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Channel: いづつやの文化記号
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日ハムは大谷を野手として育てるの?

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Img_2開幕して14、15試合を消化したプロ野球、どこが強いかはこのくらいの試合数ではまだいえない。

チームの総合的な力がでてくるのが40試合くらいを戦ったころ。この時点で勝率5割を上回れるチームとそうでないチームがはっきりしてくる。

関心の高いパリーグの首位は西武、10勝5敗。以下オリックス、楽天、日ハム、ロッテ、ソフトバンクの順。

予想外だったのがソフトバンク、勝てないのは打線が振るわないから。投手力がよくてもこの打力だと今年も苦戦しそう。頑張っているのがオリックス、監督が代わり日ハムから糸井は入ってきたのが大きなプラスになっている。

前任の岡田は阪神の監督をやっていたときもそうだったが、プライドが高く監督然としているところがあるから、選手たちは重い空気のなかでプレーをしていたのだろう。それが選手としての名声はないがコーチ術に長けていた森脇に代わり、チームの結束力が高まったことがいい結果を生んでいる。今年は強くなるような気がする。

逆に下手をするとBクラスに終わりそうなのが日ハム、糸井をトレードに出した影響が大きくでている。それと気になるのが栗山の監督としての能力。どうも威張り病がでている感じ。一年目でいきなり優勝したので自分の監督としての能力を過信しているのでは。

迷走しているとしか思えないのが新人の大谷に二刀流をやらせていること。日ハムは大谷をバッティングでスターにしたいと思っているのだろう。だったら、大谷にそういったらいい。大谷だって本音はバッターをやりたいのかもしれない。糸井を出したのは大谷への期待が大きいことの現れ、数年のうちに中田、大谷の2枚看板で勝利に突き進もうという目論見であろう。

大谷のあのどっしりとした構えは絵になるから、二人がビッグな選手に成長したら日ハムの黄金時代がやってくる。そして、斎藤祐ちゃんが肩痛を克服してがんばってくれたら、日ハムの人気はそれこそ全国区になる。

大谷は今は気が張っているからなんとか二刀流をやれるが、いずれどちらも悩むときがくる。すると、この選手は心はあまり強くなさそうだから調子は低迷を続ける。早く投手か打者か決めてやるのがいい。さて、栗山はどちらを決断するのか?


大リーグ 順調なスタートをきった日本人選手!

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ヤンキースと2年契約を結んだイチローの打棒がふるわない。オープン戦は2番で打席に入っていたから、シーズンがはじまってもこの打順で起用されると思っていたが、どうも首脳陣の見方はちがっていて6番とか7番で先発することが多い。今日はヒット1本打ったが、物足りないバッティング。

この調子で推移するとグランダーソンやジータ、タシエラたちが復帰してきたら、先発から外されるのではなかろうか。監督は故障者続出のチームを何とか立て直したいから、打撃の調子のいい選手を優先して使う。今頭の中にあるのは守備力より打撃のこと、そうなると打てないイチローの出番は減ってくる。ここはマルチヒットを放ってアピールするほかない。イチローが主軸でプレーしないとヤンキースの試合はとたんに興味が薄れる。

心配な選手がもう一人いる。FAで西武からアスレチックスに入団した中島。開幕から故障者リストは痛い、新人だから、打撃守備とも強烈にアピールしないといけないところだったが、懸念していた怪我にいきなり見舞われた。チームは好調なスタートをきっているため、中島にはまあ無理しないでいいよ、ということになるが、これは中島にとっては大きなマイナス。実力があっても試合を多くこなさないと大リーグの野球が体で覚えられない。期待している選手だけに気が重い。

さて、順調なスタートをきった選手、投手陣がとてもいい。ダルビッシュ、岩隈、黒田は3人とも2勝をあげた。2日前投げた黒田は5安打完封勝利、すばらしいピッチングだった。そして13日にダルビッシュと投げ合った岩隈も昨年の今頃とは打って変わって安定したマウンド。制球力がよく低めにボールが集まるので大きく乱れない。今年はローテーションをまもって投げれば10勝は楽に達しそう。また、レッドソックスの上原と田沢もリリーフでいい働きをしている。

野手で頑張っているのがブリュワーズの青木、オフの体力強化で体が大きくなり、高いバッティング技術に加えパンチ力がついてきたから、チームに活気を与える一番バッターになった。青木の目標は3割、大いに期待できる。

そして、ひょいと大リーグにあがってきたのが今年の3月にトロント・ブリュージェイズとマイナー契約をした川崎。故障したレイエスの代役として9番ショートで先発出場し、ヒットも4試合で2本打った。守備の良さを買われての起用は昨年いたマリナーズで元気よくプレーしたのが評価されているから。捨てる神あれば拾う神あり。レイエスが復帰してもスーパーサブとして起用されるようプレーに磨きをかけてもらいたい。

アートに乾杯! 馬力をまさに感じさせる馬図

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Img_0002_2     狩野山楽の‘繋馬図絵馬’(1614 京都 妙法院)

Img_0003_2     狩野山楽の‘牧馬図屏風’(部分 ギリシャ国立コルフ・アジア美)

Img_0005_2          長沢蘆雪の‘躍馬図’(18世紀 アルカンシェール美)

Img_0004_2     曽我蕭白の‘牧馬図’(部分 18世紀)

毎年京都ではこの時期になると非公開文化財特別公開が行われる。過去2回京都のバス会社が実施しているお寺や神社めぐりツアーに参加し、貴重なお宝を楽しんだ。これで8つぐらいの寺を回ったことを記憶している。

そのひとつ、妙法院でみた墨で描かれた馬の絵馬が今京博で開かれている‘狩野山楽・山雪展’(3/30~5/12)に展示されている。背景が金地なので右の前足を大きくあげ分厚い胸と頭を後ろに反らす姿が目に強く焼きつけられる。

山楽(1559~1635)の描いた絵馬はもう一点みたとこがある。それは海津天神社にある連銭葦毛の馬のもの。だが、いつどこでみたかがどうしても思い出せない。ともに馬のカッコよさが見事に表現された作品だから、山楽という‘龍虎図’とともにこの馬の絵が思い起こされる。

回顧展には馬が目を惹く‘狩猟図’がでているが、これをみて4年前江戸東博であったギリシャのマノスコレクション展のことが思い出された。作品の大半は保存状態のとてもいい浮世絵だったが、このなかにまじって山楽の馬の群れを画面いっぱいに描いた屏風があった。野原にいる馬の群れを描いた作品をときどきみることがあるが、この山楽の絵はこれまでみたなかでは一番印象深いものかもしれない。

長沢蘆雪(1754~1799)の子どもが手綱を一生懸命にひいている絵は15,6年前根津美であった‘アルカンシェール美名品展’でお目にかかった。忘れられない一枚なのでもう一度姿を現わしてくれないかと思っているが、その機会がまだやってこない。

動きがすごくある上ユーモラスたっぷりなのが曽我蕭白(1730~1781)の‘牧馬図’。これは韃靼人が野馬を捕まる場面。空中を飛ぶような姿で描かれている人物はまるで木下サーカスの馬の曲芸をみているよう。戯画っぽい描き方に思わずニタニタしてしまう。

山雪の描く龍や虎はゆるキャラ系!

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Img_0002_2     ‘松梟竹鶏図’(部分 17世紀 根津美)

Img_0003_2     ‘出山釈迦・龍虎図’(部分 17世紀)

Img_0005_2     ‘龍虎図’(17世紀 佐賀県博)

Img_0001_2     ‘虎図屏風’(部分 17世紀)

今、先週京都でみた‘狩野山楽・山雪展’(3/30~5/12)の余韻に浸っている。この回顧展には特別の思い入れがあった。というのは、‘狩野永徳展’(07年)や‘河鍋暁斎展’(08年)などをみるため京博へ行ったときは必ずアンケート用紙に‘山楽・山雪展の開催を強く期待します’と書いていたから。学芸員がずっと前から構想しそれが漸く実現したのだと思うが、こちらの願いと美術館の心意気がピタッとシンクロしたことは素直に嬉しい。

図録をみていて画面に釘づけになるのはこれまで画業の全貌に接することがなかった山雪(1590~1651)。足がとまった作品で意外な感じがしたものがあった。それはゆるキャラ系の龍や虎。これにびっくりする前に現れたのが梟。この横にらみの梟、すぐにでもゆるキャラ祭りのイベントに出演できそう。根津美の所蔵だが、こんな絵があったとは!

つづいてニヤニヤしたのが龍と虎、これも相当ゆるい。今回みた‘龍虎図’は3点。龍はちっとも怖くない、真ん中に釈迦のいる三幅対に描かれた龍はとても痩せていてそのキャラは赤塚不二夫のニャロメタイプ、これは笑える。また、佐賀にある‘龍虎図’も気の弱そうな龍、こんな迫力のなさで虎に勝てるの?という感じ。

この龍の顔をみていると昨年ボストン美から里帰りした曽我蕭白の‘雲龍図’(拙ブログ12/3/23)が目の前をよぎった。山雪の140年後に生まれた曽我蕭白はひょっとすると山雪が描いたゆるキャラの龍をみたのかもしれない。山雪と蕭白の結びつきはこの龍の顔だけでなく波の表現にもみられる。山雪のDNAは蕭白に受け継がれた!?これは俄然おもしろくなった。

この龍虎図の虎と一番下の単独で描かれた虎は同じような格好で川の水を飲んでいる。この虎だけ描かれたものは何年か前、森美であった展覧会でみたもの。どちらの虎も山楽の虎と比べれば猛獣と猫ちゃんという感じだが、回顧展に展示されている虎のほうがすこし強そう。これに対し、下の虎はなにかでれっとした感じで強さはみじんも感じられない。横をみる目には落ち着きのなさが如実に現れている。この虎をゆるキャラに仕立て子どもたちの人気者にするのは容易いこと。

山雪が生きたのは17世紀、ほかの狩野派が永徳から受け継いだ画風で虎や龍を描いていたのに山雪は人間の内面を映したような表情豊かな龍や虎を描いた。モチーフに合わせて多面的に反応する絵心にただただ感服するばかり。

ダルビッシュ 3勝目!

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今日の大リーグ中継は豪華二本立て、まずヤンキース対ブルージェイズ戦がはじまり、途中からレンジャーズ対マリナーズの試合が加わった。イチローとイチローを慕ってアメリカに渡った川崎、二人がこうやってスタメン出場する試合を放送するのだから、NHKもいい仕事をする。

トロントのチームで元気いっぱいプレーする川崎に刺激されたのか師匠のイチローは2本のヒット。このブルージェイズとの3連戦が調子をあげるきっかけになり、また川崎も気力闘志がさらに盛んになれば日本で応援するわれわれにとっても大リーグがぐーんと楽しくなる。頑張れイチロー、川崎!

レンジャースが地元で対戦するマリナーズにダルビッシュは前回の登板で3点とられ敗けをつけられた。だから、今回はそのリベンジ、初回から三振を3つとるなど安定したピッチングで7回を3安打無失点に抑えた。打線はダルビッシュが登板するときはよく打つ、これで早くも3勝目。

この試合いいプレーがいくつもみられた。レンジャーズのセンターが大きなあたりを好捕したのにつづき、ショートのアンドラスがセンターに抜けそうな打球を軽快にさばき1塁アウト。そしてダルビッシュ自身もバッターの意表をついたセイフティバントを懸命に素手でとるやいなや1塁に送球、これが間一髪アウト。ダルビッシュは本当に俊敏な動きをする。昨年もヤンキースとの一戦で転げながらすばらしいホームタッチをみせた。この運動能力は一級品。

現在アリーグの西地区は西武の中島が入ったアスレチックスが首位、これをレンジャーズが1.5G差で追っている。昨年レンジャーズは序盤からが勝ちまくっていたが、今シーズンは連戦連勝というわけにはいかない。投手陣は昨年の勝ち頭を故障で長期離脱となったので、投手力の低下は否めない。そのため、軸になるダルビッシュの右腕に大きな期待がかかる。ダルビッシュは日ハムのときもそうだったが、期待されればされるほど力を発揮する。この逞しさをテキサスのファンにも見せつけるのではなかろうか。

アムステルダム国立美術館 再オープン!

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NHKの夕方のニュースをみていたら、美術好きには嬉しいことがとびこんできた。オランダのアムステルダム国立美が10年に及んだ改修工事を終え4月14日に再オープンしたという。この話すっかり忘れていたが、今年は工事が終わる年だった!

2011年12月に訪問したときもらった館の案内パンフレットを引っ張りだしてみたら確かに2013年に再公開すると記されている(拙ブログ12/1/7)。そのときは計画ではそうなっているが、480億円をかけたこの大工事はいろいろあって進捗が遅れていることがわかっていたので、完成予定がまたずれ込むのではないかと思っていた。

それにしても、長い々工事だった。だから、その分新装美術館への期待も大きい。館内の様子がYou Tubeにでていたが壁の色がオルセーのようにちょっと紫ぽい。これは作品の美しさを一層引き立てる。昔の美術館のことが記憶から消えているので比べられないのだが、現代アートが展示されていた。前もみれた?

この美術館にあるレンブラントやフェルメールたちの傑作はおおよそ目の中に入れた。今、追っかけリストに載せているのは05年、11年の2回とも対面できなかった
★クリヴェリの‘マグダラのマリア’
★ヘルストの‘ビッカー隊長とその団員’

次回のオランダ旅行がいつになるかは未確定だが、楽しみのど真ん中にこの美術館があることはまちがいない。ネットで同じく長く改造工事をやっていた市立美術館の再開館時期をチェックしたら、こちらのほうは昨年の9月24日にオープンしていた。そして、改修工事のため7ヶ月間閉館していたゴッホ美は今月の25日以降に公開されるようだ。これで国立美、市立美、ゴッホ美の3つの美術館のリニューアルが終了した。

これからオランダへ出かけられる方が羨ましい。アートの街、アムステルダムに乾杯!

北フランスの新名所 ルーヴル・ランス美!

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Img     2012年12月に開館したルーヴル・ランス美

Img_0001_2     ラ・トゥールの‘マグダラのマリア’(1640~44年 ルーヴル美)

Img_0003_2     ラ・トゥールの‘マグダラのマリア’(17世紀 メトロポリタン美)

Img_0002     ラ・トゥールの‘女占い師’(1630年代 メトロポリタン美)

20日の‘美の巨人たち’はラ・トゥール(1593~1652)だった。大好きな画家だから、こうやって作品が取り上げられるのは嬉しいのだが、なぜこのタイミングでラ・トゥール?という気がしないでもない。番組をみてその疑問が解けた。

ラ・トゥールの最高傑作といわれる‘マグダラのマリア’、この絵がルーヴルにあることは知っている。ところが、今ルーヴルへ出かけてもこの名画をみることはできない。ではどこにあるのか、昨年12月、北フランスのランスにルーヴルの分館が開館し、ここにルーヴルにある絵画、彫刻などがどどっと展示されているのだそうだ。

この新しくできたルーヴル・ランス美のことはBSジャパンの‘美の浪漫紀行’(3月放送)で知り、ドラクロアの‘民衆を率いる自由の女神’などルーヴルの顔ともいうべきお宝絵画がかなり長い期間、半年?展示されていることがわかった。ラ・トゥールの‘マグダラのマリア’も出張し絵画のもうひとつの目玉作品として多くの人の目を楽しませている。

新しい美術館が誕生すると、TV局の美術番組担当は血が騒ぐのだろう。‘美の巨人たち’も‘美の浪漫紀行’も同じTV東京。で、美の巨人は‘ラ・トゥールにしようか!’ということになったのかもしれない。図星?

4点ある‘マグダラのマリア’、ロサンゼルス郡立美が所蔵するものはまだだが、ほかの3点は幸運にもみることができた。そして、3ヶ月前のアメリカ美術館めぐりでは嬉しい出会いがあった。ワシントンナショナルギャラリーにあるものは時間がなく再会できなかったが、メトロポリタン美蔵のマリアはお目当ての作品をめざしている途中に現れてくれたので少し立ち止まってみた。

番組のなかで再度対面したルーヴルの‘マグダラのマリア’、やっぱりこの絵に最も魅かれる。蝋燭の光に白く照らされるマリアの横顔と左腕、この生感覚の人物描写が心をとらえて離さない。この絵をもとめてランスへ行きたくなった。

‘マグダラのマリア’とともにお気に入りの作品が‘女占い師’、これをMETでみることを楽しみにしていたのに、08年のときと同様どこにも展示してなかった。こんな傑作なのに、コンディションに問題があり常時は展示してないのだろうか?残念でならない。

アメリカ西海岸にあるラ・トゥールがみたい!

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Img_2     ロサンゼルス郡立美

Img_0002_2     ‘マグダラのマリア’(1638~40年 ロサンゼルス郡立美)

Img_0003_2     ‘楽士たちのいさかい’(1625~30年頃 ポール・ゲッティ美)

Img_0001_2     ‘老人と老女’(1618~19年 サンフランシスコ美)

絵画の視覚体験を重ねてくると、画風のちがう作品にいろいろ出くわす。反応の仕方としてはスゴく惹かれるもの、まあー好きかな、次の鑑賞はなくていいな、これは何度見ても好きになれそうにない、だいたいこの4つに分かれる。

当たり前のことだが、美術史i家ではないので関心の対象は最初の二つに集中する。ここに入る画家はかなりの数にのぼる。幅広く絵画を楽しもうと思っているので、人気の画家だけでなく名作の数は少ないが腕のいい作家も多く含まれている。

一方、何度みても魅かれるものがないなという作家は何人かいる。その一人がベーコン、今東近美で回顧展が行われており、まだ知らない作品がありそのなかに魅かれるものがあるかもしれないとちょっと期待して出かけたが、やはりダメだった。幽霊やホラー映画に登場する不気味な怪物を連想さす顔の表現がどうしても好きになれない。で、15分で退館した。

ラ・トゥールはカラヴァッジョとともに腹の底から魅せられている画家なので、憧れの作品は追っかけ画リストの最上位に載せている。今狙っているのはアメリカの西海岸にある美術館が所蔵する作品。まだ足を踏み入れてないロサンゼルス、この大都市がNYのようにアートの街だということは十分に察しがつくのだが、交際範囲のなかにこの街の楽しみ方を教えてくれる人がいないので今のところは美術本とか旅行のガイドブックだけが頼り。

まずみたいラ・トゥールはロサンゼルス郡立美にある‘マグダラのマリア’(拙ブログ09/5/7)。マリアのポーズはルーヴルにあるものと同じ。4点ある‘マグダラのマリア’のおもしろいところはモデルの女性が皆ちがうこと。一見すると同じ女性のようにみえるが、よおーくみると別人。早くこのマリアに会いたい。

ポール・ゲッティが所蔵する‘楽士たちのいさかい’も鑑賞欲を刺激する作品(10/9/23)。この時代に生きた人々の生々しい感情のもつれが引き起こす喧嘩の様子がリアルに表現されている。傑作風俗画の一枚といえるのではなかろうか。アメリカには本当にいいラ・トゥールがある。

LAへ行くならやはりサンフランシスコにも寄りたい。サンフランシスコ美にあるのが‘老人と老女’。当面はこの3点に心を集中させたい。さて、ミューズのアシストはあるか?


ルーヴル・ランス美は日本人建築家デュオSANAAの設計!

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Img_0004_2     ルーヴル・ランス美

Img_0005_2     館内の様子

Img_0002_2     SANAA 妹島和世(左) 西沢立衛(右)

Img_0003_2     SANAA設計のニューミュージアム(NY 2007年開館)

現代建築の知識が少ないので、世界的にみて今先頭を走っている建築家が誰れなのかはまったくわからない。絵画の本は沢山あるのに建築関連の本や雑誌はほんの数冊。その雑誌に載っていた日本人建築家デュオSANAAが昨年12月にオープンしたルーヴル・ランス美を設計したという。

手元にある‘カーサブルータス 美術館ベスト100’(08年7月)の情報だとルーヴル・ランスは09年にオープンとなっているが、実際美術館ができたのは12年の暮れ。館内の様子が‘美の浪漫紀行’と‘美の巨人たち’で映しだされていたが、外から光がはいりこみ明るい展示空間となっているのが特徴。

SANAAのこうした開放的な建築が世界的に高く評価されているようだ。注目をあつめるきっかけになったのが04年に完成した金沢21世紀美。この美術館は中に入ったことはないが金沢観光したときにバスの中から外観をちらっと見た。いつか機会があったら訪問してみようと思っている。

SANAAについては知らないに等しいのだが、07年NYのソーホーにできたニューミュージアムを設計した日本人デュオということはしっかりインプットされている。この雑誌を手にして以来、この美術館はずっと気になる存在。今年1月久しぶりにMoMAを訪問し、美術館をより魅力的にみせる建築の力に強く心を打たれた。

そこで次はこのニューミュージアムへ足を運ぼうという気になっている。NYの地下鉄にこの1月はじめて乗って、今では地下鉄は安全なのだということが十分わかった。この体験でこれまで抱いてきた不安な気持ちが一気に取り除かれたので、これからはNYの街を広く動ける可能性が広がった。現代アートへぐっと近づいていきたい。

大リーグと日本のプロ野球の違い!

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Img     ダルビッシュ vs ハミルトン(エンゼルス)

大リーグ中継で今最もみられているカードはダルビッシュが投げる試合だろう。今日も期待に応えてエンゼルス打線を6回ゼロ点に抑え、4勝目をあげた。

BSが中継する大リーグは長いことイチローが主役を務めてきた。このことはイチローの打率が2年前から徐々に下がり複数安打の試合が少なくなった今でも基本的には変わってない。これはイチローが投手と違って毎試合出場する野手であることも理由のひとつ。

投手の場合、好投を続けているダルビッシュでも黒田でも岩隈でも登板の間隔は4日と決まっている。この3人はチームの先発投手陣の1番手、2番手なので登板する日が1日くらいのズレはあってもかなり重なってくる。すると、彼らが投げる試合は必ず放送したとしても、一週間でみると残り5試合はイチロー、青木らの野手が出場する試合をもってこなければいけない。

このためどうしてもイチローは外せない。が、悩ましい問題がある。それはイチローが下位の打順で先発することが多くなったので、マリナーズでプレーしていた時と比べて打席に立つ回数が少なくなったこと。すると、ヤンキースの試合とはいえイチローが1、2番で先発しない試合はソフトの価値が低下する。察するにイチローの試合を見る大リーグファンがだいぶ減ったのではなかろうか。

イチローが2番を打つのはかなり厳しい。それは大リーグの打順についての考え方が大きく影響している。大リーグでは1番から4番までを打つ選手に期待される能力が日本のプロ野球とは違っている。日本と違ってバントで送る戦法はポストシーズンのようなビッグゲームでは採用されてもレギュラーシーズンはほとんどやらない。そして、意外と思われるかもしれないが盗塁ができる足の速い選手は限られているので1,2番を打つ選手は盗塁ができなくても構わない。

1、2番に求められているのはヒットを打ち、あるいは四球を選び出塁すること。とにかく塁にでて3番の最強バッターのお膳だけをする。これが役目。日本では4番が打の中心だが、大リーグでは3番に一番いい選手をもってくる。

例えば、ヤンキースではカノー、タイガースだと昨年三冠王に輝いたカブレラ、エンゼルスはプーポールズか今年レンジャーズから移籍したハミルトン、そしてナリーグだと青木のいるブリュワーズのブラウン、ジャイアンツのサンドバル、ブリュージェイズのバチースタ、、

3番にロングを打てる選手が入っているので、1,2番がランナーででたときリスクのある盗塁で2塁を狙う必要があまりない。1塁にいれば2塁打がでればホームに帰ってこれるので強いチームはせかせかした野球をしない。これがヤンキースの点のとりかた。だからイチローの足は軽くみられる。

そのうえイチローは四球を選ばないバッター、つまり2番に求められる出塁率に達してないと首脳陣からはみられている。となると、打率を3割に上げないと2番定着は難しい。そのうち、長打力のあるアンダーソンやタシエラが復帰してくるとその可能性はますます低くなる。

ヤンキースの試合を気分よくみれるのはどうも黒田が投げるときだけのような気がしてきた。

‘狩野山楽・山雪展’をとりあげない美術番組!

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月末になるとひとつ楽しみがある。それはTVの番組雑誌で翌月に放送される美術番組の情報がわかるから。いつも買っているのは‘TVTaro’、来月号を早速みてみた。

まず、地上波をチェックして、つぎにBSに目をやる。注目したのは今月の10日にみた‘狩野山楽・山雪展’(京博 3/30~5/12)と‘ラファエロ展’(西洋美 3/2~6/2)関連の番組。このビッグな展覧会は3月、4月には日曜美術館でも美の巨人たちでもとりあげられてない。

もし日曜美、巨人たちがこの展覧会を無視したら制作スタッフのレベルは以前と比べて相当低下しているとみざるをえなかった。果たして、31日分をざあっとみると評価はかろうじて半分の低下にとどまった。山楽・山雪はとりあげないが、ラファエロはどちらも特集する。

★美の巨人たち ‘ラファエロ 大公の聖母’ 5/11
★日曜美術館  ‘ラファエロ ルネサンスの革命児’ 5/12

山楽山雪展の展示期間はわずか39日、だから番組でとりあげる場合は4月の中旬までに放送しないと意味がない。スタッフにこれをとりあげようという強い気持ちがあれば、番組は当たり前のことだができあがる。放送しないということは山楽山雪を評価してないということ。

この方針をみてダメだなと思うのは日曜美、曽我蕭白、伊藤若冲をご熱心に特集するのであれば、この二人と同じくらいあるいはそれ以上の大きな才能をもった山雪にフォーカスしないでどうする、と大きな声でいいたい。出品作は海外の里帰り作品も含めて傑作揃い、また山楽山雪に光をあてた土井次義氏の立派な研究成果も合わせて展示してある。

こんな素晴らしい展覧会がやっと日の目をみたのだから、日本美術史の流れのなかで山雪の絵画世界はどこにポジションするのがいいか、果敢にチャレンジするのが美術番組に携わる者の心意気というもの。また、美術史家もあきれるほど行動が鈍い。蕭白や若冲の話に顔を出してステータスを誇示する受け狙いのコメントばかり、そんなことはもう知っているよ、‘奇想’ぼけにならないでね、といつもうんざりしながらみている。

それにしても、日本美術史家の世界は人材が薄い。山雪ワールドをいつブレイクさせるのか?‘今でしょう’!

アートに乾杯! ろうそくの炎の美学

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Img     ラ・トゥールの‘大工の聖ヨセフ’(1640年 ルーヴル美)

Img_0002     エル・グレコの‘ろうそくの火を吹く少年’(1570~75年 カポディモンテ美)

Img_0004     ルーベンスの‘ろうそくを持つ老婆と少年’(1616年 マウリッツハイス美)

Img_0003     ホントホルストの‘大祭司の前のキリスト’(1617年 ナショナルギャラリー)

先週の‘美の巨人たち’でとりあげられたラ・トゥール(1593~1652)が3日前の‘世界の名画’(BS朝日)にも登場した。みる前はこの番組でもルーヴル・ランス美に出かけたのかなと思っていたが、これは予想がはずれルーヴル本館に展示してある‘大工の聖ヨセフ’に焦点をあてたものだった。

この絵をはじめてみたのがいつだったか記憶がだんだん薄れてきているのに、絵から受けた感動はずっと体の中に残っている。とくに印象深いのが少年イエスの手がろうそくの炎で透けてみえること。このリアルな表現に200%体が震えた。そして、その光があたって白く光るヨセフの額にも目が点になる。この絵を見た人は誰もがラ・トゥールの虜になるにちがいない。

‘ろうそくの火を持つ少年’を描いた画家があの細長い人体描写のイメージがこびりついているエル・グレコ(1541~1614)だというのが今もって謎。この絵だけをみるとエル・グレコはラ・トゥールとろうそくの光の画家としてペアを組んで絵画選手権に出場できる。幸運にもこの絵とは4、5年前ナポリではなく日本で対面することができた。そして、今年は別ヴァージョンに東京都美で開催された‘エル・グレコ展’でお目にかかった。

ルーベンス(1577~1640)の絵を知ったのは2011年12月のこと。マウリッツハイスでラ・トゥールのようなろうそくの光に浮かび上がる人物に会うとはまったく想定外だったので、その衝撃はマグニチュード7クラスだった。そして、思った。ルーベンスだって光の画家、ただこういう絵より動きの激しい人物を劇的に表現した歴史画のほうに注文が殺到したため、王の宮殿や貴族の館に飾る大作の制作に没頭したのだと。

ラ・トゥールもホントホルスト(1592~1656)もカラバッジョ(1571~1610)から大きな影響を受けた。ホントホルストの‘大祭司の前のキリスト’で描かれたろうそくの炎も強く目に焼きついている。この絵は見方によってはラトゥールの‘大工の聖ヨセフ’とつながっている作品ともいえる。ここではろうそくの光が成長したイエスを明るく照らしている。

YouTubeの楽しみあれこれ!

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新しいPCを使って3ヶ月が経とうとしている。購入したのはWindows8に対応した富士通のESPRIMOというデスクトップの機種。朝起きてから寝るまでPCの前に結構長い時間いる。以前も富士通のものだったが、新しいものに替わって楽しさが増えたことも多い。その一つがTouTube、今日はその話を。

液晶ディスプレイの画質がよくなったので以前よりYouTubeがぐんと楽しめる。見ているのは音楽の映像が多く、いい映像が見つかるとお気に入りにどんどんほおり込んでいる。このところ頻繁に聴いているのがエレイン・ペイジが歌う♪♪‘レ・ミゼラブル 夢やぶれて’

この曲はあのシンデレラおばさんスーザンボイルが歌って会場の人々、審査員から大喝采をうけた曲。3年前、この動画を繰り返し々みてとてもいい気持になったが、最近は見なくなっていた。それがなにかの拍子で現われ久しぶりに映像と歌に釘づけになった。

そのあと、ほかの歌手が歌う‘夢やぶれて’をいろいろ聴いてみた。そのなかにスーザンボイルが将来なりたい歌手といっていたエレイン・ペイジがあった。動画でみるのははじめてだが、NHKでスーザンボイルと共演した番組をみたことがあるので、その実力はわかっている。

だから、いくつかある彼女の動画をむさぼり聴いた。‘夢やぶれて’、‘メモリー’、‘アルゼンチンよ泣かないで’、こんなに上手な歌いっぷりならもっと早くアクセスすべきだった!今の姿は画像にでている顔とはちがってだいぶ歳をとり貫禄のある歌い方になっているが、声の衰えまったくなく本当に上手い!

動画はTVとはちがい画像が小さいけれど、これでも十分に楽しめる。アクセス回数の多いものは画像の質もよく音もクリアでボリュームを上げなくても聞こえる。なによりいいのはタッチひとつでまた聴けたりほかの動画に移れること。昔のビデオ再生と比べればそのスピードは雲泥の差。

YouTubeのことが全部頭に入ってないので時々困ることがある。お気に入りにあったものが突然消去されてしまうこと。これは版権の関係でNGだったということなのだろうが、これがダメなのにあれはOKなの?というものもある。このあたりはよくわからない。

先日、思い立って小田和正の動画をお気に入りにとりこもうとしたが、どういうわけか望むようなものはひとつもなかった。どれも画質の悪い古いものばかり。井上陽水は好きな‘ホテルはリバーサイドなどいくつもあるのに小田和正はどうしてないのだろうか?残念でならない。

木梨憲武が案内するMoMA!

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Img         ニューヨークのMoMA

Img_0001     MoMAのミュージアムショップ

Img_0002      ソーホー地区にあるマーチン・ローレンス・ギャラリー

Img_0003     ブルックリンにアトリエを構える松山智一

昨日夜放送されたBS朝日の番組でニューヨークに出かけたとんねるずの木梨憲武がMoMAやソーホーやチェルシー地区にあるギャラリーを案内していた。この1月にNYへ行ったばかりなので、デジャブ感覚でみた。

この番組が制作されたのが3月なのか4月なのかわからないが、MoMAに展示されていた作品が1月にみたものと一部ちがっていたからそれ以降であることは確か。感想記でもとりあげたムンクの‘叫び’(拙ブログ3/24)がまだ飾ってあった。われわれ同様この絵をみられた‘徒然なるままに’さんによると落札したコレクターはMoMAの理事の一人らしい。それで、こういう展示が実現したというわけ。納得!申し訳ないが、いつまで公開しているのかメモし忘れた。

MoMAのミュージアムショップはほかとは一味ちがうという感じでデザインセンスのいい記念グッズがいろいろ揃っている。今回は時間の関係でじっくりみれなかったので、次回の訪問ではショップ担当のディレクターが推奨していたものなどを検討してみたい。

知らなかったのだが、木梨憲武は現代アートを制作しており何年か前から個展を開いていた。今年は4/27から京都駅の伊勢丹ミュージアムで行われている。番組のなかで過去に描いた作品がでてきたが、なかなかやるじゃない、という感じだった。絵の才能もあるんだ、スゴイね!

MoMAのあと憲武が出かけたところでありがたかった情報がソーホーやチェルシー地区にあるギャラリー。最初にでてきたソーホーのマーチン・ローレンス・ギャラリーにはウォーホルや村上隆の作品がぞろぞろでてきた。そして、ギャラリーの外からみえるシャガールはなんと3億円!これは楽しそう。ここはソーホーにあるギャラリーのトップにちがいない。NYのギャラリー巡りをするぞ、という気にだんだんなってきた。

今若手アーチストが多く集まっているのがチェルシーより地価が安いブルックリン、ここで制作している松山智一が登場した。25歳のころから住んでいるらしいが、今30代後半?名前はまったく知らなかったが注目を集めている作家らしく、有名なコレクターにも購入されているとか。作品の一部をみて本物をみたくなった。ひょっとすると村上隆、奈良美智、束芋に次ぐ4人目のお気に入りアーティストになるかもしれない。

ガゴーシアンギャラリーのバスキア展!

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Img_2    バスキア展を開催したガゴーシアンギャラリー

Img_0001_2     ‘王冠’(1981年)

Img_0003_2     ‘イタリアン’(1983年)

Img_0002_2     ‘死神’(1988年)

木梨憲武のNY、現代アートめぐりにバスキア展がでてきた。28歳で亡くなったバスキア(1960~1988)、どんな作風かは少しだけ知っている。スプレー缶で描くグラフィティ(落書き)から絵の創作がはじまったから、色がとても明るいのが特徴、そして人物の描き方は劇画的ではなく小学生が描くように平板で厚みがない、骸骨がよく登場する。

これがバスキアのイメージ。この個展(2/4~4/6)を開催したのは村上隆が所属しているガゴーシアンギャラリー。NYをあちことまわった体験がないので所在地980 Madison Avenueをみてもどのあたりかすぐイメージできない。番組でみるとギャラリー内はすごく広い感じ。

東京でギャラリーをまわることはほとんどない、だから日本にあるギャラリーには縁がないし、ましてやNYのギャラリーのことなどひとかけらの情報もない。ネットでみたらガゴーシアンギャラリーは今世界NO.1のギャラリーだった!ロンドンや香港にも支店がある。村上隆はこのギャラリーの所属、バスキア展のようにここで個展が開かれ、評価が一気に高まったという。作品が高値で売れるはずである。

バスキア展は4/5に終了していたから、憲武がNYにいたのは3月かもしれない。憲武はバスキアが好きらしい。作品の前では楽しくて仕方がないという感じ。作品の数は50点くらいでていたようだが、入場は無料。ここのギャラリーはいつもお金をとらないのだろうか?お金を払わなくてこういうビッグなアーティストの個展がみれるのなら、ギャラリーめぐりもブランド美術館と同じようにお楽しみスポットになるかもしれない。ますます興味がわいてきた。

バスキアはドラッグの影響で1988年に亡くなったが、その7日前に描いたのが最後の絵。西洋絵画に描かれたテーマ‘メメントモリ(死を忘れるな!)’が瞬時に頭をかすめた。


祝 富士山 世界遺産へ登録!

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Img_0005_2             長沢蘆雪の‘富士越鶴図’(1794年)

Img_0001_2     与謝蕪村の‘富岳列松図’(部分 重文 18世紀 愛知県美)

Img_0002_2     池大雅の‘夏雲霊峰図屏風’(1772~77年 島根 八雲本陣記念財団)

Img_0008_2 曽我蕭白の‘富士・三保松原図屏風’(部分 1762年 パワーズコレクション)

今日は嬉しいニュースがとびこんできた。富士山が世界文化遺産として来月登録されることになった。拍手々!国内の世界遺産は2年前に平泉が選ばれたがこれで13件目。大変めでたいことなので、富士山を描いた名画をとりあげることにした。まずは江戸絵画から。

江戸時代に活躍した絵師たちが描いた富士山で最も気に入っているのが長沢蘆雪(1754~1799)の‘富士越鶴図’。これをはじめてみたとき、体が熱くなった。富士山の中腹から鶴の群れが隊列を組んでこちらに飛んでくる。富士山だけならそれほど立体感を感じないのに、こういう風に大勢の鶴が前との間隔をあけずにグライダー飛行のようにゆるくカーブしてくると、雄大なスケールの富士の存在感がいっそう増し、そのリアルな量感がぐっと迫ってくる。

与謝蕪村(1716~1783)の富士も目に焼きついている。目を奪われるのが富士の白さ。まさに雪一色の富士といった感じ。画面が極端に横に長く、天地の半分は沢山の松の木で占められている。濃い墨で勢いよく描かれた松林が横に連続し、そのむこうに安定感のいい富士が白く輝いている。この富士にもう一度会いたい。

よく旅にでた池大雅(1723~1776)は富士山にも登っており、富士を何点も描いている。島根の八雲本陣記念財団が所蔵する‘夏雲霊峰図’は長いこと追っかけているが、なかなか縁がない。先月京都で狩野山楽・山雪展をみたので、今残っているビッグネームの回顧展は池大雅だけになった。京博を訪問するときはアンケートに山楽山雪展と一緒に池大雅展も書き添えていた。ひとつは夢が叶った、池大雅についても帆を高くかかげておきたい。あとはいい風が吹くのを待つばかり。

曽我蕭白(1730~1781)の‘富士・三保松原図屏風’は大作でアメリカのデンバーにあるパワーズコレクションが所蔵している。2005年にあった回顧展(京博)で遭遇し、かたずを呑んでみていた。蘆雪、蕪村、蕭白の富士がベスト3だが、ほかでは(浮世絵は除く)谷文晁にいいのがある。今年はサントリー美で‘谷文晁展’(7/3~8/25)があるから、また会えるかもしれない。

日本画家の描いた富士!

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Img_0001_2     横山大観の‘霊峰飛鶴’(1953年 横山大観記念館)

Img_2     福王寺法林の‘朝富士’(2007年)

Img_0002_2     横山操の‘赤富士’(水野美)

Img_0003_2     片岡球子の‘春の富士(梅)’(1988年 茨城県美)

日本画家で富士山を多く描いた画家というと、3人の名前がすぐでてくる。横山大観(1868~1958)、横山操(1920~1973)、そして片岡球子(1905~2008)。では、風景画家の代名詞みたいな東山魁夷は富士山を描いているか、描いていることは描いているが少ない。これまで見たのは3点のみ。

富士山に魅せられ続けている画家もいれば、富士山が特別なモチーフになっていない画家もいる。画家の好みもそれぞれ。大観の富士をこれまでどれくらいみたか数えたことはないが、沢山お目にかかったということは間違いない。だから、お気に入りの1点はすっとは決まらない。今回は蘆雪の絵と対照させるために‘霊峰飛鶴’を選んだ。

この絵を上野の不忍池の近くにある横山大観記念館でみたのはもうずいぶん前のこと。まだ一度しか対面してないが、画面いっぱいに富士を描く場合、周りに雲をたちこませることが多いのに対し、この絵は鶴の群れが前方を横切っていく構成になっているので強く心に刻まれている。

鶴の群れの配置を大観はいろいろ考えたはず、美しい富士の姿を引き立てるにはどういう飛翔のリズムがいいか。これは富士の表情をどう感じるかによって左右される。左の鶴たちが上昇し曲線をつくることで角ばってみえる富士山のイメージが和らぎ山全体が神々しくそびえている感じに仕上がっている。

6年前に描かれた福王寺法林(1920~2012)はとても印象深い作品。目の覚めるような赤で描かれた富士が背景の金地と斜めに流れる金の線にはさまれて浮き上がっている。ヒマラヤの画家として広く世に知られた福王寺法林は昨年2月91歳で人生に幕を下ろした。この富士の絵をみれたのは幸運だった。

横山操の富士も心に沁みる一枚。赤富士と雪の富士があり、白の富士では夜の静寂さに体がフリーズししんみりモードに陥る。赤富士はこの静寂さだけでなく霊峰富士の魂に体がつつまれる。ここには荒々しい自然の不条理さをみせつける富士の別の表情がある。

103歳まで生きた片岡球子は生命力あふれる富士山を沢山描いた。明るい色使いで富士の輪郭が太い線で形どられる。立体的ではなくマティスの切り紙絵のようにモザイク画的な富士、これほど元気をもらう富士はない。色彩の組み合わせがいいので何度みても感激する。

共演 洋画家の富士!

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Img_0002_3     五姓田義松の‘清水富士’(1881年 東京都現美)

Img_0001_3         梅原龍三郎の‘朝陽’(1945~47年 大原美)

Img_0005_3     林武の‘富士’(1965年)

Img_0008_2     絹谷幸二の‘富嶽曙’(2002年)

昨年のちょうど今頃東芸大美で‘高橋由一展’があった。この回顧展のおかげで高橋由一の画業の全貌を知ることができた。代表作の大半は目のなかにおさまったと思うのだが、一部はほかの美術館(山形美、京近美)での展示のためみれなかった。

そのなかに富士を描いたものがあった。‘本牧海岸’(香川の金刀比羅宮の所蔵)。由一は政府から1872年にウイーンで開催された万国博覧会に出品する作品の制作を依頼され‘富嶽大図’を描いたが、この絵は第二次世界大戦中、失われた。

五姓田義松(ごせだよしまつ 1855~1915)の‘清水富士’は1882年の第2回内国勧業博覧会で洋画の最高賞を獲得した作品。これを6年前神奈川県美葉山館であった展覧会でみたときは美しい富士にみとれてしまった。どこかの美術館が世界遺産登録を記念して‘大富士山展’を企画してくれたら、再会できる可能性があるのだが、果たして?

富士山を描いた洋画家で思い浮かぶのはまず梅原龍三郎(1888~1986)、次が林武(1896~1975)、そして絹谷幸二(1943~)。といっても、みている作品の数はせいぜい片手くらいで10も20も体験しているわけではない。林武はまだ回顧展に縁がなく、梅原龍三郎だって日本橋三越で06年にあったものだけ。東近美が梅原の大回顧展をやってくれないかとずっと願っているのだが、なかなか実現しない。そのときは‘朝陽’のほかにも画集に載っている富士の絵がずらっと並ぶだろう。

フォーヴィスムの強烈な色彩で描かれた林武の富士に大変魅了されている。縦長の富士は下の広々とした裾野から頂上をめざして一歩一歩登っていくような気分。赤い富士は希望の光の象徴のようにみえる。

今年70歳をむかえた絹谷幸二、世の中に大勢いる熱狂的な絹谷ファンほど作品をみていないが、鮮やかな赤や青、ゴールドで彩られた陽気で目の大きな人物や仏像に昔から強く惹かれてきた。過去2回あった回顧展でお話をする機会があったが、笑顔を絶やさない気さくな人柄なので会話がはずんだ。お気に入りの富士は02年に制作されたもの。またみたくなった。

クイズ 広重の‘東海道五十三次’に富士は何回でてくる?

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Img_2     葛飾北斎の‘富嶽三十六景 神奈川沖浪裏’(1831年)

Img_0002_2     歌川広重の‘東海道五捨三次之内 原 朝之富士’(1833年)

Img_0001_2     渓斎英泉の‘江戸日本橋ヨリ富士ヲ見ル図’(1830~37年)

Img_0003_2     棟方志功の‘富嶽頌 赤富士の柵’(1965年)

絵画に描かれた富士で日本人に最も親しまれているのはやはり葛飾北斎(1760~1849)の‘富嶽三十六景’ではなかろうか。与謝蕪村や梅原龍三郎の描いた富士は教科書でお目にかかることはないが、北斎の富士は必ず載っている。だから、富士の絵というと北斎の浮世絵を思い浮かべる人が多いはず。

‘富嶽三十六景’に描かれた富士は全部で46枚、文字通り富士尽し。富士を連作にして売り出そうというアイデアは誰が思いついたのだろうか?シリーズものは当たると安定した売り上げが確保できる。いつの世にも商売上手がいる。後に印象派のモネはこれにヒントを得て積みわらや睡蓮などの連作を精力的に制作していく。

46枚の富士のうち雄大なスケールで描かれたのは‘凱風快晴’など3点だけ、そのほかは遠くに小さく描かれたり、樽の中に入ったりと手前に大きく描かれた人物や木々などのモチーフの引き立て役として描かれている。でも、富士がなくては絵は成立しない。富士があるから職人の仕事や旅人の姿は生き生きしてくる。で、本当の主役は題名の通り富士山だったのか、となる。

傑作‘神奈川沖浪裏’は浮世絵の代名詞、日本人の誰もがダ・ヴィンチの‘モナリザ’を知っているように、多くの欧米人がこの絵に魅了されている。だから、この絵はまさに世界の美術史におけるお宝、そしてそこに描かれた富士が今度世界遺産になった。波のお化けを思わせる波濤と美しい富士、一度みたら忘れられないこの絵の人気が一段と高まるにちがいない。

さて、タイトルのクイズの答えは次のどれ? A15点 B7点 C3点、正解はBでした!歌川広重(1797~1858)の‘東海道五捨三次之内’シリーズは55点、だから富士の絵は1割強。そのなかで最も大きく富士を描いているのが‘原 朝之富士’。おもしろいのが頂が枠の外にはみ出してるところ。ちょっと頭をのばしてみるか!という感じだが、これで山の立体感がいっそうでてくるのだから絵のマジックをみているよう。

渓斎英泉(1791~1848)の風景画にも富士山がでてくる。この日本橋からながめた富士は構図がとてもいい。手前が魚河岸、富士と魚河岸に挟まれる日本橋、ゆるやかにカーブを描くフォルムの橋の上にどーんと三角構図の富士。こういう風景画らしい作品は簡単に描けそうだが、じつはその逆、なかなか描けない。

棟方志功(1903~1975)の‘赤富士の柵’は草野心平の詩を絵画にしたもの。志功がアメリカに4ヶ月滞在しているとき描かれた。富士山の生命力がこれほど真に迫ってくるのは志功の情熱が霊峰富士の魂と一体化しているからだろう。志功の作品では心を揺すぶる一枚。

予想どおりにお宝の山 国宝‘大神社展’!

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Img_0004     国宝‘橘蒔絵手箱’(南北朝時代 14世紀 和歌山・熊野速玉大社)

Img  国宝‘沃懸地螺鈿金銅装神輿’(平安時代 12世紀 和歌山・鞆淵八幡神社)

Img_0001     国宝‘女神坐像’(平安時代 9世紀 京都・東寺)

Img_0002     国宝‘家津美御子大神坐像’(平安時代 9~10世紀 熊野速玉大社)

東博で今開かれている‘国宝 大神社展’(4/9~6/2)は予想どおりに国宝が続々登場する。国宝の追っかけをライフワークにしているから、こういう展覧会はじつに有難い。お蔭でリストに載せていた国宝のかなりの数に鑑賞済みマークがついた。

一度訪問したことのある熊野速玉大社、宝物館でお宝をみたが、それらはほんの一部。国宝の数は多く、全部みようとすると一生かかる感じ。蒔絵手箱は過去にみたことのある‘桐蒔絵’と初見の‘橘蒔絵’、蒔絵を楽しくみるにはひとつコツがある。それは蒔絵の前ではつま先立ちをしたりして視線を上下左右に動かすこと。そうすると光に反射した螺鈿のうすピンクや緑の輝きに酔いしれることができる。図録にでている‘唐花唐草蒔絵’もみたかったが、これは九博のみの展示。まだまだ追っかけは続く。

今回一番の収穫は鞆淵八幡神社にある‘沃懸地螺鈿金銅装神輿’がみれたこと。こういうお宝神輿をみる機会は滅多にないから、目をかっと開きぐるぐるまわりながらみた。装飾で気を惹くのがいくつもある円い鏡板。鏡をこれほど興味深くみたのははじめてかもしれない。

神像はこれまで2回くらい展覧会でお目にかかった。そのなかで強く印象に残っているのが今回も出品されている松尾大社蔵の‘女神坐像’。その長くのびたおかっぱ髪が目に焼きついている。再会して目が寄っていくのはやはり黒髪。これに対し男神はさらさらとながめて終わり。

女神像のほうに目がいくなかで大変惹きつけられたのが東寺からお出ましいただいた‘女神坐像’。みごたえのある大きな坐像。こういうものが東寺にあったことをすっかり忘れていたが、その魅力は松尾大社のものと勝るとも劣らない。図録にはもう1点、熊野速玉大社にある‘熊野夫須美大神坐像’(九博展示)が載っている。どうやら女神像はこの3点がベスト3のような気がする。

男神像は‘家津美御子大神坐像’が群をぬいていい。造形的にみると顔は目も鼻も大きく男っぽいのに下の足の部分がこじんまりとしておりやさしい感じ。そして、横からみると奥行きもあまりない。

展覧会の会期は前期が明日5/6までで、後期は5/8~6/2。待望の‘北野天神縁起絵巻’が後期に登場するのでもう一回楽しむつもり。

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