バシュキルツェフの‘ミーティング’(1884年 オルセー美)
ルパージュの‘10月、じゃがいもの収穫’(1878年 ヴィクトリア国立美)
セザンヌの‘頭蓋骨を前にした青年’(1898年 バーンズコレクション)
今年Eテレで放送されている白熱教室を4回みた。1月に楽しんだのが‘幸福学’、確か4回くらい続いたと思うが、みたのは最初だけ。この講義を担当したエリザベス・ダン博士(カナダ・ブリティッシュコロンビア大学心理学)はなかなか興味深い話をしていた。
ここ数年心理学や行動経済学に関心を寄せているため、心理学者の話にはいつも敏感に反応する。彼女は人が感じる幸せは人それぞれだが、十人十色の幸せにも欠かせない共通する要素があるという。
ケーキをつくるのには小麦、砂糖、卵が必要なように‘幸福のレシピ’がある。それは‘人との交わり’、‘親切心’、‘ここにいること’の3つ。‘ここにいること’は目の前のことに集中するという意味。
ほかの博士が行った幸せ度調査の結果をみると、幸せな人たちには運動好きもいればインドア派もいる、信心深い人もいれば無神論者もいる。上位10%の人たちに共通しているのは社会との結びつきが強いことだった。内向的な人も人と交わることで幸せを感じていた。普段の生活でほんの少しでも人と関わるだけでわれわれは幸福を感じることができる。
親切心と幸せのむすびつきはボランティア活動を思えばすぐ理解できる。最近亡くなった高倉健さんも‘人に親切にすると自分の心が豊かになる’といっている。
最後の‘ここにいること’は心にとまる言葉、目の前のことに集中することが幸せなんだというのはすごくいい!嫌な仕事やおもしろくないことには集中できないが、そうでない場合はたしかに目の前のことに集中しているほうが物思いにふけるよりは心は充実している。
ダン博士はテクノロジーの進化によって日常的に注意力が散漫になっていることを考えると、ここにいること、今この瞬間に集中することは人の幸福にとって重要なことだという。ルパージュとセザンヌの絵に描かれている人物の表情をみればこの話が腹にすとんと落ちる。