラスケスが2度目のローマ旅行のときに描いたこの肖像画をみて教皇は‘似すぎだ!’と側近に語ったという。教皇はまさにこんな気難しい表情をしていたのだろう。

これをみてベラスケスは本当にスゴイ画家だなと思った。お国のスペインにいるときは宮廷画家として国王たちを多少脚色して描かなくてはならないが、ローマでは自分の感性で自由に筆を動かせる。絵描きとしての天分の才能がこの肖像画にいかんなく発揮されている。

ブリューゲル(1525~1569)の‘ナポロの眺望’がひょいと目の前に現れたのにはびっくりした。ボスとブリューゲルのコンプリートをめざしているから大きな収穫だった。ブリューゲルがアントワープからイタリアへ旅立ちナポリを訪問したのは1552年から53年のころ。この絵はそれから10年後に描かれた。たくさんの船の帆が風で大きく膨らんでいるのが目に焼きついている。

また、カラッチ(1560~1609)の‘エジプトへの逃避’とロラン(1600~1682)の‘風車と踊る人々のいる風景’にも大変魅了された。プッサン(1594~1665)と仲のよかったロランもカラッチの俯瞰の視点から描いた宗教風景画に影響を受けている。



美術館に乾杯! カピトリーノ美 その一

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     カンピドーリオ広場にあるカピトリーノ美(左側)

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     カラヴァッジョの‘女占い師’(1598~99年)

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     カラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネ’(1601年)

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     ルーベンスの‘ロムルスとレムス’(1615~16年)

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     ヴァン・ダイクの‘芸術家兄弟の肖像’(1621年)

ヴェネツィア広場の緩い階段を上った先がカンピドーリオ広場、正面の建物は市庁舎で左右にあるのがカピトリーノ美。お楽しみは美術本に載っている古代彫刻の数々とここでもカラヴァッジョ(1571~1610)。まずは絵画から。

カピトリーノ美にあるカラヴァッジョは2016年西洋美で開催された回顧展に登場した‘女占い師’と少年の肌のリアル感に惹きこまれる‘洗礼者ヨハネ’。カラヴァッジョには女占い師に手相をみてもらい若者を描いたものが2点ある。ルーブル美にあるのは若者の顔が真ん丸なのに対して、この美術館のものはモデルが変わり表情は凛々しい。

ベルリン絵画館の‘勝ち誇るアモール’同様、‘洗礼者ヨハネ’の少年も嬉しそうな顔をしている。まだルネサンスの余韻が強く残っているこの時期にこれほど魅力的な感情表現をみせる風俗画を描いてみせたというのは驚き。これから20~30年後にオランダの画家、ハルス(1580~1666)の笑う少年がでてくる。

カンピドーリアの丘に建つ美術館に相応しい絵がルーベンス(1577~1640)の‘ロムルスとレムス’、縦横2mの大きな正方形の画面の中央に狼に育てられるロムルスとレムスが描かれている。ローマ建国の祖となる伝説の双子である。別の部屋には有名なブロンズ像‘カピトリーノの牝狼’も飾られている。

肖像画の名手ヴァン・ダイク(1599~1641)の‘芸術家兄弟の肖像’はジェノヴァに滞在しているときに描かれたもの。二人の立ち位置がなんとも決まっている。

美術館に乾杯! カピトリーノ美 その二

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     コルトーナの‘サビニの女たちの略奪’(1630~31年)

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     コルトーナの‘バッカスの勝利’(1624年)

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     グエルチーノの‘聖ぺテロネラの埋葬’(1623年)

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     ベルニーニの‘メデューサの胸像’(1630年代)

天才彫刻家ベルニーニ(1598~1680)とともにローマ・バロックを推進したのがコルトーナ(1596~1669)。バルベリーニ宮殿へ出かけると大広間の天井に描かれた装飾フレスコ画に度肝をぬかれるが、カピトリーノ美でも迫力満点のバロック絵画が3点どーんと飾ってありバロック特有の緊張感につつまれる。

いずれも大きな絵だがもっともデカいのが息を呑んでみてしまう‘サビニの女たちの略奪’で縦2.75m、横4.2mもある。描かれているのは創建期の古代ローマで女性不足を解消するためにローマの若者がサビニの女たちを略奪したという話。

このテーマで描かれたものを最初にみたのはルーヴルにあるプッサンとダヴィッドの歴史画。この2点に対しコルトーナは連れ去られる女たちの恐怖にみちた表情をズームアップでとらえている。とくに深い悲劇性を感じるのが右の荒くれ男にがしっと体をつかまれた女、両手を上にあげたポーズが痛々しい。

あとの2枚はグロテスクな怪物があちこちで破天荒に酔っぱらっている‘バッカスの勝利’とトロイ戦争によりトロイが陥落したときアキレウスの霊を慰めるため人身御供にされたトロイア王の娘ポリュクセネを描いた‘ポリュクセネの犠牲’。

名前は知っているがそれほど感銘する作品に出くわさなかった画家がある一枚の絵によってその評価が一気に上がることがある。コルトーナもそうだが、2015年西洋美で回顧展が開かれたグエルチーノ(1591~1666)の絵にもびっくり仰天した。

その絵がカピトリーノ美に飾ってある‘聖ペテロネラの埋葬’、鮮やかな青が目にしみ上の昇天する場面と下の埋葬の場面がS字のようにつながっている構図がすばらしい。みた瞬間、ええー、これグエルチーノが描いたの!忘れならない絵になった。グエルチーノの最高傑作といわれるのがよくわかる。

ベルニーニの‘メデューサの胸像’は複雑な思いでみていた。ベルリーニの彫刻に1点でも多く遭遇できることを願っているが、このメデューサの頭は苦手な蛇だらけ。あまり長くはみれなかった。


美術館に乾杯! カピトリーノ美 その三

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     ‘カピトリーノの牝狼’(紀元前500~480年)

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     ‘刺抜き’(ローマ時代のコピー、オリジナルは紀元前1世紀)

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     ‘マルクス・アウレリウス像’(176年)

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     ‘コンスタンティヌス大帝肖像’(315年)

古代彫刻に魅せられている人ならギリシャのアテネとイタリアのローマはなんとしても出かけたい街かもしれない。ローマでのお楽しみ美術館は4つある。ローマ国立博、ヴァチカン博、カピトリーノ美、そしてヴィッラ・ジュリア国立博。

カピトリーノ広場の正面にある市庁舎の向かって左側がカピトリーノ美、右側がコンセルヴァトーリ美。二つの美術館を総称して‘カピトリーノ’と呼んでいる。絵画と彫刻を展示しているのがコンセルヴァトーリ。今日とりあげる彫刻はこのコンセルヴァトーリでみたもの。

ベルニーニもとりあげた狼に育てられた双子、ロムルスとレムスが彫刻になっているのがブロンズ像‘カピトリーノの牝狼’。歴史の教科書にでてくる作品を目にするとちょっと興奮する。感慨深くながめていた。

おもわず足がとまったのが足の裏に刺さった刺を抜いている少年の像。これはローマ時代のコピーで、ギリシャのオリジナルは紀元前1世紀につくられた。円盤投げのアスリートの像も目を楽しませてくれるが、小さい頃海水浴のシーズンにはよくみかけた光景がこうして彫刻になるとついニヤッとしてしまう。

カピトリーノ広場で誰もが写真におさめたくなるのが‘マルクス・アウレリウス像’、じつにカッコいい騎馬像。でもこれはコピーで本物は美術館の中の広い展示室に‘棍棒をもったヘラクレスの黄金の像’と一緒に飾られている。騎馬像は偉大さや強さを象徴するものなのでこれを手本にして国王や軍人の像が数多くつくられた。

中庭の一角にびっくりするほど大きな大理石の像が現れた。高さ2.6mもある‘コンスタンティヌス大帝像’。ぎょろっとした大きな目と鼻が印象的な大帝の顔。これほど馬鹿デカい彫像はみたことがない。

美術館に乾杯! カピトリーノ美 その四

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 ‘カピトリーノのヴィーナス’(ローマ時代の模刻、オリジナルは前3~2世紀)

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  ‘負傷したアマゾン’(ローマ時代の模刻、オリジナルは前430年頃)

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     ‘レダと白鳥’(ローマ時代の模刻、オリジナルは前360年頃)

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  ‘瀕死のガラティア人’(ローマ時代の模刻、オリジナルは前220年頃)

古代彫刻がずらっと飾られているカピトリーノ美へ行くにはまずコンセルヴァトーリ美へ入館しその後両館をつなぐ地下の通路を進むと展示室にたどり着く。

彫刻の数が多いのでガイドブックなどで紹介されている名作にあたりをつけてまわらないとつい見逃してしまうおそれがある。もっとも有名なのは‘カピトリーノのヴィーナス’、これはローマ時代の模刻だが、ギリシャの原作は前4世紀中頃の大彫刻家プラクシテレスに追従して前3~2世紀に制作されたもの。このポーズが美術本で刷り込まれているので立ち尽くしてみていた。

‘負傷したアマゾン’はギリシャ神話にでてくるアマゾン族の強い女の戦士がモチーフになっている。この作品は小アジアの西岸のエフェソスのアルテミス神域に奉納されたアマゾン像をローマ時代にコピーしたもの。エフェソスは訪問したことがあるのでイメージが膨らむ。

左手にもった衣装を広げるレダの姿が印象深い‘レダと白鳥’は動きの感じられる作品。こういう布の皺を表現する彫刻は並みの技術しかもちえない職人ではとうていつくれない。大理石のかたまりを長い時間をかけて立体像の仕上げる彫刻芸術の奥深さを実感する。

‘カピトリーノのヴィーナス’とともに必見リストに二重丸をつけていたのが‘瀕死のガラティア人’。高い写実性に富んだ彫刻に魅了されるのは時空をワープして目の前に苦悩するガラティア人がいるような気分になるから。エポック的な鑑賞体験になった。ミューズに感謝!

祝 玉鷲 初優勝!

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    遠藤を突き落としで破り初優勝した玉鷲

大相撲一月場所は千秋楽、関脇の玉鷲が遠藤を突き落としで破り初優勝した。成績は13勝2敗。拍手々!34歳での優勝は年長初Vとしては史上2番目の記録。

今場所序盤は皆が願っていた横綱稀勢の里の復活がならず、白鵬が独走で優勝するのではというのが大方の予想だった。ところが、その白鵬は膝の怪我で休んでいたあと再出場した御嶽海に11日目連勝をストップされた。これで白鵬の歯車が狂った。

翌日も2敗をキープして好調な相撲をとっていた玉鷲に詰めの甘さで連敗を喫しさらに貴景勝にまで土俵に這わされた。この結果、玉鷲や貴景勝にも優勝の可能性がでてきた。こうなると、相撲は俄然おもしろくなる。

昨日、玉鷲は碧山との対戦でかなり緊張していたようだ。でも相撲はいつも通りのいい動きで2敗をキープした。今日の遠藤との相撲では誕生した男の子が力をくれたのか鋭くぶちかましたあとタイミングのいい突き落としを決め栄冠を手にした。

玉鷲はとても明るいお相撲さん。大関や横綱を破ってインタビュールームに呼ばれるときはいつも嬉しさを押し殺さず笑顔で応対する。この優勝で大関への道が開けた。来場所も応援したい。

美術館に乾杯! ローマ国立博 その一

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   4ヶ所に分散するローマ国立博

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     メインコレクションのマッシモ宮

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     ‘円盤投げ’(2世紀頃の模刻、オリジナルは前450年頃)

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     ‘拳闘士’(前1世紀中頃)

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     ‘ニオベの娘’(前5世紀)

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  ‘ヘルマフロディトス’(50年頃の模刻、オリジナルは前2世紀頃)

ローマの美術館や聖堂を集中的に回ったのは2006年と2010年、はじめはカラヴァッジョとベルニーニを夢中になってみて、2度目のときはギリシャ彫刻(その多くはローマ時代の模刻)を堪能した。そのハイライトがテルミニ駅のすぐ近くにあるローマ国立博。

博物館のなかに入ってわかったのだが、ローマ国立博はメインのマッシモ宮、アルテンプス宮、1月19日に放送された‘ブラタモリ  水の都・ローマ’に登場したディオクレティアヌス浴場跡、クリプタ・バルビの4つからなっている。入場チケットは4館共通で3日間有効。

マッシモ宮にある彫刻で最も関心が高かったのは美術の教科書に載っていた‘円盤投げ’、これはローマ時代の模刻だが、ミュロンによる原作は前450年頃につくられた。2階の展示室で対面したときは大変感激した。あの有名な彫刻を今みているんだ、嬉しい!これだから美術鑑賞はやめられない。

1階にもサプライズのブロンズ像があった。それは‘拳闘士’、ヘレニズム時代につくられたこの大傑作は1885年、ローマの7つの丘で最も高い丘、クイリナーレの丘で発見された。戦いを終えたばかりの拳闘士は傷ついた肉体をいたわるように体を横に向けて座っている。見惚れるほどの肉体美をリアル表現する高い技術に200%KOされた。

ほかにも目を奪われる彫刻が次々と現れる。思わず足がとまったのが‘ニオベの娘’(原作)とヘリメスとヴィーナスから生まれた美少年‘へルマフロディトス’、インプットされているギリシャ神話の記憶がアバウトによみがえってくる。

美術館に乾杯! ローマ国立博 その二

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     ナヴォーナ広場付近にあるアルテンプス宮

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     ‘ルドヴィシの玉座(背面)’(前460年頃)

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     ‘ルドヴィシの玉座(左側面)’(前460年頃)

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     ‘自害するガリア人’(ローマ時代の模刻、原作は前2世紀前半)

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     ‘ルドヴィシの大石棺’(250年頃)

ローマ国立博については事前に入手した情報はマッシモ宮のみ、だから、ここに美術本にでていた‘円盤投げ’や‘拳闘士、‘ルドヴィシの玉座’、そして鑑賞欲をそそる‘自害するガリア人’が全部展示してあると思っていた。

ところがパンフレットガイドをみるとお目当ての‘ルドヴィシの玉座’などは別の場所にあるという。さて、アルテンプス宮にたどり着けるだろうか。とりあえずナヴォーナ広場をめざし、そこで件の宮殿を若い男性に得意のイタリア語で尋ねた(ウソです!)、意外にも話が通じテヴェレ川のほうに向かって進むとすぐわかるとの返事。

5分くらいで着いたアルテンプス宮は典型的な邸宅美術館。共通券をみせて入館した。ここにある質の高い大理石彫刻はローマ法王グレゴリウス15世(在位1621~23年)の甥で枢機卿でもあったルドヴィシ卿(1595~1632)が蒐集したもの。

そのなかで最も有名なのがギリシャ・クラシック彫刻の傑作といわれる‘ルドヴィシの玉座’、背面の浮き彫りにはニンフをしたがえたヴィーナスが、そして左側面にはフルートを吹く乙女が描かれている。柔らかく浮き上がる肌や衣装のしわののびやかな線を息を呑んでみていた。

カピトリーノ美で遭遇した‘瀕死のガリア人’同様、声を失うほど強いインパクトをもっているのが‘自害するガリア人’。前241年、トルコ西岸のペルガモン王国と戦ったガリアは敗北、敵の捕虜になることより死を選んだガリア戦士は先に妻を刺し、短剣を心臓に突き刺した。まるで悲劇で幕を閉じるオペラをみているよう。

‘ルドヴィシの大石棺’も忘れられない彫刻。棺の正面いっぱいに大勢の軍人たちが密集するを戦闘シーンが描かれている。やっつけているのはローマ軍で敗者はゴート族。この石棺の主は中央の上部にいるローマ帝国第30代皇帝デキウスの息子というのが有力視されている。

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