竹内栖鳳(1864~1942)の最晩年の作‘春雪’に大変魅了されている。この鴉の絵と出会ったのは2013年に開催された回顧展(東近美)、いい絵をみたときの感動というのは情報がまったくない場合のほうが大きい。この絵は画集に載っていないので立ち尽くしてみていた。
そして、すぐ2枚の絵が思い起こされた。ひとつは与謝蕪村の傑作‘鳶・鴉図’(重文 北村美)、もうひとつは雪の積もった木の枝に一羽のキジバトがとまっている光景を描いた東山魁夷の‘白い朝’、この3点をみていると淋しい気持ちがこみあげてくる。鳥の姿はそのまま人間の心情におきかわる。
最近は展覧会で福田平八郎(1892~1974)の作品をみる機会が少ないので、ときどき画集をひろげてその豊かな色彩感覚と装飾的な画風を楽しんでいる。平八郎は京都を拠点にして作品を創作した画家なので京近美にはいい絵がおさまっている。‘THE 現代琳派’のイメージが強くでた‘花菖蒲’とこの‘竹’、宗達や光琳がこの絵をみたら裸足で逃げるかもしれない。
出光美に平櫛田中(1872~1979)のとてもおもしろい彫刻がある。諺の‘瓢箪から駒’で知られる‘張果像’、張果は唐代の道士で八仙のひとり、手にもつ紐のかかった瓢箪の口から出ようとしているのは白い驢馬、彫刻のいいところは張果が行う魔術を今まさにみている気分になれること。話は本を読むより立体造形のほうがすぐのみこめる。