1931年竹久夢二(1884~1934)は念願の外遊がかない6月横浜港よりアメリカに旅立った。そして翌年の9月にアメリカからヨーロッパへ渡った。ヨーロッパでは滞在した10カ月の半分をベルリンで過ごした。
現在、本郷の竹久夢二美にある‘水竹居’は夢二がベルリンにいたとき描かれたもの。この年1月30日、ヒトラーが政権の座につき首都ベルリンは熱気にあふれかえっていた。絵のモデルは夢二のガールフレンド。夢二式美人になると日本人でもドイツ人でもあまり変わりがないような感じだが、足を組み座っているところや胸が大きいので現地の女性。
‘水竹居’は清流と竹林のある書室のことで中国の故事ではこれが文人墨客にとって理想的なの住まい。竹の描写をみると夢二の水墨の腕もたいしたもの。この絵はライン川のほとりの街に住むコレクターが所蔵していたが、今は竹久夢二美におさまっている。
中村岳陵(1890~1969)の都会で働く女性を描いた‘女給’はお気に入りの作品。風俗画が好きなので当時の空気や香りを運んでくれるこういう作品には敏感に反応する。ほかに女店員、レビューガール、チンドンや、奇術師、エレベーターガール、看護婦がある。
そのなかで思わず足がとまるのが‘女給’、後ろをふりむいてみているのは熱くなっている男女のシルエット、女給はどんな気持ちでみているのだろうか、‘今このカクテルをもっていくのはやめたほうがいいかな、お客さんはお楽しみ中なので、羨ましいな’、それとも、‘あーあ、嫌ねぇ、ここは個室じぁないんだから、あまり大胆なことは遠慮してよね’と感情的になっているのか。
橋本関雪(1883~1945)には猿とともに馬にもいい絵が多い。‘進馬’は岩崎家の依頼で昭和天皇御即位奉祝品屏風として描かれた。存在感のある3頭の馬が進んでいく様子が横からの姿でとらえられている。大きな絵で目の前に本物の馬がおり首をたれたりいなないたりしているよう。