出光美では現在‘小杉放菴 東洋への愛’(2/21~3/29)が行われている。ここで小杉放菴(1881~1964)の回顧展をみるのは二度目、2009年に横山大観とのジョイントで‘小杉放菴と大観’があった。今回は単独だから出展数は多く数点のやきものなどを含めて82点もある。
小杉放菴は二刀流の画家。はじめは洋画をやっていたが、パリにいたとき池大雅の南画に心を奪われ俄然日本画に目ざめる。油彩も水墨画も描けるといってもその画風は半人半馬のケンタウロスのようなハイブリッド的な画面になっているわけではない。
パリから帰った33歳ころからは西洋画で会得した技術はモチーフの描写に生かされるが、画題や構成は東洋や日本のものが中心になっていく。放菴のすごいところは画業を重ねるにつれ構図のつくりかたが自在になっていくこと。最晩年に制作された屏風などは木の枝振りに言葉を失うほど魅了される。
一番お気に入りの絵はみるたびに元気をもらう‘金時遊行’、浮世絵にも鳥居清長らが金時を描いているがみてて楽しいのはにこやかな表情が完璧にすばらしい放菴の金時。手をあげて踊るようなポーズにつられてこちらの体も揺れてくる。
目を見張るような大きな腰をした女性が3人描かれている‘羅摩物語’は久しぶりに会った。‘湧泉’、‘炎帝神農採薬図’と一緒にこの大作がみれるのは回顧展だからこそ。しばらく息を吞んでみていた。すると昨年あったシャヴァンヌ展のことが思い出された。
思わず足が止まるのが‘白雲幽石図’、ぱっとみたイメージは宇宙を飛んでいる巨大な隕石に仙人が乗っている感じ。このところ地球科学関連のTV番組をよくみるので、墨の濃淡やたらし込みにより表現されたボリューム感あるれる岩山がすぐ隕石にみえてくる。
池大雅の‘瀟湘八景’に刺激を受けて描いた‘瀟湘夜雨’も心を打つ一枚。川辺の柳とその前を通りすぎていく小舟を巧みに配置する構図によって水墨画のもっている魅力をいっそう引き出している。しばらくいい気持ちでみていた。