故直夫の国宝‘夏景山水図’(南宋時代・12世紀 山梨・久遠寺)
三井記念美にでかけ待望の‘桃鳩図’をみてきた。今ここで開かれている‘東山御物の美ー足利将軍家の至宝’(11/24まで)がはじまったのは10/5なのに、この時期まで出動を遅らせていたのはひとえにこの絵の展示を待っていたから。
10年前根津美であった南宋絵画展で‘桃鳩図’が展示されたのはわずか5日、当時広島にいてこのタイミングで上京の日程を調整できなかったので見逃してしまった。そのあといつみれるか見当がつかなかったが、ようやく対面の機会がめぐってきた。
10時ちょっとすぎに入館したが、チケット売り場にはつぎつぎと人がやってくる。‘桃鳩図’に熱い思いをいだいているひとたちが多くいるのだろう。最初の部屋の茶入なども気にはなったが、それはさらっとみてどんどん進んでいった。
2人が単眼鏡を使ってみていた。まさに桃鳩フィーバー真っ最中といったところ。思ってたよりは小さい絵。美術本では大きな図版になっているため羽の精緻な線描までみえるが、本物ではそれを肉眼で確認するのはむつかしい。単眼鏡の助けを借りないと図版のイメージにはとても近づけない。
しっかりみたのはこの絵をはじめてみたときから魅了され続けている鳩の頭のうす緑、そして目、また桃の花びらを彩る胡粉の白にもしっかり単眼鏡の焦点をあわせた。鳩の足はちょっと紛らわしい、枝をつかんでいる足なのか、足は羽の裏に隠れみえているのは枝なのか。単眼鏡でみると足だろうな、という感じ。
この絵がいい気分でみられるのは構図はとてもいいから。ふっくらとした鳩は右向きで横に寝かせたVの字のような形になっている枝と枝の間にぴったりとおさまっている。ちょっと左寄りでもまたちょっと右寄りでも目の心地よさを奪いそうなちょうどいいところに描かれている感じ。噂にたがわず傑作中の傑作だった!
展覧会の入館料1300円はこの一枚でもとをとったのであとはお気に入りの作品を気楽に楽しんだ。なんだか南宋絵画展のデジャブはおきているかのよう。根津美からはお宝の‘鶉図’と‘漁村夕照図’がきているし、強い風が吹き荒れる様を巧みに描いた‘夏景山水図’もある。ミューズに感謝!