現在、東近美では安田靫彦展(3/23~5/15)が開催されている。近代日本画を代表する画家たちのすばらしい回顧展を毎年続けている東近美、その企画力と作品を集めてくるブランド力をぐっとみせだしたのは2010年から、この年春に小野竹喬展をやり、秋には上村松園展の大ホームランをかっとばした。
2度目の小野竹喬(1889~1979)の回顧展は心を打つ名画がずらっと並んだ。そのなかで長く絵の前にいたのが‘奥入瀬の渓流’、奥入瀬に出かけられた方ならみんな同じことを思うにちがいない。近かったら毎年でも行きたいと。そのくらいこの川の水の流れは心に響く。竹喬が胡粉をたっぷり使って描いた速くリズミカルに流れていく水の描写はそんな気持ちを増幅させてくれる。
山梨県出身の画家、近藤浩一路(1884~1962)の代表作が‘雨後’、光を水墨画のなかに取り込んだ独特の画風は一見すると写真ではないかと錯覚する。この絵の魅力は広い水田で働く農夫たちの姿を地上から視線をすこしばかり上げたところから描き自然につつまれて営む人間の行いをとても象徴的に表現しているところ。
濱田庄司(1894~1978)のやきものをみるとき一番の楽しみが大皿や大鉢。回顧展にはいつも4,5点でてくる。どれも絵付けは一瞬のパフォーマンス、流描、びよーっと曲線を描いたり、一気に上から下に力強い線を引いてみたり、これを濱田は‘15秒プラス60年’の技といっている。15秒しかかからないが、ここまでくるのに60年かかっているという気持ちをこめている。
北大路魯山人(1884~1959)の‘金彩雲錦鉢’は尾形乾山の作品を彷彿とさせる。違いは鉢の大きさ。乾山のものはこれほど大きくない。また、魯山人は楓の花びらの数を減らして一枚々を大きめに描いている。乾山と魯山人のコラボはじつに愉快。