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Channel: いづつやの文化記号
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心にとまった言葉! ‘柔らかい素材で強い構造体にする’

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Img_2     吉岡徳仁の‘ハニーポップ’(2001年)

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Img_0002_2     吉岡徳仁の‘パーネチェア’(2006年)

Img_0003     ‘アヤ・ソフィア’(537年 イスタンブール)

今年3月Eテレの‘達人×達人’という番組が偶然目に入った。それまでみたことなかったが、昨年東京都現美で個展があった吉岡徳仁と作曲家の白石譲がトークをするという。ともにトップア―ティストなのでどんなことをしゃべるのか期待がもてそう。

対談が行われたのは吉岡徳仁の作品が展示してある東京都現美、美術館にやって来た白石に吉岡が創作のコンセプトや作品のつくりかたを説明するという形で番組は進行していった。心にとまる言葉が出てきたのは最後の部屋に飾られていた2つの椅子。

120枚の紙を広げハニカム構造にすることによって椅子の形にした‘ハニーポップ’、そしてポリエステル繊維の塊を丸めて紙管にいれ釜で焼きつくりだした‘パーネチェア’。これを昨年実際にみたときは目が点になった。どちらも使われている素材は柔らかい紙と繊維、ところがハニカム構造にしたり釜で焼いたりするとしっかり強度のある椅子に変わる。まるでマジックをみているよう。

吉岡は自然の中にある蜂の巣が軽くて強い強度をもっていることに着目し、柔らかい素材で強い構造体をつくることを思いついたのだという。従来の考え方だと硬いものを使って構造体の強度をあげる、吉岡は逆の発想をし紙や繊維という柔らかいものを組織化し強度のある椅子を生み出した。考えていることの深さが全然ちがう。この椅子をMoMAやポンピドーなどがコレクションしたがるのはよくわかる。

この柔らかい素材で構造体を強くするという話は‘地球ドラマチック’(Eテレ)で2ヶ月くらい前放送された‘奇跡の建築 アヤ・ソフィア 耐震構造の秘密’にもでてきた。537年に建設されたこの大聖堂が地震の多い土地で1500年の時を乗り越えてこられてきたのはその優れた耐震性構造のため。

耐震性は中央のドーム、アーチ、壁など構造上の要素が適度なバランスを保つことで生み出されており、壁のつくりかたにも工夫がいろいろ施されている。

レンガをくっつけるために使われたモルタルは柔らかいので地震によっておこる構造上のゆがみに対応できる。そして、ほかの建造物とちがいレンガよりもモルタルのほうが層が分厚い。このためモルタルがクッションの役割を果たしている。

さらにレンガにも耐震性の秘密があった。当時のレンガは現代のレンガよりずっと軽量だった。建物が軽いと地震の揺れに合わせてしなやかに揺れることができる。柔軟で頑丈な構造になっていた。

当時は重量のあるどっしりとした建築で耐震性を高める考え方が主流だった。だが、アヤ・ソフィアは建物を軽く柔軟にすることで耐震性を高めた。これは現代の建物の耐震構造と同じ発想。まさに奇跡の建築!


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