バーナード・リーチの‘ガレナ釉櫛描柳文楕円皿’(日本民藝館)
鵜飼いの光景を描いた画家ですぐ思い浮かぶのは川合玉堂と前田青邨、日本画ではよく描かれるモチーフを須田国太郎(1891~1961)も描いている。でも、ここには鵜匠はおらず鵜たちは羽をひろげて漁の前のウオーミングアップの真っ最中。
須田の絵にしては珍しく画面は光にあふれている。ところが、手前の鵜の群れのところは黒い影になっている。そのため、鵜の姿がシルエットとなって目に強く残る。この絵のように遠くの風景を背景にして描きたいモチーフを手前に大きくぽんと置くやりかたはロマン派のドラクロアやデ・キリコにもみられる。須田は2人の作品が刺激になったのかもしれない。
京都の友禅染職人の家に生まれた山口華楊(1899~1984)は動物の絵を得意とした日本画家、狐とか馬などがあるが、かなりクローズアップで描かれた‘白い馬’は大きいぶん馬の実感が伝わってきて親しみを覚える。馬の絵といえば坂本繁二郎の代名詞だが、好みは華楊のほう。
10年くらい前、東北旅行をしたとき十和田湖へ行った。散策した湖畔にあったのがあの有名な高村光太郎(1883~1956)の‘乙女像’、旅行が楽しいのはこういう歴史的な芸術品と遭遇するから。これが美術の本に載っていた乙女像か!という感じ、折角だから2回まわり前から後ろからみた。
最近は日本民藝館へ足を運ぶことがなくなったが、以前はよく通いバーナード・リーチ(1887~1979)や濱田庄司、河井寛次郎のやきものを心ゆくまで楽しんだ。リーチの‘ガレナ釉櫛描柳文楕円皿’はお気に入りのイッピン。びっくりするほどシンプルに表現された柳、この柳のイメージをうまくとらえる造形感覚はまさに天才的。ピーナッツの殻みたいな皿の形との親和性がとてもよく机の上において毎日ながめていたくなる。