日本へ帰る日の午前中は自由行動、月曜日は多くの美術館が閉まっているが、グッゲンハイム美はやっているので10時の開館にあわせてホテルを出た。前来たのは20年前だから、覚えているのは巨大なカタツムリを思わせる外観だけ、館内のレイアウトについてはまったく記憶にない。
ドアが開き意気込んで入ったが、なにかシーンとしている。先週まで‘黒と白のピカソ’という企画展を開催していてそのあとかたずけと次の展覧会の準備のため、中央の吹き抜けをとり囲んでいる螺旋状の回廊はクローズ中で横にある展示室も2室しかみれないという。拍子抜けした!リストには追っかけ画がいくつも書き込んであるというのに、、展示してある作品はわずか19点。20分で終わってしまった。
想定外の事態になったのだが、みたい度の強い絵がこのなかに運よく入っていたので半分の満足は確保された。その一枚がピサロ(1830~1903)の‘ポントワーズの風景’、印象派に画風が変わる前の作品で大作。メトロポリタンでも同じ年に描かれたものをみたが、仮に2点のうちどちらか1つをさし上げると言われたら、躊躇なくここにあるものをいただきたい。いったん左に曲がって先のほうで右のほうへむかっていく道には何人いるか数えてみたら9人いた。本当にいい絵をみた。
2点飾られていたゴーギャン(1848~1903)は1点は2010年にテートモダンであった回顧展でお目にかかったが、この‘村の男と馬’は初見。ピサロ同様、リカバリーを願っていた作品に出会えたのはラッキーというほかない。15点展示されている2階のこの部屋の記憶が消えているのだが、もっと広い部屋だったようなイメージがある。ところが、この美術館はそれほど大きくないことがだんだんわかってきた。巨大なカタツムリの外観によって大きな美術館のイメージができあがっていたのかもしれない。
特◎の絵が目の前に現れた。それはアンリ・ルソーの‘フットボールをする人々’、これで一気にニコニコ顔になった。ルソーに引き込まれるにつれ、いつかグッゲンハイムにあるこの絵をみたいという思いが強くなった。それがようやく実現した。視線が集中するのはやはり真ん中でボールを手から放している男。そして、下をみると心もとない表現が目に入る。なんとも貧弱な足!まるで中国人の纏足のように細い。