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Channel: いづつやの文化記号
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レッドソックス 5年ぶりの世界一!

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Img_0001   初回カーショーから先制2ランを放ったピアース

ワールドシリーズ第5戦はレッドソックスが5-1でドジャースを下し、5年ぶりの世界一に輝いた。この結果は予想通り、なにしろレッドソックスはレギュラーシーズンを108勝しMLBの最高勝率で優勝したのでそのままPSも勝ち進むと思っていた。

2年連続ワールドシリーズに進出したドジャースは昨日の4戦を落としたのが痛かった。先発ヒルが好投し、プイーグの3ランなどで4点もリードし勝ちゲームなのにリリーフのジャンセンがまたも一発をあび同点とされ9回に勝ち越されてしまった。2勝してタイにもちこめばおもしろい展開になったが、この勝機を逃すようでは勝ち目はない。

レッドソックスを指揮したコーラ監督はプエルトリコ出身でまだ43歳。みるからに頭のよさそうな顔をしており、監督としての能力は相当高い。レッドソックスのファンだから、松坂、岡島が活躍し世界一に貢献したときコーラがショートを守っていたのはよく記憶している。監督一年目ですぐワールドチャンピオンになったのはコーラが‘もっている男’ということだろう。勝つための戦術をよく知っており、選手をうまく起用した結果である。

試合をみていて感心することがいくつもあった。例えば、リードした終盤2アウトとったところで投手コーチがマウンドに行きなにか言っている。だぶん、‘ここは油断するな、あと一人慎重に攻めろ!’と指示しているのだろう。ピンチでなくアウトを2つとっているのにコーチがでてくるというのは見たことがない。

これは監督、コーチが一体となってこのゲームを勝利することに心を砕きあらゆる手立てをうっているから。いい選手を揃えただけでは108試合も勝つことができない。春のキャンプから安定して勝ち星を積みあげるために厳しい練習を重ねチームとしてのコミュニケーションをとってきたのだろう。

投打の戦力をみると、投手ではプライスが頑張った。これまで大舞台には弱いというレッテルを貼られていたが、ようやくアストロズ戦で勝ち投手になり、このシリーズでは2度いいチッピングをした。チャンピオンリングに手に入れ嬉しいだろう。サイヤング賞投手もこれで真に輝ける。

打線はどの選手も良く打ったが、レギュラーシーズンでいい成績を残したマルチネスが中心選手の役割をきっちり果たした。そして、MVPをとったピアースが4,5戦で大活躍した。今日も初回ドジャースの大エースカーショーから初回いきなり2ランを放ちチームを勢いづかせた。

レッドソックスはこれからもっと強くなりそう。来年も楽しみ!


美術館に乾杯! ヴィクトリア&アルバート美 その二

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Img_0001     ボッティチェリの‘ズメラルダ・ブランデイーニの肖像’(15世紀)

Img    ドナテッロの‘キリストの昇天と鍵の授与’(15世紀)

Img_0002   コンスタブルの‘主教の庭からみたソールズベリー大聖堂’(1823年)

Img_0003  コンスタブルの‘舟造り フラットフォードの製粉所付近’(1815年)

ヴィクトリア&アルバート美にはラファエロのほかにルネサンス美術の有名な作品が二つある。ボッテイチェリ(1445~1510)の初期の肖像画‘ズメラルダ・ブランディ―ニの肖像’とドナテッロ(1386~1466)の浮彫り彫刻‘キリスト昇天と鍵の授与’。

ともに作品の前にたどりつくのに時間がかかった。はじめての美術館の場合、館内のレイアウトがよくつかめないのでいくつもの部屋を行ったり来たり。ボッテイチェリの描いた女性はスッキリ顔で15世紀ころに生きたイタリア人という感じがせず、現在の服を着ていたらフィレンツェの街を歩いている女性と変わらない。だから、ボッティチェリの女性にはいつも親しみを覚える。

ドナテッロの彫刻をイタリア以外の国でお目にかかれるのは幸運なこと。ここには3点あり、精神性の高さを感じさせる‘キリストの昇天と鍵の授与’を食い入るようにしてみていた。フィレンツェにあるドナテッロをまだ全部みてないのでまたイタリアに縁があったら追っかけるつもり。

テイト・ブリテンにはターナーがこれでもかというほど展示してあるが、V&Aではコンスタブル(1776~1851)が存分に楽しめる。もっとも惹かれるのが‘主教の庭からみたソールズベリー大聖堂’。主教の依頼で描かれたこの風景画は6点あるが、これは最初に描かれたもの。陽光に白く輝く大聖堂の天にのびる塔が目に焼きついている。手前に並ぶ木と木の間に聖堂を入れる構図はここに立てば誰でも考えそうだが、明るい空や強い生命力を思わせる木々の細かい描写は簡単には真似できない。

‘舟造り、フラットフォードの製粉所付近’は2年後に描かれたテイトにある‘フラットフォードの製粉所’とペアになる作品。コンスタブルは人がいる川の光景を描くのがとても上手く、製作中の舟のまわりをよくみると3人の男性が忙しく働いている。一連の川の絵に200%魅了されている。

美術館に乾杯! ヴィクトリア&アルバート美 その三

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Img_0004     ロセッティの‘白日夢’(1880年)

Img        バーン=ジョーンズの‘愛の車’(未完 1870年)

Img_0001  モリス&バーン=ジョーンズの‘ステンドグラス’(1880~90年)

Img_0002     ブレイクの‘反抗する天使に怒るサタン’(1808年)

ここは世界に冠たる装飾美術の殿堂なので、刀剣や宝飾品、陶器、ロダンの彫刻などもみたが記憶に深く刻まれているのはやはり絵画。コンスタブルのいい風景画とともに心を揺るがすのがラファエロの前派の作品。

そのなかで息を呑んでみたのがロセッティ(1828~1882)の‘白日夢’、モデルはあの‘プロセルピナ’のジェイン。これまでみたロセッテイのなかでこの2点がベストワン。だから、もうロセッティは済みマークをつけてもいいのだが、あと1点どうしても見たいのがある。それはリヴァプールのウォーカー・アート・ギャラリーが所蔵する‘ダンテの夢’、来年の三菱一号館の展覧会にやって来る?と勝手に妄想したくなるがダメだろうな。

バーン=ジョーンズの‘愛の車’は運がなく姿を現してくれなかった。未完成の絵だが、裸体の男性が乗る大きな車輪をつけた移動台を大勢の男女が引っぱっている。次はなんとしてもリカバリーしたい。また、ここにはモリス(1834~1896)と一緒に制作したステンドグラスもある。

テイトを訪問するとターナー同様数多くみることができるブレイク(1757~1827)、V&Aの自慢は‘反抗する天使に怒るサタン’。ブレイクの回顧展に遭遇することを夢見ているが今のところその気配はまったくない。そのため、テイト製作のブレイク本を手にしてその大胆な身振り手振りで感情を強く表出する人物を凝視している。

その大半はテイトのコレクションで占められているが、アメリカのボストン美にも2点鑑賞欲をそそるのがある。開拓の余地がまだまだある画家なので、作品をもっている美術館はひとつでも多く訪問したい。

美術館に乾杯! ケンウッド・ハウス

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Img     レンブラントの‘自画像’(1663~65年)

Img_0001     フェルメールの‘ギターを弾く女’(1673~74年)

Img_0002  ハルスの‘ピーテル・ファン・デン・ブロッケの肖像’(1633年)

Img_0003     フラゴナールの‘サクランボを摘む人々のいる風景’(18世紀)

2010年、ロンドンの中心部から少し離れ北の方向にあるハムステッド・ヒースへ地下鉄ノーザンラインに乗って出かけた。めざすはこの美しい公園の一角に建つ白い館、ケンウッド・ハウス。最寄りのハムステッド駅からタクシーで10分くらいで到着する。ここにお目当ての絵が2点ある。

若い頃ロンドンに3ヶ月語学研修で滞在した。住んでいたのはノーザンラインの終点エッジウェア―駅の近く、そのためハムステッド駅は英語学校から帰ってくるときよく途中下車した。久しぶりのノーザンラインだったのですごく懐かしかった。

ケンウッド・ハウスは典型的な邸宅美術館。こういう館で絵画をみるのは特別の体験。美術品鑑賞の趣味がなければ一生縁がない場所に来ている、と思うとちょっと心が豊かになる。さて、名画との対面、みたくてしょうがなかったレンブラント(1606~1669)の‘自画像’とフェルメール(1632~1675)の‘ギターを弾く女’はもとダイニングルームだったところに飾られていた。

レンブランが描いた自画像ではここにあるのが一番いいかもしれない。不機嫌そうな表情は本人そのままという感じで近寄り難いほどの存在感がある。これを見れたのは生涯の思い出。そのあと、この自画像の話を絵画好きの人と会うたびにした。

カラヴァッジョとちがってフェルメールは200%のめりこんでいるわけではなく‘真珠の耳飾りの少女’や今上野にやって来ている‘真珠の首飾り’、‘水差しを持つ女’など‘好きなタイプのフェルメール’だけに魅せられ続けている。‘ギターを弾く女’は好きなタイプの一枚。卵形の顔をした明るい女性がつまびくギターの音色を気持ちよく聴いている。

笑顔の人物を描かせたら右にでる者がいないハルス(1581~1665)、自信にあふれ生き生きとした姿が印象的な‘ピーテル・ファン・デン・ブロッケの肖像’も心に残る絵。この人物はオランダの植民地で大儲けした東インド会社の幹部。

このほかで目にとまったのはヴァン・ダイクと4点あったフラゴナール(1732~1806)の‘サクランボを摘む人々のいる風景’。作品の数は多くはないが大きな満足感が得られる美術館だった。

美術館に乾杯! ウォレス・コレクション その一

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Img    ボンドストリートから徒歩10分で着くウォレス・コレクション

Img_0001     大美術館の雰囲気をもつグレイトギャラリー

Img_0002     フラゴナールの‘ぶらんこ’(1767年)

Img_0004     フラゴナールの‘恋文を読む娘’(1776~78年)

Img_0003     ブーシェの‘ポンパドゥール夫人’(1759年)

Img_0005     ブーシェの‘日の出’(1753年)

どの美術館にも自慢の美術品がある。ロンドンのウォレス・コレクションにはロココの画家、フラゴナール(1732~1806)が描いた有名な絵がある。その絵をみたい一心でこの邸宅美術館を訪問した。場所はボンドストリートから10分くらい歩いたところ、まわりには格式の高そうな建物が並んでいる。

ここにある美術コレクションは18世紀から19世紀にかけて、ハートフォード公爵家が収集したもの。絵画、陶器、工芸などが25の部屋にどっと飾られている。見どころはなんといってもロココ絵画。そのなかでとくに目を惹くのがフラゴナールの‘ぶらんこ’。

ロココの魅力は画面全体に男女の恋心がほんわか漂っているところ。この絵で主役を演じるのは若い男爵とその恋人だが、その仕草はまるで好きあう高校生とか大学生が互いにもじもじしながらじゃれ合っているよう。だから、異性を好きになったときの感情がちらっと思いだされる。この絵で視線がむかうのはぶらんこに乗った女性が履物を空中に飛ばすところ。このアイデアが大ヒットとなった。

‘恋文を読む娘’は図版では想像できないがボヤッとしていると見落としてしまうほど小さな絵。今は恋文なんて死語かもしれないが、好きな人から返事の手紙がきたときは心臓がどドキドキした。こういう光景をみると雑々した心が洗われる。

ブーシェ(1703~1770)の‘ポンパドゥール夫人’は真に眩しすぎる肖像画、ブーシェの描く女性はエレガントでとても可愛い感じ。日本の女優で言うと沢口靖子がピッタリする。本物のポンパドゥール夫人はどれほどの美貌の持ち主だったのだろう。

2階にあがる階段の壁にかかっているのがブーシェの大作‘日の出’と‘日没’、ブーシェの作品で最も大きな絵が2点あるのだからスゴイ。ティツィアーノやルーベンスが描いた神話画に匹敵する大傑作、息を呑んでみていた。


 


美術館に乾杯! テイト・ブリテン その十一

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Img_0003  ホイッスラーの‘シシリー・アレキサンダー嬢’(1872~74年)

Img   サージェントの‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’(1889年)

Img_0001    ティソの‘船上の舞踏会’(1874年)

Img_0002          ムーアの‘花’(1881年)

大人の女性を描いた肖像画には心を奪われる作品は数多くあってベスト10を選べといわれるといろいろ悩む。これに対して子どもがモデルだとベスト5くらいはすぐでてくる。ホイッスラー(1834~1903)が描いた‘シシリー・アレキサンダー嬢’はランクインしている一枚。

はじめてみたのは日本であったテイトギャラリー展(1998年 東京都美)、ホイッスラーはテムズ川の絵と肖像画でその名を知られた画家だが、肖像画にはぐっとくるものが多い。そのなかで最も惹かれているのがこの8歳の女の子。

ホイッスラーはこの子を描くのに70回もポーズをとらせたという。ふつうだったらもう嫌だといってダダをこねてもおかしくないが、シシリーちゃんは銀行家の父親のしつけがよかったのかなんとか頑張った。でも、限界にきていたことはそのふくれ面をみるとよくわかる。

サージェント(1856~1925)の‘マクベス夫人に扮するエレン・テリー’は等身大の肖像画なので目の前に本人がいるような錯覚を覚える。もう心を200%吸いこまれる見事な肖像画。女の役者を描いた絵ではこれとミュシャのサラ・ベルナールの上演ポスターが双璧。サージェントの回顧展に遭遇することを夢見ているがそのときは再会できると勝手に妄想している。

ティソ(1836~1902)は本籍はフランスで現住所はイギリス。これまでお目にかかったのは片手にすぎないが、作品はどれも上流階級の女性たちが社交場に集う光景が華やかに描かれている。‘船上の舞踏会’はメディアのカメラクルーが撮った映像が流れている感じ。真ん中のスペースがあき通り道のようになっていてそのまわりを囲むように正装をした男女たちが陣取っている。

ホイッスラーとうまがあったムーア(1841~1893)は唯美主義と古典主義を融合させた画家。描く女性のポーズはギリシャ彫刻を彷彿とさせる。日本の展覧会では見る機会がほとんどないので、イギリスへ行くとレイトンとともに新鮮な刺激が味わえる。

映画は楽し! 伊丹映画

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Img      伊丹十三監督(NHK ‘8人の伊丹十三’より)

Img_0002    伊丹映画(‘8人の伊丹十三’より)

先週BS1で放送された‘8人の伊丹十三’をみた。この40分くらいの番組は偶然目にとまった。制作したのはNHKの松山放送局、松山には伊丹十三記念館があり局のスタッフは伊丹十三(1933~1997)の没後20年とからめて伊丹映画に迫ってみようと思ったのかもしれない。

この番組はとてもタイムリーだった。というのは、今年の後半伊丹映画の魅力に再度とりつかれ昔ビデオ屋でレンタルしてみた作品などをYou Tubeで何本かみたところだった。3ヶ月くらい前、津川雅彦が亡くなったとき民放が追悼番組で伊丹映画の最高傑作‘マルサの女’(1987年)を流してくれるかなと期待したが、これはなかった。

伊丹監督がメガホンをとった映画は全部で10本、このなかで最初の‘お葬式’(1984年)とこれに続く‘タンポポ’、‘マルサの女’、‘マルサの女2’は劇場ではなくレンタルビデオでみた。でも、15年以上前だからどんな内容だったか記憶が薄れている。

こういうとき有り難いのがYou Tube、‘お葬式’はないがほかの3本はしっかりみれる。エンタメたっぷりの伊丹映画にまた嵌りこんでしまい、隣の方からは‘またみているの!’と笑われてしまう有り様。

嬉しいことにまだみてなかった宮本信子主演の‘ミンボーの女’、‘スーパーの女’、‘マルタイの女’もYou Tubeに流れているのでこちらも何回もみた。新規の伊丹作品がMy好きな映画に追加されるにつれ、伊丹映画の魅力を再認識させられた。

とにかくどれもよくできている。キレのいいストーリーの展開、見る者の心をぐっとつかむ台詞、ディテールへのこだわり、耳に強く残る音楽。とくに感心するのが役者のしゃべる台詞がびしっと決まっていること、伊丹は脚本を全部自分で書いた。

‘8人の伊丹十三’で最も長くしゃべっていた女優で妻の宮本信子は‘てにをはは絶対間違ってはいけない。台本の通りでないとOKがでないから台詞はもう徹底的に覚えた’と語っている。練りに練りこまれた台詞の力が映画では最も大事だということなのだろう。

すでに近くのTSUTAYAでチェック済みの‘あげまん’と‘大病人’を年が明けたらみるつもり。ランキング的にはどの位置に入るのだろうか。

黒澤明 VS 伊丹十三!

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Img_0002    黒澤明監督 ‘天国と地獄’(1963年)


Img     伊丹十三監督 ‘タンポポ’(NHKの‘8人の伊丹十三’より)

幅広いジャンルのある映画のなかでとくに熱をあげてみているのが‘刑事もの’、日本で作られた映画でお気に入りは‘砂の器’(1974年)、‘天国と地獄’(1963年)、‘飢餓海峡’(1965年)、TVで放送されたとき収録したビデオがあるのでこれまで数え切れないほどみてきた。

このうち黒澤明監督の‘天国と地獄’は嬉しいことに10月にBSプレミアムで放送された。で、TV本体にビデオどりしたので画質の向上したニュー‘天国と地獄’をこの2ヶ月繰り返しみている。2週間前の忘年会で会った映画好きの友人もこの映画を見たというので話が盛り上がった。

未見の作品も含めて久しぶりに何本もみた伊丹映画、そして‘世界のクロサワ’と‘世界のミフネ’がタッグを組んでつくった刑事ものの傑作‘天国と地獄’。ふたつをクロスさせてみているうちにいくつか共通することに気づいた。

世の中に数多くいる映画狂、監督や俳優をはじめとする映画の製作に携わる人たち、映画評論家からするとまったくの素人話なのだが、直感的‘黒澤明 VS 伊丹十三’を少しばかり。

黒澤明(1910~1998)より一年前に死んだ伊丹十三(1933~1997)は黒澤監督を敬愛していたのではないかと思う。作品の中にオマージュともいえることがでてくる。例えば、‘マルサの女’で山崎努が演じた脱税王の事業家の名前が‘権藤’、そして‘天国と地獄’でお抱え運転手の子どもを間違って誘拐した犯人に3000万円の大金を支払うことになる靴メーカーの重役(三船敏郎)の名前が‘権藤’。

もうひとつ、黒澤映画の‘生きる’では誰もがジーンとするシーンがでてくる。名優志村喬が雨のなか公園のブランコに乗って♪♪‘命短し、恋せよ乙女、、、’を涙顔で唄う。この公園のブランコが伊丹十三の‘ミンボーの女’の最後のほうにも出てくる。ブランコに隣り合わせで乗っているのはホテルの暴力団対策の若手担当者とミンボー専門の弁護士(宮本信子)。

女弁護士は東京の下町で医者をしていた父親が傷ついたヤクザの親分をかばったおかげ対立しているヤクザに殺されたことを話している。と、そのときにちょっと前ヤクザの威しに屈せず強い態度にでた担当者にめがけてチンピラが突進してきた。寸前でそれを体を張って阻止する弁護士、そのため鋭いナイフが腹に突き刺さった。一命はとりとめたものの大けがをしてしまった。

黒澤も伊丹も音楽の使い方が天才的に上手い。しかも、使う音楽はアメリカ映画やヨーロッパ映画並み。その一例が画像のシーンに流れる音楽。‘天国と地獄’は誘拐犯(山崎努)がはじめて姿をみせる場面。川の側の道を左の方に♪♪モーツアルトの軽快なメロディにのって歩いていく。

一方、伊丹の‘タンポポ’(1985年)、この場面はラーメンづくりの指南役を務める大型トラックの運ちゃん(山崎努)が女店主(宮本信子)にラーメンのできあがった時間をストップウォッチで計っているところ。ここで使われているのがなんとあのマーラーの大強音が響く♪♪‘交響曲一番(巨人)’。

モーツァルト、マーラーが流れてくれば外国人だって日本人がつくった日本映画でもすっとスクリーンのなかに入っていける。NHKの‘8人の伊丹十三’で知ったのだが、2016年に‘タンポポ’は全米60館以上で上映されたとのこと。今世界的にラーメンブームだからこの映画はおおいにうけたにちがいない。


名作‘ニュー・シネマ・パラダイス’!

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Img     ジュゼッペ・トルナトーレ監督‘ニュー・シネマ・パラダイス’

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中国では今上映がOKとなった宮崎駿監督の‘となりのトロロ’が大ヒットしているという。名作はどこの国でも人々の心をとらえ長く記憶にとどまる。わが家でも今年は映画館で見たのは一度もなかったが、You TubeやBSプレミアムシアターで何本かいい映画を楽しんだ。

何年にもわたって毎月TVガイドを購入しビデオ収録する番組の計画をたてているが、これまではBSプレミアムで放送される映画はほとんどみることはなかった。ところが、My好きな映画のリストに入っているものが9月と10月立て続けに登場した。‘ニュー・シネマ・パラダイス’(1989年)と‘天国と地獄’(1963年)。

忘年会でお酒を酌み交わした二人の友人に勧めたのがイタリアのジュゼッペ・トルナトーレ監督がつくった‘ニュー・シネマ・パラダイス’。みたのは映画館ではなくレンタルビデオ、だから27,8年前のこと。あらためてみてみると映画の魅力がつまったいい映画だなとつくづく思う。

内面深くまでとらえるメランコリックな人物描写が心にぐさっとくるとともについ大笑いしてしまうのが役者たちのユーモアあふれるしゃべりと仕草。そして、2時間の上映中合間々に何度も流れてくるテーマ曲(エンニオ・モリコーネ作曲)の琴線にふれるメロディ。映画好きにはたぶんいっぺんにその魅力の虜になるはず。

まだ見ていない人のためにネタばらしはしないが、ショートガイダンスをしておくと、舞台はシチリアの小さな村でそこにある唯一の娯楽施設である映画館にまつわるお話。映写技師アルフレードと映画好きの少年トトの年の差をこえた熱い友情物語が心を打つ。とくに子役のトトの演技が秀逸、その愛くるしい笑顔が目に焼きついている。

TSUTAYAに直行すべし、信じる者は救われる!

♪♪サクソフォンが奏でる台湾演歌!

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Img     台湾の演歌‘深情海岸’

Img_0001      ソプラノサックス奏者 凡人

Img_0002      凡人&淑昭(テナーサックス)

昨年クラシック音楽をたくさん聴いたYou Tubeで今年存分に楽しんだのは台湾の演歌、といっても歌手の動画ではなくサクソフォンの演奏。そのなかで数え切れないほど聴いたのが凡人(ソプラノサックス)&淑昭(テナーサックス)がコラボする‘深情海岸’。

この動画は2014年8月に登場し現在のアクセス数はなんと385万回! こんな心に響くいい曲が台湾にあったのか、という感じ。日本のサックス奏者ですぐ思い浮かべるのはジャズの渡辺貞夫、通称‘ナベサダ’、今何歳になったのだろうか、85歳くらい?若い頃高音のアルトサックスの音色が美しい
‘パストラル’をよく聴いた。

この凡人というサックス奏者は台湾のナベサダといった存在かもしれない。年恰好からすると50代?演奏の動画以外情報がないのでよくわからないが、アクセス数の多さをみれば台湾では誰もが知っている演奏家にちがいない。

‘深情海岸’で吹いているのはソプラノサックスだが、ほかの曲はほとんどがアルトサックス。断トツにアクセスの多い‘深情海岸’はほかの人物が歌ったり楽団が演奏しているのもあるから多くの台湾人に愛されている曲なのだろう。一度聴いてすぐ嵌った。ほかにもいい気持にさせてくれるいわゆる‘台湾演歌’が続々でてくる。最近は日本のいい演歌に出くわさないので、こういう曲がとても新鮮に感じられる。

台湾の歌手が日本の演歌を歌う動画がいくつもあるが、例えば美空ひばりの‘裏町酒場’、都はるみの‘大阪しぐれ’、、、凡人も‘旅笠道中’や映画‘非情城市’のテーマ曲、三橋美智也の曲などを演奏し喜ばしてくれる。台湾の人たちが日本の歌謡曲や演歌を想像以上に聴き、歌ったりするのをみると嬉しくなる。

台湾はまだ2回しか行ってないが、また出かけることがあったら‘深情海岸’や日本の演歌のことを聞いてみようと思う。

わくわくワールドツアー! トルクメニスタン ヤンギカラ

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Img_0002NHKのBSプレミアム‘体感!グレートネイチャー’(2018年6月より)

Img_0003     カスピ海の近くにあるヤンギカラ(炎の城塞)

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Img   目を奪われる交互に重なりあう紅白の地層

ここ数年NHKのBSプレミアムの‘コズミックフロント’と‘体感!グレートネイチャー’(月一回)を欠かさずみている。毎週木曜放送の‘コズミックフロント’については宇宙の話にだいぶ慣れてきたので熱の入るテーマが連続するということもなくリラックスしてみれるものがでてきた。

これに対し1時間半と長い‘体感!グレートネイチャー’(土曜)のほうは毎回目の前に映しだされる絶景を息を呑んでみている。今年200%感動したのはトルクメ二スタンにある‘ヤンギカラ’(炎の城塞)、赤と白の地層が交互に重なる光景はまるでアメリカのグランドキャニオンを彷彿とさせる絶景だった。その衝撃はマグニチュード7級で潜在的に大きな観光資源となる可能性を秘めている。隣の方とは即‘行ってみたいね!’で意見が一致。

この‘ヤンギカラ’があるのは豊富な天然ガスで発展している‘謎の国’トルクメニスタン、首都のアシガバード(人口100万)から北西800㎞のところに位置しカスピ海のすぐ近く。こういう赤と白の地層が100㎞にわたって広がっている。番組スタッフも‘スゴイ々’を連発し感動を抑えきれない様子。

ここはまだ一般の人は入れてない感じだが、旅行会社はトルクメニスタン側の受け入れ態勢が整えばツアーを組みたいと思っているかもしれない。われわれだって現地へ出かけようという気になっているのだから、ここの存在を知ったら同じように旅心をいたく刺激される人は多いはず。

ひょっとしたらグランドキャニオンより感動する?望みが実現する可能性は低いが旅先のオプションにしっかり登録しておいた。

わくわくワールドツアー! ベリーズの‘ブルーホール’

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Img_0003    中南米を合わせると35の国と地域が取り囲むカリブ海

Img_0002_2 BSプレミアム ‘体感!グレートネイチャー’(2018年10月)より

Img     ベリーズの‘ブルーホール’ 

Img_0001     バルバドスの‘褶曲’

10月に放送されたBSプレミアム‘体感!グレートネイチャー’ではカリブ海の絶景が登場した。大リーグに親しんでいるので名選手を多く輩出しているキューバやドミニカ、ジャマイカなどの国はアバウトにカリブ海に浮かぶ島だということは知っている。でも、この番組をみるまで島々の正確な場所は頭の中に入っていなかった。

カリブ海をとりかこむ国や地域は中南米を合わせると35もある。そのカリブ海の西の端にあるのがベリーズ、中米に属するこの小さな国はその人口36万人に対して観光客は年間100万人以上。白いビーチと穏やかな波を求めて世界中からやってくる。

静かな海が続いているのはサンゴ礁の広がるバリアリーフ(世界2番目)が外洋の荒波から守ってくれているから。ここにあるのが濃い青色をした直径300mの穴、‘ブルーホール’、小さい頃海で泳いでいたとき、こういう濃い青の海に出くわし不安なったことがある。

穴のまわりは水深2mくらいの透明度の高い海なのに、ここだけは100mをこえる深さになっており、鍾乳洞が残っている。ここはもともとは海の上にあり、海面が低かったころ鍾乳洞がつくられた。その後地殻変動などにより天井が崩落し巨大な穴になった。そして氷河期が終わると海面が上昇し穴が海に沈み‘ブルーホール’となった。

ほかの科学番組でもこの‘ブルーホール’はとりあげられたことはあるが、どのようにして出来上がったかまでは掘り下げていなかった。‘グレートネイチャー’はチャレンジ精神が旺盛なところが番組を売りだから、好感度は高くなる。われわれにとって中米は遠いパラダイスの国だがアメリカにとっては自分の庭みたいなところだから、ベリーズの海岸でのんびりバカンスをすごすアメリカ人は多いのだろう。羨ましい!

番組にはもうひとつ目を見張らせる自然の光景がでてきた。それはカリブ海の東の端にあるバルバドスで紹介された‘褶曲’。地学に詳しいタモリ同様、地層が大きな圧力をうけていろんな形に不規則に曲がっている褶曲に強い関心をもっている。ぐにゃっと曲がり大きなパワーを感じさせる地層はカリブプレートによる地殻変動によってもたらされた。カリブ海の島々にこんな荒々しい光景があったとは思ってもみなかった。

You Tubeで大学の物理講義を聴講!

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Img     京大春秋講義 ‘極限の宇宙’(理学研究科田中教授)

Img_0001     慶大理工学部講義 ‘数理物理’

最近は読んでいる本の8割方がサイエンス本になっている。サイエンスの森に入りこむきっかけになったのが科学雑誌NewtonとBSプレミアムの‘コズミックフロント’。そのおかげで宇宙や素粒子の話がだいぶわかってきた。

といっても峰の高いテーマに首を突っ込んだので、各理論の理解がどんどん進むというわけにはいかず大学クラスの数学に悪戦苦闘中。もやもや感はいつもあるがそれはあまり気にせず、時々おこる‘小さな理解のジャンプ’を信じてブルーバックスやそう難しくない専門書を読み続けている。

高校生の頃から‘求めよ、さらば与えられん!’を心に刻んでいるが、3ヶ月ほど前嬉しいことに遭遇した。なにかの拍子にYou Tubeにサイエンスや数学の話をしてくれる動画がたくさんあることに気づいた。 大学の講義が居ながらにして聴けるじゃん、これは有難い。これを求めていたのだ!で、片っ端から‘お気に入り’に登録した。

京大の市民講座に関心のあるサイエンス話が続々でてくる。画像は今年9月にアップされた春秋講義‘極限の宇宙’、アクセス数は3200ほど。よくわかるスライドで説明してくれるので理解が進む。京大は流石、物理のメッカだけあって定期的に市民に対して最新の物理の話を行っている。すばらしい。ほかにも静岡大や東北大が‘サイエンスカフェ’を開講している。

大学で学ぶ数学の講義を映した動画もいろいろある。京大、慶大、筑波大、講義の数が最も多いのが慶大の理工学部、ここに紹介したのは‘数理物理’、ときどき大阪弁でしゃべる先生の教え方がとても上手い。2012年5月頃のものだが、現在アクセス数は18万3千。理系の学生だって数学につまずく人もいるはずだから、試験にパスするためにこういうYou Tubeを熱心にみているのだろう。われわれの頃と違って今はYou Tubeで勉強できるのだから本当にいい時代!

来年はこのYou Tube講義と本を両輪にしてサイエンスの森をどんどん進んでいきたい。

2018年 My‘好きな女性画’に加わったニューフェイス!

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Img     ムンクの‘画家の妹、インゲン’(1892年 オスロ国立美)

Img_0005     ドランの‘シミーズの女性’(1906年 コペンハーゲン国立美)

Img_0001     藤田嗣治の‘座る女’(1921年)

3日くらい前、新聞に現在東京都美で開催中の‘ムンク展’(1/20まで)が来館者数40万人を達成したという記事が載っていた。‘叫び’は美術ファンの心を予想を以上にとらえているようだ。わが家は今年‘ムンクイヤー’だったので素直に嬉しい。

昨年からはじめたMy‘好きな女性画’に加わったニューフェイス!今年はみな西洋絵画になった。5月に出かけた北欧ではお目当てのフィヨルド観光とともに気分がぐっと盛り上がったのが美術館めぐり。運よくいい絵にたくさん出会えたが、ムンク(1863~1944)とドランの(1880~1954)がMy‘好きな女性画’に加わった。

‘画家の妹、インゲン’は画集で知っていたが、本物は等身大くらいの大きな絵。男性でも女性でもムンクの描く肖像画は大きいのでも本人と対面しているような感じになる。この妹、どうでもいいことだがタレントの橋本マナミを連想する。

コペンハーゲン国立美に飾ってあったドランの‘シミーズの女性’には200%やられた。ドランの後期の作品ではパリのオランジュリー美に‘大きな帽子を被ったポール・ギョーム夫人の肖像’という魅力的な作品があるが、初期のフォーヴィスム真っ只中にこんなインパクトのある絵を描いていたとは! ドランは風景画だけではないことがわかったのは収穫。

東京都美であった‘藤田嗣治展’でもっとも惹かれたのが‘座る女’。これは初期の肖像画で所蔵しているのは日本のコレクター。乳白色の肌と黒い目と黒髪、そして黒の衣装のコントラストが強烈。思わず引きずり込まれた。

今年も拙ブログにおつきあいいただきありがとうございます。
皆様良いお年をお迎え下さい。

謹賀新年 2019年前半展覧会プレビュー!

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今年も拙ブログをよろしくお願いします。正月の天気は寒波の影響で寒くなりそうという報道がされていたので身をすくめていたが、その心配のない穏やかな正月だった。今年開かれる展覧会についての情報集めはすでに昨年の後半からはじまっている。6月までの前半に焦点を当て注目の展覧会をピックアップしてみた。

★西洋美術
トルコ至宝展      3/20~5/20      国立新美
ラファエロ前派展    3/14~6/9       三菱一号館美
モロー展        4/16~6/23      汐留ミュージアム
ドービニー展      4/20~6/30      損保ジャパン美

クリムト展       4/23~7/10      東京都美
ウィーンモダン     4/24~8/25      国立新美
バレルコレクション   4/27~6/30      Bunkamura
松方コレクション展   6/11~9/23      西洋美

★日本美術       
新・北斎展       1/17~3/24      森アーツセンター
奇想の系譜展      2/9~4/7        東京都美
エインズワース浮世絵展    4/13~5/26      千葉市美

(注目の展覧会)
西洋美術ではラファエロ前派とくれば力がぐっとはいる三菱一号館美への期待が大きい。そして、このあとの流れがとてもいい。4月に同じタイミングで東京都美と国立新美にクリムトとシーレが登場する。久しぶりのクリムト展なので未見の作品と何点会えるか、とても楽しみ!

このところ足が遠のいているBunkamura、4/27からはじまる‘バレルコレクション’には注目している。お目当てはドガのバレエの稽古を描いた絵。これがみられるのだから日本は美術大国。待てば海路の日和あり!

昨年ルオー展で好感度をあげた汐留ミュージアムは今度はパリのモロー美の看板作品をごそっとみせてくれる。あの代表作‘出現’がやって来るのだから大拍手。

一方、日本美術は今のところで出かける予定は3つだけ。千葉市美で行われる‘メアリー・エインズワース浮世絵コレクションン’は期待したい里帰り展。どんなプラスαに遭遇するだろうか。


         



‘初夢’展覧会! その一

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Img  ロセッティの‘ダンテの夢’(1871年 ウオーカーアートギャラリー)

Img_0001     ロセッティの‘リリス嬢’(1864~68年 デラウエア美)

Img_0003 バーン=ジョーンズの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’(1898年 ポンセ美)

Img_0002 クノップフの‘私は私自身に扉を閉ざす’(1891年 ノイエ・ピナコテーク)

年の初めは常日頃見たいなと思っている絵との出会いを夢想している。で、とびっきりの‘初夢’展覧会をお見せしたい。

今年開催される展覧会を特集した雑誌をいくつか立ち読みして期待の‘ラファエロ前派’(3/14~6/9 三菱一号館美)に出品されるラインナップが少しわかった。イギリスのレイディ・リーヴァー美が所蔵するバーン・ジョーンズの‘赦しの樹’が目玉になるようだ。これはまだみてないので楽しみ。

ロセッティ(1828~1882)やバーン=ジョーンズ(1833~1898)に魅了され続けており、これまで画集を集めたり古本屋で手に入れた‘D.G ロセッティ’(1990年 みすず書房)や‘バーン=ジョーンズの芸術’(1997年 晶文社)を読んだりして関心の度合いを高めてきた。

だから、まだ縁はないが見たい度の強い作品はぎゅっと絞り込まれている。ロセッティについては何としてもこの目でというのが2点ある。リヴァプールにある‘ダンテの夢’、これをエーコ著の‘美の歴史’ではじめてみたときは体が震えた。もう一点はアメリカのボルチモアにあるデラウエア美が所蔵する‘リリス嬢’。

どちらも実際お目にかかるとなると遠い存在だが、イギリス旅行の優先度の順番が上がってくると‘ダンテの夢’のほうは夢が叶うかもしれない。では、ボルチモアはどうやって行くか。こちらはNYへ1週間くらい滞在して足をのばすというのがアバウトなイメージ。果たしてそのときが来るだろうか。

バーン=ジョーンの‘アヴァロンのアーサー王の眠り’はみたくてしょうがないが、これは200%無理。なにせ、絵があるのはプエルトリコのポンセ美。プエルトリコへは一体どうやっていく?中米にはまったく疎い。西海岸のLAなどを経由してプエルトリコに入るのだろうか。

ラファエロ前派の画風と重なるベルギーの象徴派クノップス(1858~1921)の‘私は私自身に扉を閉ざす’、これはミュンヘンのノイエ・ピナコテークに展示されているのでチャンスはある。今えがいている旅の段取りはいつか実現しようと思っているスイス美術館巡りの際に滞在する予定のチューリヒからミュンヘンへ飛ぶ。さて、どうなることやら。

‘初夢’展覧会! その二

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Img     クリムトの‘ダナエ’(1907~08年)

Img_0004     クリムトの‘金魚’(1901~02年 ゾロトゥルン美)

Img_0001     ココシュカの‘風の花嫁’(1914年 バーゼル美)

Img_0002     フォーゲラーの‘夢Ⅱ’(1912年 ゲルマン国立美)

女性の肖像画や裸婦図は西洋絵画の長い歴史のなかで繰り返し描かれてきた。画風もいろいろありその刺激は見る者の感情を微妙にあるいは大きく揺すぶる。女性の姿のインパクトが強すぎて心がザワザワしてしまう画家の双璧がロセッテイ(1828~1882)とクリムト(1862~1918)。

今年は‘クリムトイヤー’かもしれない。4月の後半から2つの美術館でクリムトの回顧展が開催される。東京都美は4/23~7/10、一日遅れでスタートし1ヶ月半くらい長く興行するのが国立新美の‘ウィーンモダン’(4/24~8/25)、こちらにはシーレ(1890~1918)も登場する。

久しぶりのクリムトなので会期中はクリムト絵画が生活のなかにドドーンと入ってきそう。こういうときクリムト狂としては大事な役目を果たさなくてはならない。絵画好きには昨年のムンク同様、展覧会を大いにPRしようと思っている。

クリムトの絵で死ぬまでに会えないかと願っているのが個人蔵の‘ダナエ’とスイスのゾロトゥルン美にある‘金魚’。ともにゾクゾクっとするほどの官能性を漂わせている。このダナエがみれたら最高なのだが、個人がもっているので可能性は限りなく低い。

これに対し、‘金魚’はスイスの美術館にある。このゾロトゥルンという街はベルンの北そう遠くないところに位置し、バーゼルとチューリヒとはちょうど三角形をつくるような関係になっている。スイス美術館巡りではバーゼルもベルンも出かける予定なのでゾロトゥルン美にも寄ってみるつもり。絵と対面したら卒倒するかもしれない。

昨年はムンクの‘叫び’を2つ一緒にみることができた。長年の夢が叶ったので少し楽になった。画家の代表作をみるというのは絵画ファンにとってはひとつの‘事件’、次に実現したい‘事件’はバーゼル美にあるココシュカ(1886~1980)の‘風の花嫁’。ムンクが‘叫び’ならココシュカは魔性の女アルマとの恋を描いたこの絵。

ところで、バーゼル美名品展というのは過去にあった?スイスからはチューリヒ美や昨年のビュールレコレクションがやって来たので、今度はバーゼル美やベルン美を期待したいが、ここはロンドンのナショナルギャラリーのように貸し出しをしない美術館なのだろうか。日本の美術館でチャレンジするところがでてくると嬉しいのだが。

ラファエロ前派を彷彿させるフォーゲラ―(1872~1942)の‘夢Ⅱ’にぐっときている。画集でみつけたのはもうだいぶ前だが、こんなファンタジックな乙女の姿を描いたフォーゲラーは60歳のときソ連に移住してしまう。そして、絵のスタイルをガラッと変える。いろんな画家がいる。

‘初夢’展覧会! その三

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Img_0002 カラヴァッジョの‘聖トーマスの不信’(1601年 サン・スーシ宮殿)

Img_0001_2カラヴァッジョの‘洗礼者ヨハネの斬首’(1608年 サン・ジョヴァンニ大聖堂)

Img レンブラントの‘ヤン・シックス’(1654年 シックス・コレクション)

今週の木曜日、10日に上野の森美で行われている‘フェルメール展’(10/5~2/3)へ出かけることになっている。予約した時間は11時。お目当ては今回出品されたフェルメール(1632~1675)で最後に登場する‘取り持ち女’と会期中出ずっぱりの‘紳士とワインを飲む女’。ほかの画家にはあまり関心がないので鑑賞時間は40分くらいの予定。

西洋絵画史のなかで17世紀はルネサンスのあと新しい絵画を切り開いた画家がたくさんでた時代である。バロック絵画の扉を開いたカラヴァッジョ(1571~1610)、バロックの王となったルーベンス(1577~1640)、そしてカラヴァッジョの影響をうけたレンブラント(1606~1669)、ラ・トゥール(1593~1652)、ベラスケス(1599~1660)、そして最後がフェルメール。

この6人については画集に載っている主要作品を全部目に入れようとこれまで海外の美術館をまわってきた。そして、運がいいことにそうした名画に遭遇してきたので、わが身にセレンディピティ(思わぬ幸運に偶然出会う能力)があるのかなと気をよくしている。

例えば、フェルメールは上述の2点が日本にやって来てくれたおかげでコンプリートにリーチがかけられる。残る1点は‘音楽の稽古’(バッキンガム、宮殿王室コレクション)。でも、この絵の展示情報がよくわからないため、どういう風な形でゴールするかまったくイメージができない。だから、日本で公開される機会をじっと待っていようというスタンス。

これに対して200%惚れこんでいるカラヴァッジョはまだ縁のないのが5点くらい残っているのでさらに追っかけエネルギーの注入が必要。2010年の大カラヴァッジョ展(ローマ)をみたことでカラヴァッジョにぐぐーんと接近したとはいえ現状に満足してはいられない。

残っている作品で見たい度の強いのはポツダムのサンス―シ宮殿にある‘聖トーマスの不信’とマルタの大聖堂に飾ってある‘洗礼者ヨハネの斬首’。ポツダムは2度目にベルリン旅行で足をのばすことにしているが、マルタへの段取りはまだ手つかず。この2点と対面できれば肩の荷がおりるのだが、果たして。

今年はまた日本でカラヴァッジョ展が開催される。だが、東京では開かれない。巡回展は次のようになっている。
★北海道近美:8/10~10/14
★名古屋市美:10/26~12/15
★あべのハルカス美:12/26~2/16

出品される数は10点くらいで初登場は3点、ローマのボルゲーゼ美にある‘病めるバッカス’(札幌のみ)、‘ゴリアテの首を持つダヴィデ’(名古屋のみ)、そしてバルベリーニ美蔵の‘ユディトとホロフェルネス’(大阪のみ)。いずれもすでに鑑賞済みだが、大阪で気合を入れたユディトと再会することにしている。

レンブラントはアムステルダム国立美やエルミタージュ美、メトロポリタン美などを訪問したので見たい絵は少なくなっている。残っているものでなんとかしたいのはアムステルダムのシックス・コレクションがもっている‘ヤン・シックス’。この絵は展覧会にでてくることがあるのだろうか。今のところまったく情報がない。

‘初夢’展覧会! その四

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Img ブリューゲルの‘ネーデルランドの諺’(1559年 ベルリン絵画館)

Img_0001 ブリューゲルの‘雪中の東方三博士の礼拝’(1567年 オスカー・ラインハルト・コレクション)

Img_0002     ボスの‘十字架を担うキリスト’(1516年 ヘント市美)

Img_0004     ファンエイクの‘教会の聖母子’(1439年 ベルリン絵画館)

今年の秋、西洋美ではウィーン美術史美が所蔵する作品によって構成される‘ハプスブルク家展’(10/19~1/26)が開催される。ここの美術館展があるときはだいだいこのタイトルがつく。これまで4,5回出かけた気がする。チラシを飾るのはこれまた定番のベラスケスの‘青いドレスのマルガリータ王女’。

このハプスブルク家のコレクションが日本にやって来るときいつも思うのは、‘ブリューゲルを一枚でいいから加えてくれたら嬉しいのに’、過去にブリューゲル(1525~1569)の絵が展示されたのは一度もない。事情はよくわからないが、これはブリューゲルは貸し出さないという美術館の内規があるためだろうか。

ただ、2011年ベルギーのブリュージュにあるフルーニンゲ美を訪問したとき北方絵画展をやっており、ウィーン美術史美の‘サウルの自殺’が出品されていた。だから、内規の存在は不明確。ヨーロッパの国には貸し出しているの日本はダメというのはウィーンから遠く離れているのでそのリスクがネックになっている?

2年前のアルチンボルド展に‘冬’と‘水’がやって来たのだから、そろそろブリューゲルを解禁してもいいでしょう、という感じ。1点でいいが3点くらい並べてもらうと最高。こういうとき期待したいのが国立新美と東京都美、もちろんミューズへの祈りも欠かせない。

ブリューゲルの当面のターゲットはベルリンにある‘ネーデルランドの諺’とスイスのヴィンタートウール(チューリヒの近く)まで足をのばすとみれる‘雪中の東方三博士の礼拝’。ベルリンの再訪とスイス美術館めぐりは中期の海外旅行計画に入っているのでこの2点はアバウト射程圏。

ベルリンの絵画館で見たい絵は多いがブリューゲルのほかにはファン・エイク(1390~1441)の‘教会の聖母子’が見逃せない。でも、この絵は縦31cm、横14cmの小品。その精緻な描写を凝視することになりそう。

2016年の大ボス展(プラド美)をみて満足の極致に達したボス(1450~1516)、次に追っかけるとしたらベルギーのヘント市美にある‘十字架を担うキリスト’。さて、ヘントはどうやっていくのだろうか。

‘初夢’展覧会! その五

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Img     グリューネヴァルトの‘磔刑図’(1515年 ウンターリンデ美) 

Img_0001  ホルバインの‘商人ゲオルク・ギーゼ’(1532年 ベルリン絵画館)

Img_0003     フリードリヒの‘山上の十字架’(1808年 ドレスデン近美)

Img_0002 フリードリヒの‘リューゲン島の白亜岩’(1818年 オスカー・ラインハルト・コレクション)

ルネサンス絵画というとすぐダ・ヴィンチ、ボッティチェリ、ラファエロといったイタリアの画家を思い浮かべるが、15世紀はイタリアだけでなくフランドルやドイツでも天才画家が多く出現した。フランドルはファン・エイク、ダビンチとほど同世代のボス、そしてブリューゲル。今日はドイツルネサンスの注目絵画をみてみたい。

2年前クラーナハの回顧展が西洋美で開かれた。このクラーナハ(1472~1553)とデューラー(1471~1528)の作品はルーブルやプラドなどのブランド美術館でよく出くわすので画集にでている主要作品はかなりの数お目にかかることができた。また、ホルバイン(1497~1543)についてもときどき遭遇する。

ところが、もうひとりの大家、グリューネヴァルト(1480~1528)はこれまでみたのは片手くらいしかない。だから、フランスアルザス地方のコルマールのある代表作‘イーゼンハイム祭壇画’が長年気になっている。この祭壇画に描かれた9つの画面のなかで衝撃度が半端でないのが‘磔刑図’。

図版でも磔刑のキリスト像の痛々しさが伝わってくるが、実際に絵の前に立ったら茨の鞭のとげが全身に刺さり苦痛で体がよじれたキリストの姿は長くみれないかもしれない。コルマールはスイスのバーゼルからそれほど遠くないところに位置している。スイスで美術館をまわるときはなんとか段取りをつけて行こうと思っている。

ホルバインの写実表現にはカラヴァッジョと同じくらい魅了されている。ロンドンのナショナルギャラリーで‘大使たち’、NYのフリックコレクションで‘トーマス・モア’、‘トーマス・クロムウェル’をみたから、次はベルリンの‘商人ゲオルク・ギーゼ’。日本の美術館がもっとホルバインに光をあててくれたらいいのだが、ちょっと残念!

古典絵画ではないがとても気になっているドイツの画家がいる。それはロマン派のフリードリヒ(1774~1840)、TASCHENのフリードリヒ本を購入し主な作品は頭に入っているのであとは本物に出会うだけ。でも、これはかなりの時間がかかる。日本の展覧会にほとんど登場しないので所蔵しているドイツの美術館に出向かないとみれない。

で、当面の目標は2点に絞っている。ドレスデンにある‘山上の十字架’とヴィンタートウールのラインハルト・コレクションの‘リューゲン島の白亜岩’。ともに200%KOされている。

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