近代に活躍した陶芸家のなかにはやきものの美を強く意識するタイプがいる一方、あまり気取らず土とむかいあい作陶にはげむ職人肌タイプもいる。板谷波山とか富本憲吉(1886~1963)は前者の陶芸家で濱田庄司は後者、濱田は自分のことを陶芸家とはいわず陶工といっていた。
富本の作品が心に響くのは器体に描かれたモダンで洒落た文様があるため、一目見て欲しくてたまらなくなったのが‘色絵飾筥’、まずこういう黄色の色が前面にでたやきものはなかなかお目にかからない。飾筥のサイドはイスラム美術風の模様がリズミカルに連続しているが六角形の表面は現代感覚で絵付けされた九谷焼のイメージ。
北大路魯山人(1883~1959)はこのところご無沙汰しているが、たしか今年はどこかの美術館で回顧展が行われる。メモするのを忘れたがそのうち情報が流れてくるだろう。‘色絵椿文大鉢’は2009年日本橋高島屋で開催された没後50年記念展で遭遇し、強く印象に残っている作品。
魯山人の絵付けはモチーフを大きくのびのびと描くのが特徴。ここでは椿の緑の葉と赤や白、橙の花びらがどーんどーんと描かれている。ラフな造形だがそれがかえって椿に明るさと生気を与えている。
何年か前、松本竣介(1912~1948)の回顧展が横浜美か?神奈川県近美?であったが、気にかけていながら見逃してしまった。‘橋(東京駅裏)’は橋の電柱やら建物の煙突など垂直にのびる黒の線がいくつもあるため水平に横たわる橋の存在が強く意識させられる。どこにでもある街の光景だが、暗い色調と縦の線と横の線をからませる構成により橋の表情がちょっと気になる感じになっている。