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Channel: いづつやの文化記号
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収穫の多いホイッスラーの風景画!

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Img_0001     ‘バルパライソ’(1866年 テートブリテン)

Img  ‘オールド・バターシー・ブリッジ’(1875年 テートブリテン)

Img_0002‘オールド・ウエストミンシター・ブリッジの最後’(1862年 ボストン美)

Img_0003    ‘オールド・バターシー・ブリッジ’(1863年 アディソン美)

横浜美はここ数年いい展覧会を行っているので好感度が上昇している。京近美から巡回してきた‘ホイッスラー展’(12/6~3/1)も大ホームラン、日曜美術館でホイッスラー(1834~1903)が取り上げられ、作品一点々が作曲家千住さんが選んだベートーベンやショパンの名曲を流して紹介されていたので、その作品の前では流れていた曲想を思い出しながらみていた。

‘ノクターン’がタイトルにくっついてないが、このシリーズの一枚としてもおかしくないのが1866に描かれた‘肌色と緑色の黄昏:バルパライソ’、描かれているのはチリの要港バルパライソに多くの軍船がひしめきあって停泊している光景。だが、港内はいたって静か、黄昏時、陽が落ちてだんだん暗くなっていく感じがじつによくでていている。

この絵がすごく穏やかな気分でみられるのは船の配置が緻密に計算されているから。動きを止めるため多くの船を画面の中央で横のぽんぽんと並べられている。ほかの作品でも船が数隻でてくるときはホイッスラーはこのように縦とか斜めとかではなく水平に描いている。

一見して浮世絵の影響を強く受けたことがわかるのが‘ノクターン:青と金色 オールド・バターシー・ブリッジ’、この絵の横に歌川広重の摺りのよい‘名所江戸百景 京橋竹がし’(大英博)が展示してあるので、ジャポニスムの影響力を実感する。

この縦長の橋のフォルムがすごくインパクトをもっているため、遠くで打ちあげられた花火が金で描かれていてもあまり反応しない。橋の太い橋脚と小舟をこぐ男のシルエットがこの絵を一生忘れられないものにしている。

今回とても嬉しい絵が目の前に現れた。画集でみて追っかけ画のリストに載せていた‘オールド・ウエストミンシター・ブリッジの最後’と‘オールド・バターシー・ブリッジ’、チラシにこの2点はなかったのでびっくりした。急に宝物が出現したみたい。どちらも橋だけでなく、その上を歩く人々や川沿いでたむろしている人たちも描かれているので風景画というよりロンドンの日常の光景を描写した風俗画をみている気分。

ホイッスラーの作品の魅力をあますところなく伝える大回顧展、200%満足した。ミューズに感謝!


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