‘ひまわりの咲く農家の庭’(1905~06年 ベルヴェデーレ宮)
オーストリアのウィーンは2003年に訪問した。はじめてこの街に足を踏み入れてから20年経っていたので、ウイーン美術史美やクリムトの‘接吻’があるベルヴェデーレ宮殿がとても新鮮に感じられた。ウィーンはヨーロッパではお気に入りの街、あと1,2回行きたいという気持ちを強く持っている。
そのときの楽しみ方はおおよそイメージできている。3つある楽しみの大半を占めているのがクリムト、シーレめぐり。あとは美術史美でチェッリーニの傑作彫刻‘フランソワ1世の塩入れ’をみることと昨年その素晴らしいコレクションが公開されたリヒテンシュタイン美を訪問すること。
クリムト(1862~1918)の作品が沢山あるベルヴェデーレ宮、2回の訪問と日本であったクリムト展などで画集に載っている名画にだいぶ済みマークがついている。でも、まだ9点も残っている。今、クリムト作品の展示についての生の情報がないが、とても一回では終わりそうにない。
そのなかでとくに関心の高いのが正方形の画面いっぱいに花が描かれた風景画。‘けしの野’や‘ひまわりの咲く農家の庭’は花をモチーフにした静物画とちがい、絵にとても力がある。数多くの花が画面全体にオール・オーヴァーに広がり、花の命の輝きを感じさせる。装飾的に描かれているのに花の存在感が強く印象に残るその生感覚、これが一番の魅力。‘ひまわり’と画面構成がよく似ているのがプラハの国立近代美が所蔵する‘農家の庭’、これも大変魅せられる。
‘りんごの樹Ⅱ’は15年くらい前日本にやってきた。大きなアフロヘアのような形をした木に赤や黄色のりんごが豊かに実っている。インパクトのある木のフォルムが今も忘れられない。ベルヴェデーレ宮にはりんごの木を描いた作品がもう1点あたったのだが、こちらは‘アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像’などと同様2006年競売にかけられ個人が所有することになった。これで対面の夢が完全に消えた。