カラヴァッジョ(1571~1610)の絵画が心にぐさっときた人はローマでカラヴァッジョと会うことを強く夢みるにちがいない。展示室の一角に世界で出会えるカラヴァッジョ作品の案内図が掲げられていた。多くの作品がみれるのはローマ。
ここにあげた4点も普段はローマの美術館に展示されているもの。‘洗礼者聖ヨハネ’は2010年の大回顧展ではじめてお目にかかった。この年の1月にもローマを訪問しており、この絵をみるためコルシーニ宮へ出かけた。ところが、ガイドブックに誤りがあってその日は休館日だった。ガックリきたがこういうことはよくあるので気持ちを切りかえた。
そのリカバリーが予想以上に早かった。運よく5月のカラヴァッジョ展に出品されたので隣に飾られたアメリカのネルソン=アトキンズ美が所蔵する同名の作品と交互にみていた。感心させられるのは若い男の肌が本当に生のままに感じられること。このリアリズムを生み出す突き抜けた技術を神は選ばれた一握りの画家にしか与えない。
ボルゲーゼ美にはカラヴァッジョがなんと6点もある。そのうち2点が2001年日本ではじめて開かれたカラヴァッジョ展に出品された。‘果物籠を持つ少年’がそのときの一枚で今回再来日した。籠の中の果物で思わず手を伸ばしたくなるのがリンゴ。まさに本物のリンゴそのもの。カラヴァッジョの静物画に魅了され続けている。
バルベリーニ宮にある‘ナルキッソス’も2001年にやって来た。ギリシャ神話にでてくるお馴染みの話を聞くだけだとナルシストのイメージは頭のなかにとどまっているが、カラヴァッジョの絵をみるとナルシストの気分というものがゾクッとするほど伝わってくる。
カラヴァッジョの描いた‘女占い師’はルーヴルとローマのカピトリーノ絵画館にある。この絵に刺激を受けてラ・トゥールは同名のタイトルのついた作品や‘クラブのエースを持ついかさま師’を描き上げた。このカラヴァッジョとラ・トゥールのコラボに思いをはせるといつもワクワクし‘風俗画万歳!’と心のなかで叫んでしまう。